ハバナ旧市街のアイス屋さん

決して甘党ではないけれど、アイスだけは別。キューバが暑いからというわけでもなく昔からアイスクリームが好きだ。

そしてキューバ人はとんでもなく甘党で、アイスももちろん大好き。有名な国営のアイスクリーム屋さんコッペリアだってあるくらい。キューバでアイスクリーム屋といえば=(イコール)コッペリア、コッペリアのアイスが美味しくないわけではないけれど、ハバナの場合はいつ行っても大行列だし、だいたい2〜3種類のフレーバーしかなく味を選ぶ楽しみがないのも物足りない。

量より質のアイス屋さんが欲しい。

そうかねがね思っていたのだけれど、ここ数年でハバナ市内にいくつかなかなかいけてるアイス屋さんができた。その中で旧市街のお店をご紹介!

Helado’Oro(エラード・オロ)

旧市街散策中に必ず立ち寄るイチオシ、イタリア人がオーナーのアイス屋さん。週1必須、多い時には週3ペースで通っていたことも。自分が食べたいものだから、お客様にオススメしてツアーの途中で立ち寄る事もしょっちゅうだ。コロナの影響で昨年からずっと閉まっていたのだが、2週間ほど前に再び営業しているのを見つけて迷うことなく店へ。

「息子よ、ごめん!母は内緒でアイス食べちゃうからねー」

観光客に人気なのはキューバらしいモヒート。シャーベットタイプのさっぱり味でモヒートに使うミント(Yerba buenaジェルバ・ブエナ)が効いている。チョコレートフレーバーはプレーンなものからブロックのチョコが入っていたり、ホワイトチョコを使ったものなど数種類、フルーツ系はキューバのアイスの定番グアバ、マンゴ、変わったところでグアナバナなんていうトロピカル系フルーツも。

最近のお気に入りはOshún(オチュン)というキューバの宗教サンテリアの神様の名前がついたホワイトチョコとシナモンが効いたオリジナルフレーバー。オープンした頃にあったジンジャーがむちゃくちゃ好みだったのだけど復活してくれないかなあ。
*35CUP(約140円)〜 住所:Aguiar e/ Empedrado y Tejadillo, Habana Vieja

Mango(マンゴー)

ビエハ広場からすぐ。コーンにのったマンゴー?それともアイス?をデザインしたロゴの看板が出ているのですぐにアイス屋さんとわかる。パッと見鮮やかな色とりどりのアイスクリームは、ちょっと柔らかめのイタリアンジェラードタイプ。

フレーバーはオーソドックスでシンプルなものが多く、チョコレート系が数種類とラムレーズン、トリプルミルク、コーヒー、フルーツ系はグアバ、ストロベリー、そしてマンゴーの横によりいっそオレンジ色の濃いものが・・・Mameyマメイ!マメイは小ぶりなフットボールの外観で硬い茶色の皮、果肉は濃いオレンジ色で味は、これが他に似た果物がないからなんと表現して良いのやらいつも困るのだけれど、あえて言えば良く熟れた柿をクリーミーにした感じで、とても甘い。大好きな果物の一つなのだけれどアイスになるとイマイチなことが多い。でも今日は冒険して試してみる。

味は・・・んー!なかなかにマメイだわ。口にした瞬間いっぱいに広がるマメイ感が美味しくて奮発してビックサイズにすればよかったと後悔した。
*40CUP(約160円)〜 住所:Teniente Rey e/Cuba y San Ignacio, Habana Vieja

ハバナクラブ ラム酒博物館リニューアルオープン

年末から年始にかけて、コロナの影響で閉まっていた博物館等が少しずつ再開し始めた。

ハバナクラブラム酒博物館も昨年3月に閉館してから約9ヶ月ぶりに今週リニューアルして再開すると知り、早速見学に行ってきた。

感染予防対策として見学者はマスクを着用し、入館前に手の消毒をして額にピッと検温を行う。スタッフたちももちろんマスク、ガイドの説明を聞きながらの館内ツアー方式で見学するのだけれど、ガイドに至ってはマスクとフェイスシェードをダブル使用、1グループは最大15名までで混雑を避けるために10分以上間隔を開けて各グループをスタートさせる、という策を取るそう。ただ今回参加したのは再オープン後2巡目、スペイン人観光客と彼のガイドと私の3名だけだった。

ハバナクラブラム酒博物館外観

ハバナクラブラム酒博物館は、ハバナ旧市街ビエハ広場やサン・フランシスコ広場の近くにあるコロニアルな建物を改装したこじんまりした博物館だ。その名の通りキューバを代表するラム酒ブランドであるハバナクラブ(国営企業)が経営し、ラム酒の原料であるサトウキビ栽培の歴史からラム酒の作り方まで実物資料や精巧な模型を見ながら学ぶことができる。展示物は少ないものの視覚に訴える資料が多いので、短い時間でラム酒について知るにはよくできているなあ、といつも思う。

まずはキューバで栽培されるサトウキビについて。サトウキビはどこからからキューバへ来た?

