キューバと日本、遠く離れた国同士ではあるけれど、二つの国の関係はとても良い。政治的、歴史的な関係はもちろんのこと、キューバ人は日本という国や日本文化、日本人に非常に関心があり、多くは日本をとても素晴らしい国としてリスペクトしてくれ、俗に言う「親日」であると感じる。社会主義つながりで中国やベトナムとの関係が深いけれど、同じアジアの国でありながら一般市民レベルでも意外にちゃんと各々の違いも認識されていて、その上で日本を評価してくれるのは日本人として嬉しい。
日本の発展したテクノロジーの高さについて「すごいよねー」と羨望されることがよくあるけれど、日本文化に関心を持って「日本大好き」という人も多い。今や世界中にいる日本のアニメ、漫画、ゲームに影響された「オタク」たちもたくさんいる。そして彼らの中には日本語に興味を持って勉強し、驚くほど上手に話す若者もいたりする。
スポーツでいえば野球、今季も日本のプロ野球シーズンが始まってからは日本で活躍するキューバ人選手の成績が連日ニュースで流れる。両国の野球を介した親善が盛んなのはよく知られた通りだ。柔道は世界レベルで有名だし、空手道、剣道、合気道の教室もたくさんあるし、先日は居合道をやっている人がいてびっくりした。
歴史的に見ると、キューバを初めて訪れた日本人は支倉常長であるとされる。支倉は1613年伊達政宗の命でローマ法王へ謁見するためローマを目指したその途中でキューバ、ハバナへ寄港した。
その後今から120年ほど前に日本から移民としてやってきた人たちがおり、今でも千人ほどの日系人がハバナや青年の島に暮らす。日本と国交樹立してからは今年で92年。ちなみに駐在の方なども含めキューバ在住日本人は、近年90〜100人で推移しているそう。
政治的な関係でいうと、日本はキューバに対してODAその他の形で多くの支援を行なっている。最近では日本の稲作用の農機具が導入され、早速キューバ各地に配置されたとのニュースがあった。米を主食とするキューバでは、米の自給率をあげるためにも日本から多くの援助を受けて近年その効果が上がっているとのこと。また今、ハバナ市内では昨年日本から送られたオレンジ色のゴミ収集車がそこら中で見られるし、消防車も日本から寄贈されたものが活躍している。
一方、一般の企業がキューバに投資しようという動きはアメリカとの国交回復後、一瞬盛り上がったがその後は萎んでしまった。日本人観光客はここ10〜15年で随分増えた。特にアメリカとの国交回復でこちらも「行くなら今!」的なコピーでブーム到来の兆しはあったが、その後落ち込むと言うほどではないにしろ伸びは期待したほどでもなく・・・これらの背後には日本とアメリカ、アメリカとキューバの関係が大きく関わっていることは言うまでもない。
TVでも日本の番組を時々やっている。アニメだけでなくドラマ、映画、ドキュメント番組まで、『おしん』はもう何度放送されたことか。年配の人だと日本=黒澤明、七人の侍、座頭市という回路の人も多い。そして黒澤を口にする年齢のおじさんの中には日本人と一緒に漁をした体験を持ち、船長と醤油で刺身を食べたことを自慢してくれる率も高い。実際に1960〜70年代には日本がキューバへ漁業関連の技術提供や指導を多くしていた。
それからキューバ人が日本について知っていることで注目した欲しいのは、ヒロシマ・ナガサキの認知度だ。キューバでは学校で子供達に日本の被爆体験について教えられる。毎年8月6日と9日は新聞なりTVなりでなんらかの報道がされ、多くの人がこの日付まで含めてヒロシマ・ナガサキを知っている。
こうやってみるとキューバにいながら、日本に遭遇する機会は意外に多いし、それもあって日本人がキューバについて知っているよりずっとキューバ人は日本について詳しい、と言えるかもしれない。