ハバナ502歳のアニバーサリー、今年は・・・

11月16日はハバナの502回目の誕生日だった。

1519年11月16日、旧市街アルマス広場にあるテンプレーテ横にあったセイバの木の下でハバナで初めてのカトリックのミサが開催され、ミサに出席した当時その付近に暮らしていた先住民の酋長の名前Habaguanex(ハバグアネクス)からHabanaハバナの名がつけられたという。今見られるセイバの木は何回か代替わりしたものだけれど、ハバナ誕生ゆかりの地、ということで毎年この日にはセイバの木の周りを3回周ってお願い事をするのが習慣となっている。なんだかんだで、毎年このハバナの誕生日にはセイバの木を周りはしないものの、この場所を訪れる機会があった。

ということを去年も書いて、今年はどうなっているやらと思いを馳せたりしていたようだが、コロナ禍での2度目のハバナ創立記念日、感染状況もだいぶ改善して15日にはキューバの国境再開、海外からの観光客受け入れ開始とこれから始まる「新しい日常」に大いに期待できそうな嬉しい中での誕生日が期待された。

photo:Abel Padrón Padilla/Cubadebate

2年前の500年記念アニバーサリーのような大きな式典はないだろうけれど、せっかくなので今年もテンプレーテのセイバの木を見に行こうか、などと考えていたハバナ誕生日の前日、我が家の周りがやけに騒がしい。そこら中で工事が始まり、何台ものトラックがやってきて何やら荷物を降ろし、あちこちにテントが立って、スピーカーを持ち込んで特設ステージもできた。少し前から工事が始まっていた配給所のほか、団地の中心にある店や銀行の入る建物、バス停、道路の路肩などあらゆるところがペンキで塗られ、あるいは壁に何やらペイントされ(何度か雨降ったら流れるに違いない・・・)、あちこちに植物が植えられ(根付かずすぐ枯れそう・・・)、これまで一度見たことがない噴水の水が噴き出し(噴水に使う水があるなら、水道の水毎日給水して〜!)、イケイケだった団地内の運動施設周辺にフェンスが作られ(出入り口がないんですけど・・・)、ボコボコだった歩道の穴や崩れた階段にセメントを塗りたくり(雑すぎ・・・)、ついには突貫工事でETECSAエテクサ=電話局のオフィスまで作ってしまった。

一夜にしてできたエテクサの販売店

「一体何事か?!」の大騒ぎの原因は、ディアス・カネル大統領が来るというものだった。

暗くなるまで突貫工事は続き、翌朝ハバナ創立記念日当日は早朝から次々に大きなトラックが到着して、品物を並べ始めにわかにFeliaフェリア=市ができた。最近のモノ不足状態からしてこれほどまでいろんなものが並ぶのが信じられなかったし、事実これまでキューバで見たどのフェリアよりも充実した品揃えだった。

思えばこんな人の集まるフェリアも久しぶり、食料品が主だったけれどトイレットペーパーなど日用品もあった

「いやーちゃんとモノあるじゃん!」

と驚きながら見て回り「何はともあれ食べるもの」と、トラックから直接売られる野菜とパン屋直営のテントの行列へ並ぶ。時間とともに人も増えてごった返し、いつもの割り込み批判の怒涛がそこら中で聞こえたけれど、なんとか早々に食糧品ゲット。

本日の勝利品!

と、そうこうしているうちに国歌斉唱とともに始まった特設ステージで行われたハバナ創立記念日は終わっていて、果たして大統領が来たのかも定かではなかった。後で聞いたところだと、超過密スケジュールの調整がつかず結局その日はキャンセルとなったらしい。とはいえ、大統領来訪(かも)で一夜にして団地のあちこちが綺麗に整備されて、いろんなもの売ってくれたのは良かった。なんなら月一ぐらいで企画して!

というわけで、ハバナ502歳のアニバーサリーはいつもと違った「お祝い」となり、旧市街へも行けず終い、来週あたりにテンプレーテ詣ででもしようか。

大統領は前夜のうちにセイバの木を回られたそうです・・・

いよいよ、11月15日キューバの国境再開!