ラム酒の原料は砂糖生成過程でできる糖蜜、ラム酒を知るには砂糖についても知らねばならない。同時にキューバの砂糖生産の歴史についても説明。
博物館の目玉はこの模型。20世紀初頭近代の砂糖工場とその周辺にできた街の様子を見事に再現している。列車も走る精巧にできた模型をご覧あれ!
ここからはいよいよラム酒製造過程の説明、まず大きな樽で発酵作業。
ラムは蒸留酒、大きなシリンダー状の蒸留器が並ぶ。
できたお酒を寝かせなければラム酒にはならない。樽職人の作ったオーク材の樽で寝かせてじっくり熟成。
ハバナクラブには8人のラム酒調合のマエストロ=名人がいて、彼らがラムの出来栄えの鍵を握る。
ハバナクラブの商品紹介もしっかり。お値段的にちょっと手の届かないものもありますが・・・
最後は雰囲気のあるバーで、ハバナクラブ7年ものを試飲。そしてラム酒の虜に・・・

約30分のガイドツアー、毎回ガイドによって少しずつ違った説明で新たに学ぶことがあるのが嬉しい。リニューアルして展示内容の一部が変わっていたものの、大きな流れはほぼ以前と同じだった。ただ壁に書かれた説明文とイラストが綺麗にペイントしなおされていたのだが、これがなぜか英語解説のみ。主に観光客相手とは言えキューバ人も来館する公共施設、「なぜ?」とガイドに聞いたら「それ、言われるんだよねー、そのうちスペイン語も追加するよ。」と回答。

それから1月1日からの通貨統一でCUP(キューバペソ)での新しい入場料が気になっていたのだけれど、まだ料金検討中かつ目下プレオープン中ということで、今回何と無料!しかもオープン記念でお土産までもらってしまった。

お土産にはダイキリレシピブック、ピンバッチ、そしてコーヒー風味のエッセンスリキュール。ハバナクラブ7年に数滴垂らして飲むものらしい。キューバでは販売されていないらしくラッキー!!

休日の農家訪問

キューバ人はあまり野菜を食べない。海に囲まれた島国なのに魚介よりも肉を好む肉食の人たちだ。普段の食生活で野菜はあくまで付け合わせであったり、スープの具だったり、味付けのための調味料であったりして、野菜をがっつり食べるというのはほとんどない。

それなのにキューバの有機野菜は世界的にも有名だ。

これは1990年代、ソ連崩壊の影響でキューバの経済状態がドン底に落ちたPeriod Especialペリオド・エスペシアル(特別期間)に、燃料、肥料、農薬などあらゆるが不足し、農業のやり方を変えざるを得なかったことによる苦肉の策によるもの。燃料がなくて農機具が使えないから牛馬を使って畑を耕し、肥料は家畜の糞や残飯から作り、農薬はないから使わない、仕方なく無農薬有機農法を取り入れるしかなかったのだ。また輸入に頼らず食料の自給を目的に、街中や都市近郊に小さな農園が登場したのも同じ時期だ。そのお陰で国民の食生活が救われただけでなく、世界的にも有名なオーガニック大国となった。手の掛かる高価な有機野菜をわざわざ探さなくても、キューバ人は安全で美味しい野菜が手に入るしそれを食べるしか選択肢はない。なーんて羨ましい話だ!と思うのにキューバ人は野菜を好んで食べない、残念・・・

セントロハバナにある市場。見た目は悪いけれど美味しい野菜たち

ただ生産調整がうまくできておらず、ハウス栽培もないから、旬のものができただけ出荷されるので、どこへ行っても同じ野菜しかなかったり、当たり前だけど旬のものしか食べられなかったりする。

