トリニダ、ロス・インヘニオス渓谷を列車でゆく

キューバで最も古い街のひとつトリニダ、コロニアルな建物と石畳の道が残る街の中心とともに世界遺産に指定されているのが、トリニダ郊外のロス・インヘニオス渓谷だ。渓谷一帯ではキューバのサトウキビ産業が最盛期だった18〜19世紀に、黒人奴隷を労働力として大規模なサトウキビ農園が営まれていた。これらのサトウキビで財を成した富豪たちが住んでいたお屋敷がトリニダ市内に残る大きなコロニアル建物、だからトリニダとロス・インヘニオスは切っても切れない関係ということで、一緒に世界遺産となっている。

インヘニオスとはスペイン語で製糖場のことで、当時は各地主が農場内に簡易の製糖場を持っていて砂糖の生産まで同じ場所で行っていた。その製糖場の跡が渓谷内に点々と残り、これらのいくつかは観光用に整備され見学可能となっているので、現在もサトウキビ畑が広がる渓谷の景色を楽しみながら、各所を訪問することができる。

トリニダ市内に宿泊しているのなら、タクシーを使って半日観光でロス・インヘニオス渓谷を巡ることができる。通常は渓谷を見渡す展望台、製糖場の遺構がよく残るサトウキビ農園跡、同じく農園跡でてっぺんまで登れる塔で有名なマナカ・イスナガあたりを見学する。時間に余裕があって鉄道に興味のある人には、観光列車で行くロス・インヘニオス渓谷もオススメ。車より時間がかかるけれど、のんびりレトロな列車にコトコトと揺られながら渓谷の景色を楽しむことができる。

トリニダの街はずれにある鉄道駅、この観光列車専用の駅舎。

チケット販売は当日9:10から。事前予約不可、不定運休につき翌日の列車の有無を前日に確認のこと。9:30出発。

トリニダの街を出てしばらくサトウキビ畑の広がる中をゆっくり列車は行く。往復のどちらかでマナカ・イスナガへ寄って1時間ほど停車。下車して見学、もちろん塔に登って360度の絶景を楽しんだり、サトウキビジュースを試したり。

折り返し点はGuachinangoグアチナンゴの近代製糖工場跡。

1893年から2001年まで操業していた工場跡で、煙突や工場内で使われていた機械、大型農具、機関車までそのまま廃墟された状態を見ることができる。廃墟マニアにはたまらないという見事な放置っぷり。ここでも小一時間見学、休憩。

以前は観光蒸気機関車を走らせていたようだけれど、現在はディーゼル車を使用。客席は木製、窓がないので少し強い雨が降ると濡れる・・・飲み物やサンドイッチなど車内販売なるものもあり、モヒートもちゃんと作ってくれる。キューバ音楽を演奏するバンドは乗っていることも。

キューバの鉄道の歴史は、サトウキビ産業とともにある。サトウキビや砂糖を運ぶために世界的にもごく早い段階で敷設された。こうやって残る路線がサトウキビ畑をぬって工場跡まで延びているのも納得。帰りも同じ路線を行くのでちょっと退屈で、お尻が痛くなるのはちょっと我慢。トリニダ駅に帰ってくるのは午後3時ぐらい。

トリニダへ行ったらコロニアルな町並みを楽しむのと同時に、キューバの砂糖産業の歴史についても学ぶことをお忘れなく!

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