2021年10月24日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者1,210名(ハバナ79名)、現状陽性者5,761名、累計感染者946,960名、累計回復者932,951名、累計死亡者8,191名

上記、本日発表のコロナ感染状況。数字を見ても新規感染者数はグーンと減って状況が良くなっているのは明らかだが、先週からさらにハバナとサンティアゴ・デ・クーバの2大都市で規制の緩和「新しい日常」への移行が発表されたこともあり、街中を見ても街をゆく人たちの足取りや表情まで違って見えるような気がする。ハバナでは多くのレストランが店内での飲食を開始し、久しぶりの外食を楽しむ家族連れなどが見られるようになり、Calle(通り)で遊ぶ子供たちの姿と賑やかな声が戻った。そしてハバナの人たちにとって最大の娯楽、マレコン散策も解禁!釣りをする人、音楽を演奏する人、ビールやラムを飲みながら語らう人たちが帰ってきた。

日曜日の旧市街ビエハ広場、賑わうレストランを見るのも久しぶり!

また先週12日には、11月15日の国境再開にあたっての入国条件が観光省によって発表された。それによると・・・

  1. 11月7日より入国時に空港などで各自のPCR-RT検査、入国後の隔離規制は排除される。
  2. 海外からの旅行者はキューバ人、外国人を問わずに該当機関が発行したワクチン接種済みを証明するための「健康パスポート」または「対Covid-19国際証明書」を提示すること。
  3. 上記のコロナワクチン接種済み証明書を提示できない旅行者は、出発国の認証された機関で出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を提出する。
  4. 0~12歳の子供には国籍を問わずワクチン証明、PCR-RT検査を要請しない。
  5. 出発国搭乗時に航空会社は旅行者に対して、ワクチン証明または出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を要求する。
  6. 「旅行者健康状態表明」(健康宣言書、到着前に機内で配布される)を提示すること。
  7. 空港で国際保健管理者によってランダムにPCR-RT検査が行われる。
  8. マスクの着用は空港エリアまたその入り口、同様に国内全域で引き続き義務とする。
  9. 引き続き感染病予防体制がすべての入国箇所:空港、港で取られる。
  10. 入国箇所を問わず海外からの旅行者でCovid-19およびそのほかの感染病症状または兆候のある者は、有効な対処についての導入を受けPCR-RT検査が実施される。
  11. 旅行者が滞在中も引き続き感染病監視を実施するものとし、ホテルには基本的な医療機器を揃えた医師が常駐する。
  12. カサパルティクラルのオーナーおよびキューバに居住しない旅行者を宿泊させる個人は、宿泊客にいかなる症状が見られた場合も速やかに担当の保健管理者に通知する責任を負う。
  13. カサパルティクラルに宿泊する旅行者に対する監視は、地域の保健医療機関が行う。Covid-19の症状が見られた場合には担当の保健管理者に通知しなければならない。

*観光省は宿泊施設、観光施設に対して、観光省の定めたプロトコルを遵守させ最上の衛生管理を備えたサービスを提供し、キューバ観光の復興に努める。
*観光施設内で密閉箇所や人の集まるところでのマスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持、手消毒などによる清潔状態を保つ、検温の実施等のプロトコルはより強化される。
(以上、キューバ観光省HPより抜粋:11月7日以降旅行者に課される衛生管理プロトコル

現在キューバのワクチン接種完了率は70%少々、11月中旬までには現時点で接種可能な人(過去感染していない人、健康上の理由で接種困難な人を除く)すベてがワクチン接種を済ませる予定で、国民の命を守った上での海外観光客の受け入れとなる。昨年同じく11月15日に観光再開し海外からの入国を再開したのがきっかけで、うなぎ登りに感染者が増えてしまった悪夢が繰り返すとはないと信じたい。 経済面だけでなく、街の雰囲気や人々の生活ぶり、特にハバナなどの見所の多い街はやはり観光あってのキューバだとここ1年半で痛感した。観光客が戻って、より活気ある街が見られることを心から楽しみにしている。

キューバのコロナ近況:規制緩和へ 2021.10

やっと、やっと、や〜っと、コロナの状況に明るい兆しが見えてきた。

9月の後半から感染の減少傾向が数字にはっきりと現れるようになり、10月になってここ5日間の新規感染者数は日を追うごとに100人単位で減少、ついに3ヶ月ぶりに3000人代まで。