それに加えてコロナの影響もあってここ数ヶ月野菜の流通も滞り気味で、ハバナでは本当に野菜が手に入りにくい状態が続いていた。だがありがたいことに我が家の近所の歩いて行ける距離に小規模な農園がいくつかあって、直接出向いて野菜を手に入れることができる。交通機関が制限されてあちこち探して買いに行くことができなかった間も、夫がせっせと近所の農家へ通い農家のおじさんと仲良くなってくれたおかげで、新鮮な野菜を食べることができた。

外出規制も緩和された先週の日曜、その農園へ家族みんなで出かけた。今、野菜は少なく畑にあるのはバナナと Habichuelaアビチュエラ(日本でササゲの名で見られる長いインゲン豆の類)ぐらい。畑といっても雑草は生え放題で、一体どれが植えられた野菜の苗なのかわからない状態。その中を夫は自分の仕事と言わんばかりにとっと入っていき、次々にアビチュエラを収穫していく。息子も端っこの方に残っていたものをボチボチ採って楽しむ。

一見、畑とは思えないけれど・・・

隣に植えられていたトマトや他の葉物野菜はまだ収穫にはしばらくかかりそう。キューバでトマトは冬の野菜。11月から3月ぐらいの限られた時期にしか食べられない。

早く大きくなーれトマトたち!

アボガドの林もあるのだけれど、もう収穫されてしまってほとんど実が残っていない。グアバは収穫しきれずに落ちてしまっているものもあって「あー、もったいない!」と夫は嘆きながら木に残ったグアバの実を採っては次々に袋へ入れていく。

以前はなかった苗床を作るためのビニールハウスができていて、中にはピーマン、トマトなどの小さな苗がずらりと並んでいた。コロナ禍始めた我が家の室内農園?!に植えよう、と苗をいくつかもらって帰った。

ハウスの中の様子。苗は他の農家にも売るそうだ。
本日の収穫?バナナは緑のものをフライなどにして食べる食用、オレンジは苦味のある味付け用、アビチュエラ。グアバはすぐにジャムとシロップ漬けにした。

コロニアルな家の裏庭に大きなマンゴーとアボガドの木。木陰にハンモック吊るしてお昼寝。それからバナナ、グアバの木も植えて、少しの野菜も育てましょ。そんな庭のある家に住むのが我が家の夢・・・

ハバナクラブとバカルディ

キューバのラム酒メーカーとして有名なのは、何と言ってもHabana Clubハバナクラブ。メジャーな商品は日本の一般的な酒屋でも手に入るし、キューバ旅行の際にはハバナクラブのロゴをラム酒ボトルだけじゃなくて、Tシャツやキーホルダーのデザイン、グラスと色々なところで目にするはず。もちろん旅の途中で口にすることもあるだろうし、お土産として1〜2本買って帰る人も多い。地元の人にも好まれるキング・オブ・キューバンラムだ。

ハバナクラブの商品ラインナップ、このうち日本でもいくつかは比較的簡単に手に入る。
Photo by EcuRed

日本でも輸入物も含めたくさんのラム酒の銘柄が手に入ると思うけれど、最もよく知られているのはバカルディではないだろうか。バカルディがラム酒と知らなくても、「コウモリマークのお酒」といえば分かる人も多いかもしれない。少し前に日本でモヒートブームがあり、その時もバカルディが大々的にモヒートのベースとしてラム酒を宣伝したり、カクテルそのものを飲みきりサイズのボトルで販売していたりしたと聞いた。個人的にはレゲエにはまっていた時期にジャマイカのマイヤーズをよく飲んでいたけれど、コウモリがちょっとイカつい印象のバカルディのボトルもよく目にしていた記憶がある。

バカルディラムでモヒートを・・・の広告。Photo by Amazon.com

実はこのバカルディも元々キューバのラム酒ブランドだ。歴史的にはハバナクラブよりも古く1862年キューバ東部サンティアゴ・デ・クーバで、スペインからの移住者Facundo Bacardíファクンド・バカルディ氏が設立した蒸溜所に始まる。バカルディの品質にこだわって独自の手法で生まれた蒸留酒はキューバで初めての本格的ラム酒として人気を博し、1900年代初頭にはキューバだけでなく世界に知られるようになった。1959年の革命勝利後、企業の国有化が実施された時にはすでに海外に拠点を持っていたこともあり、キューバを去ってプエルトリコ、その後英領バミューダ諸島に本社を移しさらに大きく成長、今では世界最大級のラム酒ブランドとなったというわけだ。

