コロナ禍のオリンピックが終わった。
開催に対しての賛否や数々の「闇」はさておき、始まってしまえばオリンピック好きの日本人の血が騒いでテレビの前に居座り、ネットで結果をチェックしまくっていた、という人も多かったのではないだろうか。
キューバにいる私もまさにそんな感じだった。ここ1ヶ月コロナの状況は最悪でほとんど出かけることもなく家にいてテレビやネットで視聴できたというのもあるけれど、日本とキューバ両国の選手の活躍に心浮かれた。
正直、開始前キューバとオリンピック について書いた時は、今回それほどキューバが好成績をおさめるとは期待していなかった。1年延期したことでの調整の難しさはどの選手も同じだけど、コロナ禍で経済状況の悪化、物不足の深刻化するキューバで決してスポーツに打ち込める万全の環境ではなかっただろうにと危惧し、メダルが期待されている選手もしくじるんじゃないかと。
が、キューバ人選手たちは期待を裏切ることはなく、久しぶりに明るいニュースを届けてくれた。
photo by Granma
8月8日全ての競技が終了して無事閉会式を迎え、結果、キューバは金7個、銀3個、銅5個の合計15個のメダルを獲得し、国別14位の成績を残した。メダルの数だけじゃないけれど、出場選手69名で15個(カヌーのひとつを除いて全て個人種目)、単純にメダル獲得率を出すとすればかなりの高確率なんじゃない?と思ってしまった。上位をみると先進国と呼ばれる国が多くを占め、そうそうたる大国がズラーっと並ぶ中で14番目のキューバ。どう見ても場違いなこのポジションにカリブ海の小国がつけているのをみると、なんだかすごく誇らしいし、やはりスポーツ大国であると改めて感心させられた。
それでは以下、金メダリストをご紹介!
ミハイン・ロペス photo by Granma, original: Reuters
【Mijaín López Múñez】ミハイン・ロペス・ムニェス レスリング/グレコリーローマンスタイル 130kg級 怒涛のオリンピック4連覇、しかも全試合無失点!強っ!!日本でも「怪物」として紹介されていた。38歳、今大会で引退を表明しているけれど、まだまだいけそうな感じ。
ルイス・アルベルト・オルタ photo by Granma, original: Reuters
【Luis Alberto Orta Sánchez】ルイス・アルベルト・オルタ・サンチェス レスリング/グレコリーローマンスタイル 60kg級 オリンピック初出場にして、日本の文田選手を破っての金。文田選手は期待された金を取れずに泣いていたけれど、オルタ選手も自分がやってのけた偉業を信じられない様子で涙目だったのが印象的だった。
セグエイ・トレス、フェルナンド・ダヤン photo by Granma, original: Reuters
【Seguey Torres Madrigal/Fernando Dayán Jorge】セグエイ・トレス・マドリガル/フェルナンド・ダヤン・ホルヘ カヌー C2 1000m 今回のキューバのメダルで一番の感動!メダル候補でもなかったので朝一番で飛び込んできたニュースと映像見て、みんなビックリ。ラストで中国・ドイツとの接戦を制してのゴール場面、アナウンサーの興奮ぶりも話題になっていたっけ。いやー、マジで良かった!!
フリオ・セサル photo by Granma, original: Reuters
【Julio César La Cruz Peraza】フリオ・セサル・ラ・クルス・ペラサ ボクシング 91kg級 キューバが歴代最高メダル数を誇るボクシングチームのキャプテン、リオ大会81kg級に続いて2大会連続の金。試合後のインタビューでめちゃくちゃ多弁だったのがキューバ人らしいなあ、と思ってしまった。
【Roniel Iglesias Sotolongo】ロニエル・イグレシアス・ソトロンゴ ボクシング 69kg級 北京大会で銅、ロンドン大会で金メダル。前回リオ大会は出場権すら得ることができなかったところをカンバックしての金。感慨深く自らの復活劇を語っていた。
【Arlen López Cardona】アルレン・ロペス・ゴルドナ ボクシング 81kg級 リオ大会75kg級金メダルに続いて2つ目の金。奥様が双子の子供を妊娠中だそうで、「双子ちゃんは生まれる前から金メダルを手にしている!」と新聞の見出し、お父ちゃん頑張った!
アンディ・クルス photo by Granma, original: Reuters
【Andy Cruz Gómez】アンディ・クルス・ゴメス ボクシング 63kg級 オリンピック初出場にして金メダル候補として最も注目されていた選手。大会最終日にキューバ最後の金メダルをもたらし、まさしく有終の美を飾ってくれた。もう目指すはオリンピック連覇!
こうやってみるとやはりボクシングはすごい。8階級のうち7階級にそれぞれ一人ずつ選手を送り込み、金4つ、銅1つ(57kg級Lázaro J.Alvarez Estrada 選手)。
このほか、メダル候補でしっかり獲ってくれたのが、柔道4大会連続メダルのIdalys Ortizイダリス・オルティス選手(78超kg級・銀)、射撃リオ大会金メダルのLeuris Pupoレウリス・プポ選手(ラピッドファイアピストル・銀)、陸上円盤投げYaimé Pérezジャイメ・ペレス選手(銅)、テコンドーのRafael Albaラファエル・アルバ選手(銅)、そしてもう少しで金・銀フィニッシュだったのにーっと悔しかったのが、陸上幅跳びのJuán Miguel Echaverríaフアン・ミゲル・エチャベリア選手とMaikel Massóマイケル・マッソ選手。これはライブで見ていたのだけれど、二人とも1、2位につけながら途中で負傷して後半飛べずに記録を伸ばすことができず、最後の最後でギリシャのMiltiadis Tentoglou選手に抜かれて金・銀を逃してしまうという残念な幕切れにため息が出た。二人とも22歳と若いし、まだまだ次があるよ、と言っても表彰台での二人の表情がなんともいえず思わず泣けてしまった。
次もあるけど、やっぱり獲りたかった金メダル・・・photo by Granma, original: Reuters
と、メダルを獲った選手もそうでない選手も一人一人のこれまでの努力と立派な闘いぶりに敬意、TOKYOの閉会式会場の浮かび上がった一言「ARIGATO」を送りたい。