2021年10月5日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者3,596名(ハバナ251名)、現状陽性者20,884名、累計感染者875,464名、累計回復者841,128名、累計死亡者7,703名

世界遺産の観光地として有名なビニャーレスのあるピナール・デル・リオ州やトリニダのあるサンクチ・エスピリトゥス州など、いくつかの地方はまだまだ高い感染率で心配されるところだけれど、ハバナに関してはだいぶ落ち着いてきた。

こうした状況を受けて9月24日からハバナを始め7つの州(マタンサス、シエンフエゴス、シエゴ・デ・アビラ、サンティゴ・デ・クーバ、マヤベケ、イスラ・デ・フベントゥ)で段階的な規制緩和が始まった。

営業再開したハバナ旧市街にある老舗カフェ「CAFE DEL ORIENTE」

まずは飲食店の再開から。これまで店内飲食は禁止、持ち帰りかデリバリーのみでの営業可能だったが、感染予防対策の措置をとった上で店内飲食、夜間の営業も9時半まで可能となった。国営店は軒並み営業を開始し、個人経営の店もボチボチ様子を見ながら再開している。これに伴って公共交通機関の運行も夜10時半までとなり、同時間まで外出が許可されることに。

さらに10月1日にはビーチとプールが解禁!まだまだ暑い日が続くこの時期、夏の間我慢していた海へGO!子供達も幸い(?!)まだ学校が始まらないから、来年の夏まで待たなくていいのなら、もちろんGOOOO!!というわけで、早速週末には多くの家族連れがハバナ近郊のビーチへ向かったようだ。他にも公園やジム、そしてハバナ市民の憩いの場マレコンでの釣りや立ち止まってのお喋りもOKに!正直、今は経済的な理由で外食する余裕がない人も多く飲食店の営業再開はあまりピンとこない感じだけれど、ビーチやマレコンが戻ってくるといよいよ「日常」がグッと近くなった気がする。

我が家は幸い目の前に「プライベートコスタ」があるから、規制があった時からこそこそ通っていた。これからは堂々と行ける?!

そして国中が期待して待っているのが11月15日の海外観光客の受け入れ再開。この最悪の経済状況を打開するのは、やはり観光しかない、と政府の全面的なバックアップのもとホテルや各観光関連施設、旅行会社は着々と準備を進めている。コロナ禍の観光でキューバの強みは医療体制や衛生面における「安全な旅行」をアピールすることだろう。ホテルへの専門医の常駐や感染した場合の受け入れ機関、治療まで、この辺はきっと徹底してやってくれるはずだ。11月15日以降、旅行者に対する入国時の規制や条件などはまだ発表されていないが、現在課されている指定施設での5日間の隔離や複数回のPCR検査は緩和されるのではないかと予想される。

マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、密閉箇所での人数制限、入場時の検温、いろんな規制は今後もまだまだ残るだろうけれど、国民のほとんどがワクチン接種を終えて、コロナから身を守った安全な状態で観光客受け入れることができる日も近い。ハバナの旧市街のバーやレストランでバンドの生演奏が流れるなかモヒートを片手に踊り、クラシックカーに乗ってマレコンをドライブする外国人たちの姿が戻ってくる日はもうすぐ!

子供のワクチン接種開始

キューバでは先日、予告があった通り9月15日から小学生年齢対象のワクチン接種が始まった。基本的には自分の通う学校で、学年ごと決められた日時に保護者同伴のもと接種が行われるようだ。息子の担任の先生からも先週のうちに電話で、「9月16日木曜日午前11時」と指定日時のお知らせがあった。

そして当日、珍しく朝から怪しい雲行きで今にも雨が降りそうな中、我が家から徒歩1分の小学校へ向かった。久しぶりに会う同級生たちと、ちょっと恥ずかしそうにでも嬉しそうに挨拶してお喋りする子供たち。それにしても小学校高学年の成長ぶりには目を見張る。特に女の子は背が伸び、体つきはすっかり大人、すでに母親の背を追い越してしまう子もいて驚いた。それに比べて毎日見ている我が子、多少背は伸びたけれど相変わらず幼いガキンチョ、ワクチンの注射もホントはドキドキしてしょうがないのを必死で隠してるし。