20世紀初頭、キューバにまだバカルディがあった頃の広告。
Photo by バカルディジャパンHP/bacardijapan.com

一方、ハバナクラブは1934年、ハバナの隣の州現在のMatanzasマタンサス州カルデナスでJosé Alechabalaホセ・アレチャバラが設立したラム酒製造会社だ。会社は革命勝利後、国有化され現在にいたり、国を代表するラム酒ブランドとなった。だから今ももちろんハバナクラブはキューバ国営企業。ただし海外市場はフランスのベルノ・リカール社との合弁で設立されたハバナ・クラブ・インターナショナルが担当し、世界中でハバナ・クラブが販売されている。ちなみにアレチャバラ家は革命後スペインを経てアメリカへ移住したのだが、そこでハバナクラブの商標を登録して、一時期バカルディ社からハバナクラブという名の商品を販売していた。その後更新手続きを怠ったとかで商標権が失効してしまい、のちにキューバ政府がアメリカでの登録申請をして一度は認可された。が、本件その後すったもんだがあった末に最近になってやっとアメリカでキューバ政府機関がハバナクラブの商標権を持つことが認められた、という話だ。こんなところにもキューバとアメリカ両国の関係、ここ100年ほどの歴史が反映している。

こうした歴史背景があって現在バカルディ商品はキューバ国内で販売されていないのだが、バカルディ家の残した遺産は見ることができる。発祥の地、サンティアゴにあるバカルディ博物館は初代ファクンド・バカルディ氏の息子、エミリオ・バカルディが市長だった当時、邸宅の一部を博物館として公開したことに始まる。建物も含めてキューバの歴史に関する展示ともにバカルディ家のコレクションなど豊富な資料があり、とても見応えがある。

プラサホテルの裏手すぐ。付近にある他のコロニアル調の建物とは全く違った意匠で目立つのですぐに分かる。

ハバナの旧市街には旧バカルディ本社ビルが残っている。1930年キューバで初めて建てられたアール・デコ調のビルで、当時ハバナで一番高い建物でもあった。正面中央の塔のてっぺんにはバカルディ社のシンボルであるコウモリの装飾が施されている。現在は国内外企業の事務所が多く入るオフィスビル。建物としてもとても魅力的なので、旧市街散策中に是非チラッと見て「バカルディはキューバの会社だったんだなあ」と思い出してもらいたい。そしてそのあとはハバナクラブを使ったカクテルをどうぞ!

キューバでラム酒を

旅先でその土地のお酒を試してみるのは、アルコール好きでなくても楽しい体験のひとつだ。キューバについてちょっと調べれば、「現地で絶対飲みたいカクテル、モヒート」とか「ヘミングウェイの通ったフロリディータでダイキリを」なんていう記事を目にする。モヒートもダイキリもキューバ発祥といわれるキューバを代表するカクテルで、キューバを旅行すれば一度は口にする機会があるだろう。どちらも清涼感あふれる飲み物でカッと太陽の照る暑いキューバで飲むと、これがまた格段に美味い!

レストランやバーには必ずあるモヒート、色々な場所のものを飲み比べるのも楽しい

このモヒートもダイキリもラム酒をベースにしたカクテル、ちょっとお酒好きならキューバといえばラムとすぐに出てくるだろうけれど、そうでなければモヒートやダイキリは知っていてもそのベースがラム酒であることは知らない人もいるかもしれない。

キューバでお酒といえば、ラムなのだ。

Ron:スペイン語では「ロン」。もちろんキューバ人たちはRon大好き、お酒を飲む=Ronを飲むで、パーティーはもちろんキューバ人たちとのちょっと集まり、ドミノをしながらのお供にとRonは欠かせない。ホワイトラム、熟成した琥珀色のラム、ブランドの高級ラム、配給所で量り売りされているラム、どんなラムでも多くはストレートで飲む。家庭や身内のパーティーではカクテルなんて面倒なことはしないので、せいぜいコーラなどの炭酸飲料で割るかレモン果汁を加えて飲むのが普段の飲み方。アルコール度数は40度前後と高いけれどほのかに甘みがあるので意外に飲みやすく、味わいがある。飲みすぎなければ、ゆっくり知らず知らずのうちに気持ちよーく酔えるのが個人的には好きだ。