むちゃくちゃ緊張した面持ちで注射される息子。

さて接種会場の方は大人の時と同様、とてもスムーズだった。保護者の身分証明書を確認して署名、それから待合室で少し待った後、検温と問診を行い接種、接種後30〜40分ほど待機して問題がなければ解散。

今回子供に摂取されるのは、5種あるキューバ産ワクチンのうちSoberana02ソベラナ02、28日後に2回目の接種が行われる。ハバナではすでに先週、中高校生年齢の接種が行われ、ハバナ以外の地方でも未成年者の接種が開始、順調に進めば10月末には全ての子供たちの接種完了、11月15日から学校での対面授業の開始という計画だ。大人の方もうまくいけばキューバ国民の9割以上が11月までにコロナに対する免疫を獲得することになる。

キューバ版ワクチンカード。手書きで何が書いてあるんだか・・・

ワクチン接種自体はおそらく問題なくこのまま進められるだろう。あとはちゃんと効果が目に見えて感染者数にも現れてくれれば、みんな安心できるのだけれど・・・

ところでキューバ産ワクチン、まだ国際的には認証されていない。キューバ国内の認定機構が「緊急時使用可能なワクチン」として認めているだけで、効果率の高さや接種時の副反応の少なさ(死亡者はゼロ)を見るとものすごく優秀なはずであるが、世界的に今、渡航条件などに加えられつつある「ワクチン証明」や「ワクチンパスポート」に使うことはまだできない。先日からWHOへの認可申請手続きを始めたらしいので、早いところ世界デビューを果たしてもらって、「ワクチン接種済」の烙印を押してもらいたい。

キューバ産ワクチン5種。これらのうち3種がすでに緊急時用として接種されている

が、もし万が一、認可されなかったら・・・ここでまた某大国の横槍が入るんじゃないかと心配されるところだが、もう打っちゃったもんは仕方がない。ちゃんとお墨付きがもらえることを祈る!

キューバのコロナ近況 2021.9

1日あたりの新規感染者数8000人超えという最悪の8月が終わって9月になり、ようやくすこーし減少の兆し。

2021年9月8日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者7,747名(ハバナ687名)、現状陽性者39,213名、累計感染者720,739名、累計回復者675,413名、累計死亡者6,056名

日によって増減があるものの9月になって9000人を超えたのは1日だけで、ほぼ6000〜7000人代で推移している。これでもまだまだ驚異の数字だけれど、減少傾向にあることは見て取れるので、このまま落ち着いていってくれることを願うしかない。

そんななか9月といえば新学期だが、当然まだ子供たちは学校へ行くことはできない。それでも前年度2020-21年度継続ということでテレビ教室が今週から再開され、同時に今後の日程が発表された。もう1年半にわたってほぼ登校することなく、対面授業なしで1日30分各教科週1回のテレビ教室という何とも心許ないというか、虚しいだけの授業しか受けていない子供たちの学校教育をどうやって調整して回復するのか、と注目されるところだ。とにかくワクチンを接種しないことには子供たちを学校へ行かせるわけにはいかない、いかないというのが大前提。急ピッチで治験段階を突破して9月初旬から中学・高校年齢、中旬からは小学校年齢の子供たちへのワクチン接種が始まる。ハバナは最初に実施されるだろうから、来週には息子も1回目の接種を受けることだろう。

子供たちへも、もちろんキューバ産ワクチンが接種される。ガブリエル君、キューバで初めてコロナワクチンの接種を受けた子供。Photo by Ismael Francisco, Granma

そして先日、全国の子供たちへのワクチン接種を11月までに終える計画で対面授業の開始は11月15日、前年度2020-21年度を2022年3月12日まで(全16週)とし、翌週3月14日から新年度2021-2022年度開始して同年11月26日まで(全30週)、その後本来の学年サイクルに戻す、と発表があった。もちろんワクチン接種が順調にいって、コロナ感染状況が収束することが条件ではあるだろうけれど、この通りうまくいってくれるなら何よりだ。

小学校の修正された今年から来年にかけてのプログラム。Granma新聞より

さらに11月には全国民の90%以上のワクチン接種完了、免疫獲得を目指すとした政府発表に併せて、観光省は11月15日以降の海外からの観光客の全面的受け入れに向けて徐々に対コロナ規制を緩和していく方針を発表した。まずは現在も観光客を受け入れているリゾート地バラデロとカヨ・ココの外国人観光客に対しワクチン証明書またはPCR陰性証明書どちらかの提示、空港でのPCR検査の免除、荷物重量制限の解除などが行われる。観光再開のためには入国時国境での水際対策の緩和だけでなく、空港やホテル、各施設やレストラン、各種交通機関の再開正常化、州を越えた移動制限の解除とあらゆる規制を緩和していくことになるが、まずは国内観光を手始めに、海外観光客受け入れ体制を整えていくそうだ。が、何れにしても具体的な内容や日程は今後発表されるようなので注目したい。

ハバナの革命広場。観光客が戻って賑わいを見せるのはいつ?

ともあれ今度こそコロナをコントロールしつつ、すでにあまり聞かれなくなってしまった(?!)「新たな日常」とやらを始められるといい。

キューバへの救援物資、各家庭へ配布はじまる

7月以降、キューバのコロナ感染状況は悪化したままで、8月も前半高い水準で新規感染者数、死亡者数が推移している。一向に良くならない状況にもう慣れてしまって、毎日の保健省の報告にも驚かなくなってしまった。

こんなキューバの深刻な状況に対して海外からも多くの支援物資が送られてきている。日本からも援助の手を差し伸べようという動きがあることは先日書いた。ここ1ヶ月ほどで主に食料品や医療機器、医薬品などが、ロシアや中国、ベトナムといった社会主義国で普段から関係の深い国々だけでなく、近隣の中南米の国やカナダといった20数カ国から届いているらしい。アメリカからも支援団体が注射器を寄付したというニュースもあった。

医療関連の品は直接病院へ運び込んで使い、注射器はワクチン接種に早速利用されていることだろう。

で、食料品はどうするのか?

と日々の食料確保に奔走する国民は注目したわけだが、到着した先から仕分けして袋詰めにされ各家庭に配布されることになった。日本では災害時の支援物資を被災者に届けるのに、時間がかかったり、必要なものが必要な人に届かなかったりと問題が発生することもあるらしいけれど、今回キューバの場合、否応なしに国が決めたやり方でチャッチャとすばやく対応した。緊急だから、当然といえば当然。

こんなとき、キューバには配給システムという便利なものがあって、国の隅々、国民の一人一人にまで確実にものがいき渡る。今回も配給所を介して、各家庭に袋詰めにされた食料品セットが早速配布されはじめた。普段の配給品は決して無料ではないのだけれど、今回の支援物資は全て無料で1家庭につき1袋。内容は地域や配布されたタイミングによって多少違いはあるようだけれど、米、パスタ、豆類など主に炭水化物の袋詰め。

昨日から我が家の属する配給所でも配布が始まって、早速取りに行ってきた。

米、スパゲッティ、マカロニ、緑豆、砂糖。それぞれポルトガルやトルコ、イラク産のものだった

スパゲッティ、最近は外貨ショップへ行っても売っていなくてしばらく食べていなかった。息子のリクエストで、今日のランチは早速スパゲッティ!

ランチに麺類、ありがたい!

しばらくは多少バラエティーのある昼食が準備できそうだ。

キューバのコロナ近況 2021.7

前回キューバのコロナ近況について書いた1ヶ月ちょっと前、なかなか減らない感染者を危惧しつつ、ハバナではワクチン接種が進んで少しずつ効果が出てきているんじゃないかと希望的観測をしていた。

が、感染爆発は止まらなかった。

1000人単位で感染者が増え続け、前日の倍増近くというとんでもない勢いの日もあってここ10日間は連日6,000人超え。そして7月21日には前日から1,000人以上増の7,745人!翌日はさらに増えて記録更新。

2021年7月22日23時59分現在の感染状況:新規感染者7,784名(ハバナ1,357名)、現状陽性者37,435名、累計感染者316,383名、累計回復者276,689名、累計死亡者数2,203名

もう全国的に感染拡大しているのだけれど、特に深刻なのがキューバ最大のビーチリゾート、バラデロのあるマタンサス州だ。バラデロは現在でも観光客を受け入れているのだが、例の感染力が強いとされる変異株が海外から持ち込まれ、このマタンサス州から広がったというのがもっぱらの噂。真相はともあれもう爆発しちゃっているのだから、なんとか食い止めないといけないんだろうけれど、これまで以上に市民の生活に直接影響のあるような規制や制限などは今も出されていない。ハバナでも公共交通や公共機関、一般の経済活動は機能している。ただ、もう極力外出は控えて用事がない限りバスにも乗らないけれど・・・