レトロな雰囲気のバーでラムを

このラム酒の原料となるのが、砂糖。

キューバの砂糖の歴史はコロンブスが2回目の航海の際にキューバに持ち込んだサトウキビの栽培に始まる。当初は果たしてこのカリブの島でアジア原産とされるサトウキビが育つのかという懸念もあったらしいが、キューバの気候と土壌が適していたことから各地で栽培され砂糖の生産がキューバ中に広がった。そして18世紀から19世紀にかけて砂糖ヨーロッパ向けの需要の高まりとともに世界的に有名な砂糖生産地となった。現在でもキューバの主要産業、輸出品のひとつだ。

サトウキビ photo by EcuRed

ラム酒はその砂糖の副産物、砂糖の生成過程でできる「糖蜜」を発酵、蒸留、熟成させて作られる。18世紀後半には砂糖農園で働く黒人奴隷たちが作って飲んでいることが知られるようになり、19世紀になると蒸留装置が持ち込まれ「商品」としてのラム酒作りが本格的に開始された。そうして現在ではキューバのお酒といえば、ラムとなったのだ。

キューバのラムといえば、ハバナクラブ。写真は宣伝広告から

ところでサトウキビ=砂糖とラム酒の関係は、日本の米と日本酒の関係に少し似ている。サトウキビはキューバの全土で栽培され全国各地に製糖工場があり、工場の近くには蒸留所があってそれぞれ独自の方法、香り付けをした異なる風味のラム酒、銘柄が存在する。日本の酒蔵のように無数にはないけれど、キューバ各地に蒸留所があって「地ラム酒」が作られているわけだ。

お酒好きの方、通の方、キューバのラム酒を是非カクテルだけでなくストレートで飲んで、 ハバナクラブ以外の銘柄もお試しを!

コロナ禍、おうちでTamalタマール作り

最近のキューバ、コロナの様子。ここ数日ハバナと近郊で2つのクラスターと海外帰国者の感染が重なって、もう2ヶ月ぐらい見たことのない2桁新規感染者に数字にギョッとなり、ハバナは規制緩和第1段階からなかなか次へ進まない。市内を自由に動けるようになったとはいえ、まだ仕事もままならず通常営業している場所もほとんどない上、このぶり返しで「家こもり生活」継続中。

で、時間はたっぷりある。

そこで普段はあまり見ない新鮮な生のトウモロコシが、手に入ったのでTamalタマールを作ることにした。タマールはトウモロコシをすり潰して味付けし、トウモロコシの皮で包んだものを蒸すか茹でるかして作る。食事と一緒に食べることもあるけれどおやつにもなるファーストフードで、街中でも売り歩いているので普段はこれを買って食べることが多い。実は我が家で作るのは初めて。よその家で作る様子を見たことはあるけれど、手順もよく覚えてない。せっかくなのでレシピを残そうと記録をとってみた。

材料:トウモロコシ、トウモロコシの皮、玉ねぎ、ピーマン、ニンニク、塩、胡椒、サラダ油、トマトピューレ(お好みで)
粒状にしたトウモロコシを挽いて潰す。今回はミンチマシーンを借りてきてグルグル、一緒に刻んだピーマンも入れて潰した。
味付け用のみじん切りにした玉ねぎ、ニンニクをサラダ油で炒め、塩・胡椒、好みでクミンなどのスパイスを加える。より風味を出すために豚肉の脂身片やチチャローネス(豚の皮の唐揚げ)を入れたりするのだけれど、今回はベジタリアン仕様でトマトピューレを少々入れた。これを潰したトウモロコシに加えてよく混ぜる。
トウモロコシの皮で出来上がった具材を包む。1つのタマールに2枚の皮を使用。まず1枚を円錐状に丸めて先の尖った方を上に折り曲げて袋状にし、具材を適量入れる。
もう1枚も同じように円錐状にして、今度は幅の広い方を下に被せるようにして蓋をする。
皮が外れて形が崩れないよう真ん中を紐で縛る。
たっぷりのお湯で茹でる。今回は圧力鍋を使って30分ほど。蒸してもOK。
できあがり!

素朴な味わいが何とも言えず美味。名前が違うかもしれないけれど、キューバだけでなくて中南米どこにでもあるポピュラーな料理。トウモロコシを潰すのが少々面倒だけれど、意外に簡単。自分で作れば具材のアレンジや塩加減も調整できてより一層美味しい。皮で包む作業は子供と一緒にやっても楽しい。

コロナ禍、「家こもり生活」で料理に関しては新たなチャレンジや学びあり。いくつになっても挑戦と学習は大事、いいこといいこと!