一方でワクチン接種は進んでいる。全国民の20%以上が接種完了。Photo by Cubadebate

加えて先日の7.11事件。キューバではあれが国民による正当な「デモ」であったという言い方は避けるようになって、「7月11日の騒動」といった感じの表現を使うようになっている。事件から数日後は、他にも小さな集会があったりしたようだが、すぐ街にはいつもと変わらぬ風景が戻った。国内のメディアではあの日のことをあれこれ検証したり、海外での報道やSNSで拡散されたフェイクニュースを暴いたりして、国民に「正しいこと」を伝えようとしている。実際にこうした写真や動画も多少は見たけれど、どれがどこまで真実なのかは結局のところよくわからないし、明らかな嘘がたくさんあることも確かで、渦中にいる者としては他人の生活はほっといてよ、と静かで平和な生活を望むのみ。

といっても、キューバはキューバ。日常とはつまり日々の戦いの繰り返し。

買い物するのに行列は必須

今日も朝から買い出しの行列に並び、ご近所さんとコーヒー飲みながら厳しい現実に言ったところで何も解決しない愚痴をたれ、日陰を探して公園wifiでネット繋いでひと仕事、たとえ30分でもと息子を机に向かわせる無駄な努力をしているうちに、チキンとひき肉と卵とソーセージという限られた材料から献立を考え夕食を準備しないと。加えて洗濯機が壊れてしまっているのが、目下我が家で最大の解決すべき問題で、そのためにあらゆる知人友人に「洗濯機なおしてくれる人はいないか?」と電話をかけまくる・・・

あっという間に1日が終わる。毎日家からこんなに素敵な夕日が見られるのがせめてもの救い

キューバ生活は特に何かがなくても、いつもなんだか騒がしい。コロナもデモも心配だけど、今日という日を一人一人が生き抜くために、構っちゃられないこともある。

とはいえ、最低限の感染予防はしないとね。

なんだかキューバが騒がしい

日曜の午後、サッカーのヨーロッパ選手権決勝戦をまったりと見ていたら突然、ディアス・カネル大統領から重要な発表があるとテレビの画面が切り替わった。最近のコロナ感染者数急増にともなって規制強化でもあるのかと思って見ていたら、なんだかもっとヤバそうな方向へ話がいく。なんでもハバナのお隣アルテミサ州の街で大きな反政府デモが起こってすぐに大統領自ら現場へ行って現状確認、とんぼ返りしてテレビでの演説となったようで少なからず興奮した様子の話ぶりだった。

アルテミサ州サン・アントニオ・デ・ロス・バーニョスを視察中のディアル・カネル大統領 photo by Granma

演説の内容は、国民に向かって反政府運動の元凶はアメリカのキューバ制裁にあり、今こそ革命精神を発揮して街に出て結集しよう、的なもので、今回は状況がシビアなこともありより厳しい口調と表現ではあったものの何かあるたびに政府が発信する内容とさほど変わりはなかったように思う。この大統領発言の後、革命支持の政府擁護の人たちも街へ出てパフォーマンスが行われたようで、キューバの夜のニュースではこちらが映し出された。

政府側に立つ人たちも街へ photo by Gramna

実際にはその頃ハバナのカピトリオ周辺、セントロハバナあたりでは多くの人が通りに出て一部暴動もあり、そこら中の道路が閉鎖されていた。ハバナだけでなく地方都市でも同じような行動があったという。だが幸い私の住んでいる地区はいたって静かで、実はこれらについて翌日報道された海外の記事と写真をネットで見て驚いたぐらい。

カピトリオ前での抗議行動の様子 photo by BBC News

アメリカの経済封鎖+コロナでキューバの現状は確かにひどい。

今回のデモ行為の原因は中でも食糧、電力不足に対する不満が爆発したことによるというようなことが報道されている。加えてコロナの感染爆発、医療品の不足が深刻な状況に拍車をかけているのは否定できない。キューバ政府としてはこれら「すべてをアメリカの制裁のせい」にし、アメリカとしては「独裁政権と人権迫害がある限り制裁は解けない」とする、もう何十年も続けられてきた応酬の繰り返し。

正直、またか、と思ってしまう部分もある。それでも今回のこれをきっかけに何かが、良い方向へ動くことを期待して・・・

熱帯暴風雨エルサ、キューバ縦断

6月から11月はハリケーンの季節で、キューバが影響を受けやすいのは9月から10月と言われる。去年は例年より多くのハリケーンや熱帯暴風雨が発生したが、今年はそれ以上に多く発生すると予想されハリケーンのあたり年でキューバにも複数上陸する可能性が高いといわれている。果物のあたり年は嬉しいけれど、ハリケーンは全然嬉しくない。その前兆か今年は5月にはハリケーンが発生し始め、7月上旬だというのにキューバでも警戒せねばならないような熱帯低気圧Elsaエルサがやってきた。

ところでカリブ海を含む大西洋北部で発生する最大風速17m以上の熱帯低気圧には、毎年アルファベット順に男女交互の人名によって命名される。日本の台風のようにその年ごとに数字で○号というのはわかりやすくていいが、ハリケーンのように人名というのも、記憶にも残りやすいしなんだか親しみを持ってしまう。もちろん親しくしたくはないけれど・・・今年はアナに始まって5つ目がエルサと某ディズニー映画を思い出したのは私だけじゃないだろう。

まあそれはさておき、そのエルサが今週初めにキューバを縦断した。

Photo by NOAAアメリカ海洋大気庁

キューバの東、ドミニカ共和国やハイチを通過してキューバに接近する直前に一時期カテゴリー1のハリケーンにまで発達したが、キューバ上陸前には再び熱帯暴風雨に勢力を落とした。キューバの東、グランマ州沖でほとんど動かなくなり「おい、いつまでそこにいるんだ?!」と心配させたが、重い腰を上げて少しずつ前進し7月5日朝にシエンフエゴスの西、マタンサス州の南岸ヒロン湾あたりに上陸そのまま北西方向にゆっくり進んで、マタンサス州北岸から抜けていった。

ハバナも警戒地域に当たっていたので、5日正午には公共交通がストップして店や公共機関がすべて閉められた。午後になってもそれほど風が強くなることもなく晴れ間も出ているくらい、それでもどこも開いてないし足もないしで、日が暮れる前から屋外には人影もほとんどなくなってしまった。今回はそれほど勢力の強くない熱帯暴風雨だったにも関わらず、徹底した災害予防対策が取られるあたりはさすがと、いつもながらに感心する。ハバナに最も接近したのは夜中から明け方にかけてだったが、それほど強い雨風を感じることもなく心配していた停電もなく朝を迎えた。テレビのニュースを見ても大きな被害はなかったらしくホッとする。

通過経路にあったマタンサス州などでは相当の雨量があって浸水したところも多かったそう Photo by Granma

こうして今年初めてやってきたハリケーンになりそこないのエルサは、やや控え目な印象をキューバに残して去っていったのだった。

キューバ、のりものいろいろ

のりものが好きだ。

自転車、自動車、列車、飛行機、船、一般的な移動の手段であるものならなんでも、そして遊園地のアトラクションも観光地のロープウェイも。旅先でも移動の際にはできるだけ色々な移動手段を使うように日程を組んで、街中で面白い乗り物に遭遇したら試してみる。

のりものは楽しい。

キューバでそんなのりものフェチの欲求を満たしてくれるのは、古い年季の入ったのりもの達。まずはなんてたって名物のクラシックカー。観光客を乗せて走るオープンカータイプのアメ車タクシーは、キューバへ来たからにはとりあえず試してもらいたい。なんだかんだ言ってテンション上がること間違いなし!