旬の食べもの、Mamoncillo マモンシージョ

Mamoncilloマモンシージョという日本にはない果物がキューバにある。ちょうどマンゴーと同じく夏場のこの時期が旬、時期はマンゴーより短く7月から9月のまさに真夏の果実でキューバ全国どこでも目にすることができる。

大きな枝のよくはった樹に、直径2cmほどの丸いプラタナスのような実がぶら下がるようにしてたくさんなる。硬い皮は中身が熟してもあまり変わらず緑色なので食べ頃を知るのが難しいけれど、市場や街角で売られているものはもうすでに食べられるものなので大丈夫。

こんな感じで小枝を束にして売られている。

食べ方は皮を軽く噛むとパリッと一文字に切れ目が入るので、2本の指で切れ目の両横をつまむ。すると果肉がポロっと出てくるのでそのまま口へ。真ん中に大きな種があるので、その周りにへばりついた果肉を口の中でチュパチュパと吸って食べる、というか果汁を   吸い取る感じ。最後はペッと種を出す。少しアクがあるけど酸味はなくとにかく甘い。歩きながらでもつまんで食べられるお手軽さもあってみんな大好き、この時期にはそこら中にマモンシージョの皮と種が散乱する。でも大きな種が喉に詰まると危ないので、小さな子供には与えない。あとこの果汁が服につくとシミになって、どうやっても取れないので要注意!我が家にも茶色いシミのできた手ぬぐいやらTシャツがある。

食べ始めると止まらない、次から次へと手を出したくなるマモンシージョだが、Champolaチャンポーラと呼ばれるジュースにしても美味しい。果肉を種から取るためにちょっと変わった作り方をする。

まずはひとつひとつ皮を外して、大きめの容器に入れる。

砂糖をたっぷり加える。ここまで入れなくても十分に果汁は甘いのだけれど、そこはキューバ式。

ヘラなどを使ってひたすら混ぜる。

種から果肉が剥がれて、白っぽいシロップ状になったらできあがり。少し水を加えてジュースにして召し上がれ!残った種にもまだ果肉が付いているのでさらにチュパチュパ可能。

結構手間なので、ひと夏に何度も作らないけれどいつものグアバやマンゴーのジュースに飽きた時に嬉しい味。

旬の食べもの、アボカド

7月になるとアボカドが出回り始める。もうこの時期はどこへ行ってもアボカド、どこの食卓にアボカドというほどキューバで今が旬、ポピュラーな食べ物だ。野菜が少ないキューバの食生活で、この時期手に入りやすく好きなだけ食べられるのが嬉しい。まだまだ旬のマンゴーと合わせて夏の好物だ。マンゴーはあと1ヶ月、8月末ぐらいまでだけれど、アボカドは10月ぐらいまで楽しむことができる。

旬にキューバを訪れたら、必ず一度は目にして口にするチャンスはあるけれど、見た目があまりに違うから街で売っているのを見てわかる人はまずいないしアボカドと知って驚く人も多い。それほどキューバのアボカドは、日本で知られているそれと違う。

日本でも最近は栄養価の高い野菜として注目され普通にスーパーで手に入るようになったが、多くはメキシコ産またはチリ産であるはずだ。鶏卵より2回りぐらい大きくて黒っぽい深い緑のゴツゴツした少し厚めの皮、大きな種、黄緑色のクリーミーで濃厚な身のものがアボカドと認識されているんじゃないだろうか。

でもキューバのアボカドは違う。

これは長細いタイプ。かなりの大きさになる。

まずデカい。いくつか種類があるので大きさも様々だが、小さいものでもソフトボールより少し大きいぐらい、大きいものだと長径が25cmほどになる。そして皮は艶やかな緑色でゴツゴツしていない。中には少し紫がかったものもある。皮が薄いので種に垂直に切れ目を入れて切り離した後は、ペロリと手で剥くことができる。

真ん中に大きな種。この種が少し動くのが感じられるようになったら食べ頃。

味は黄色味の濃い緑、日本でお馴染みのものよりさっぱりして水々しいものが多く、種類によってはもう少し濃厚なものもあるが、ネチョっと感はない。食べ方はいたってシンプル、特に他の具材と合わせることもなく塩とあればレモンをかけてサラダで食べる。お隣の国、メキシコのようにワカモレ(塩・ニンニクなど調味料を混ぜたディップ)にすることもない。