カラフルな車が並ぶ革命広場の駐車場

その他にもキューバを走る車は、好きな人にはたまらない旧車ばかり。大きくていかにも燃費の悪そうな現地でAlmendrón(アルメンドロン=大きなアーモンド)と呼ばれるアメ車の多くは、Máquina(マキナ)という個人経営の乗合タクシーとして利用されている。大まかなルートが決まっているが、好きなところで乗り降りすることができ1区間15ペソ(約60円)から。

旧車ではないけれど、観光客にも人気なのがココタクシー。ココナツのような丸い形の車体が特徴の原付の後ろに客席をつけたもので、走る姿もかわいらしい。乗り心地はともかく風を切って走るのはオープンカーと同じ、マレコンあたりをビューンとゆくのがオススメ。

マレコンをゆくココタクシー

一般市民の足となる公共交通は、ハバナの場合バスやRutero(ルテロ)と呼ばれる乗合タクシー。ある程度路線を知っていて行き先の場所がわからないと利用がちょっと難しい。バスは1回2ペソ(約8円)、Rutero は1区間5ペソ(約20円)で最大3区間で15ペソ(約60円)。

そして1年ほど前にハバナ旧市街とセントロハバナの狭い地域限定で、原付の後ろに6人乗れる台車を引っ付けたのりものが登場した。こちらもルートが決まっていて、1回4ペソ(約16円)道の狭い旧市街の中もいくつかの路線が通っている。電気バイクを使ったエコカーで、ドライバーは全て女性というのが特徴。こちら未経験なので一度乗ってみたいのだけど、そういえばなんて呼ばれているのかも知らない・・・

新登場のエコタクシー

それからハバナでは特に旧市街とセントロハバナに多く身近な足となっているのが、ビシタクシーという自転車タクシー。自転車を改造して後部に二人乗りの座席をつけたものだけど、それぞれ細かい仕様はアレンジ無限、あり合わせの部品の組み合わせや持ち主の個性が出ていて面白い。一生懸命こいでくれるドライバーの背中を見てると思わず「頑張れー!」と声を掛けたくなる。歩くのとはちょっと違った視線で街が見えるので、観光中に一度乗ってみるのもいい。

ビシタクシー、どこでも気軽に止めて乗ることができる。行く先を決めて料金は事前に交渉

馬車が活躍しているところもまだまだ多い。そういえばコロナで見かけなくなったのですっかり忘れていたけれど、旧市街には観光客を乗せて走る馬車があったっけ。そしてハバナの郊外、と言っても旧市街から車で10分の我が家の近所でも、馬車に乗ってゆく人を見かける。またオリエンテ(東部)のバヤモは街中に馬車が多いことから「馬車のまち」と呼ばれているし、他の街でも馬車が立派な交通手段のところはたくさんある。

バラコアの街をゆく馬車

キューバの鉄道もとんでもなくレトロだ。キューバは世界的にも早い時期に鉄道が敷設されたことで知られ全国に路線はあるけれど、まともに機能していないところも多く主要な移動手段とはなっていない。ハバナ近郊で乗れる列車トリニダの郊外で乗れる観光列車については以前このブログでも書いた。そんな鉄道だが数年前から、外国の援助で一新させようという話が出ては消えている。もしくは計画は継続しているのかもしれないけれど、一向に進んだ話は聞かない。車両だけは中国から新しいものが一昨年導入されて、なかなか快適そうな映像をニュースで見たけれどすぐにコロナになってしまって、現在運休中・・・コロナ明けにはこれも試さないと!

あとは船。キューバ人、実は船に乗るのが大変。島国キューバ、飛行機でなければ船で「島の外」へ行くしかないのだが、船をハイジャックして亡命する恐れがあるからとかで限られた公共路線しか存在しないし、これに乗るのもなかなか厳しい。ちなみに観光客を楽しませてくれるビーチリゾートのカタマラン船クルーズなどのほとんどが、キューバ人は利用できない。で、ハバナで船といえば旧市街から対岸のカサブランカ地区を結ぶLanchita(ランチータ=小さな船)がある。カサブランカ地区にはカバーニャ要塞、チェ・ゲバラ邸、モロ要塞と見所も多いので、往復どちらかをこの小舟を使って行ってみるのも面白い。

旧市街からカサブランカ地区へ向かうLanchita、自転車もOK座席はなくたって乗船

他にもバス以外の長距離移動に使われるCamion(カミオン=トラック改造して荷台に椅子をつけたもの)、地方のカーニバルで乗った二人乗り自転車やハバナの植物園のトラクター改造した園内見学の車とか・・・キューバ人のお得意Invento(インベント=でっち上げ?!)がのりものにも存分に活かされているのが楽しい。

キューバののりもの、まだまだ乗り足りない!