家の庭にもアボカド。

10年以上前にこのアボカドの種を日本へ持ち帰って植えてみたことがある。意外に簡単に芽は出て育ったが、寒さに弱いので冬の間は部屋に入れたりビニールで囲って防寒したりで何度か冬も越した。植木鉢だったのでそれほど大きくはならなかったけれど、日本でも実家のある静岡のように暖かいところだと実をつけることも可能だとか。最近は四国など日本でもアボカド栽培をしているところがあると聞く。

ちなみにアボカドは桃栗3年柿8年の柿と同じく8年ぐらいしないと実をつけないらしい。キューバのアボカドの木は高さ10m以上に育ち、ワサワサと実が沢山なっているのは壮観だ。大きな木だと1シーズンに200〜300個ほど熟すというから凄い。

我が家の食卓にもこれからしばらく、毎日アボカド。キューバで感じる数少ない旬をいただきます!

加速するキューバ人の行列好き?!

コロナ禍、街で見かける行列がより目立つようになった。キューバの行列に関するネタには事欠かないことについて以前書いたことがあるが、ここにきてまた新たな伝説となるような事態が起きている。

キューバの物不足は深刻で、時にはトイレットペーパー、洗剤、サラダ油といった生活必需品がほとんど市場に出回らなくことがあり、その後入荷されると店の前はその品物を求める人の大行列ができるのは、キューバでは毎度おなじみの出来事だ。

それが最近ハバナでは毎日、ありとあらゆるところで大行列を目にするという当たり前の光景となっている。

コロナ感染予防対策で多くの店が閉まっている上、人々の行動範囲は限られているから余計に行列ができやすいというのもあるが、その行列の先にある品物も食料品や衛生用品といったものがほとんどで、入荷状況もより限定されているように思う。ここ1ヶ月に我が家のある団地の店で売られたものといえば、

肉類:鶏肉、ソーセージ類、挽肉(なんの肉だか不明)

野菜類:バナナ、芋類、かぼちゃ、パパイア、マンゴーやグアバなどの果物、アボガド、ナス、ニンニク

その他食品:サラダ油、輸入品のりんご、トマトソース、炭酸飲料、パック入りジュース、ヨーグルト、ツナ缶

衛生用品:トイレットペーパー、洗濯洗剤、消毒液(漂白剤)、デオドラント

このほか配給品として、米、パン、砂糖、塩、豆類、コーヒー、鶏肉、ハム、卵、石鹸、歯磨き粉。

これくらいのものしかなくても、これしかなかったら皆必死に手に入れようとする。その結果「品物がなくても行列ができる」という現象が起きているのだ。

全くもって??!!

だとろうが、つまり「もしかしたら鶏肉が入荷するかもしれないからとりあえず並んで待とう」というわけ。これがエスカレートして、前日の夜から行列ができる事態となってしまった。もちろん全ての人が徹夜するわけでなく、その役割を買って出る人がいて家族や友達のために寝ずの番をする。中には順番を「売って」商売をする輩も出現する。そして、いざ何かが入荷した!となると瞬く間にその情報が伝わり、実際に行列をした人の何十倍という人がそこら中からワサワサとやってきて、物凄い人の列が形成される。どう見ても超密状態である。

店頭での混乱を避けるため、少し離れた公園にてまずは行列形成

この行列を制御するために店の人だけでなく、警察数名と地域の役員(キューバには日本の自治体に似た組織がある)が立ち会って大騒ぎ。警察は全ての人に品物が行き渡るようにするためと転売防止のため、同じ人が続けて同じ商品を購入しないように全員の身分証明書をスキャンして保存、その管理のためのアプリまで今回開発されたそうだ。さらに行列を乱さないようにまず整理券が配られ、これにしたがって順番に店に入って買い物、おひとり様当たりの購入数はもちろん限定。

公園の行列から、10人ずつ整理番号順に店の前へ向かう。なぜかここでは間隔をあけて整列させられる。
本日の整理番号
店内も人数制限。売っているのは本日の入荷商品鶏肉とレジの後ろに並ぶ商品のみ

もうホント、コロナのおかげでキューバの行列に新たなルールが次々に加わって訳がわからない・・・もちろん好きでやってる訳じゃないとわかっている。が、申し訳ないけれど、外国人でモノに不自由なく生きてきた私にはお手上げなので夫に頑張ってもらうしかない。

本日の勝利品「鶏肉」お一人様2袋限定

キューバの物不足の原因は何か?

一番はアメリカの経済封鎖と言わざるを得ない。キューバは革命後、アメリカの制裁を受け続けている。単純にアメリカから製品や原料が入ってこないというだけでなく、原材料をアメリカで調達して他国で生産された品物の輸入、キューバへの送金、キューバへの支援等あらゆるものが制限されている。アメリカがダメなら他の国から、と思ってもキューバを助けようとするとその国がアメリカからの制裁を受けることになってしまうから、それもままならない。また小さな島国であるキューバは資源に恵まれているとは言えないので、自国の産業発展のためには原材料と燃料(原油)を輸入するしかないのだが、同じ理由でありとあらゆる産業の発展が制限される。キューバが特に力を入れ、世界的にも名高い医療分野でも優秀な医師は多く育成されても、最新の機材を導入できない、病院の設備を整えることができない、といったことが起こる。また多くの特許を持つ医薬品も原材料が入手できないため、生産がストップしている製品が数多くある。病院で薬を処方されても薬局で入手できないのは日常茶飯事、自国で生産できるはずの医薬品をなぜかアメリカに住む家族に頼んで送ってもらう、という皮肉な事態が起きる。

キューバ料理の真髄

キューバ料理とは、

「先住民族、大航海時代のスペイン人、奴隷として連れてこられたアフリカ人の食文化が融合した、クレオール(植民地で生まれた者)と言われる食事で、米や豆類、ユカ芋やバナナを使った料理が中心。」

などとよく説明される。現地でもComida Cubanaキューバ料理とは言わずに、Comida Criollaクレオール料理と呼ぶことが多い。でもこれだけでは実際にどんなものかピンとこないだろうから、

・主食はお米で、たくさん食べる。
・肉食志向が強く、中でも豚肉が好まれる。
・島国にも関わらず魚介類はあまり食べない。
・豆類、根菜類、バナナを副食としてよく食べる。
・野菜類はあまり食べない。
・味付けの基本は塩、ニンニク、玉ねぎで、トマトソースも好まれる。
・辛いものは苦手な人が多く、癖のあるスパイス類もあまり使わない。

といった感じで説明する。代表的な料理もいくつかあるが、一般家庭で最も登場回数が多い超定番キューバ料理のメニューといえば、これだろう。

Congrí コングリ(豆の炊き込みご飯)
Bisté de Cerdo ビステキ・デ・セルド(ポークステーキ)
Yuca con mojo ユカ・コン・モホ(ユカ芋のニンニクソースかけ)

副菜がバナナのフライに変わったり、野菜サラダをちょっと添えたりする。大晦日の食事は間違いなくコングリ、豚肉、ユカ芋で決まりだが、メインディッシュが豚の塊を焼くCerdo asado セルド・アサードに変わる。レストランでは各料理が別に盛り付けられるが、家庭では各々が一皿に全てを一緒に盛って食べるのがキューバ式。キューバ人の食べるご飯の量は半端なく山盛りのご飯の上に肉をペロンと一切れ、芋類、あればきゅうりとトマトの輪切りをチョロっとのせる。ご飯を「乾いた」状態=白ご飯で食べるのが嫌いで、炊き込みご飯でなければ、豆類などのスープをかけるか、肉料理などのソースを絡めて食べる。

こうしたクリオール料理はレストランでも扱っていることが多いので、観光客はちょっとオシャレにアレンジされたものを食べることができる。

より家庭料理に近いものを食べたければ、ビニャーレスやハバナ郊外によくある定番料理をビッフェ形式で提供するレストランへ行くか、もしくはカサ・パルティクラル(民宿)へ滞在して食事を頼むといい。

ところでここ数ヶ月、家ごもりでしっかり調理をして家族揃って食事をする機会が多く、キューバ人=夫の食志向を改めて認識。

なんて揚げ物が好きな奴らだろう!

全ての食事の準備が終わって、温め直すものはレンジでチンして、さあ盛り付けという段階になって、夫は必ず何かを揚げ始める。

昨日の夜はサツマイモ。

バナナも揚げる、ちょっと黒くなるまで。揚げ物奉行の夫が担当。揚げる順序や揚げ具合、蓋の有無などいちいちうるさいので、手を出さない。

ほぼ毎食の揚げ物となると、サラダ油の消費量がものすごい。一人暮らしの頃は1リットルのボトルが半年以上もっていた気がするけれど、今我が家では1週間ぐらいでなくなる。だからサラダ油が品薄になると、キューバ人たちは慌てて大騒ぎするわけだ。

コロナ禍で、ダイエットとは対極にあるキューバ料理の真髄を夫と息子の体型を見ながら知る今日この頃であった。