意外にシエンフエゴス

シエンフエゴスの街の名前を最初に聞いたのは、キューバを代表する歌手Benny Moré ベニー・モレの唄の歌詞だったように思う。実際に訪れたのは、数年前キューバに暮らすようになってからだ。トリニダに行く途中に立ち寄ったその街は、これといったインパクトもなく「ふーん」という感じだった。そしてお土産物屋で流れていたベニー・モレとプラド通りにある銅像で、そこが彼の出身地であると知った。

シエンフエゴスはキューバ中部南岸にある人口15万人ほどの都市、キューバでは珍しく工業を主要産業とするが、2005年旧市街のコロニアルな街並みが世界遺産に登録され、クルーズ船の寄港地となっていることもあり近年観光にも力を入れている。

スペイン植民地であったキューバにはスペイン様式のコロニアルな街が残るが、このシエンフエゴスはフランス人によってつくられた街。というのも、お隣ハイチが1804年にフランスから独立した際に、キューバへ渡って入植したフランス人たちがいくらかいたそうでシエンフエゴスは1819年に彼らによって作られた。その頃すでにキューバはスペイン領であったため他の街と同様、広場を中心に格子状に道を配して街を形成する大まかな構造はスペイン式としたものの、各々の建物様式や細部の装飾などはフランス式が取り入れられたという。そう言われてみると、メインストリートプラド通りに並ぶ建物や、街の中心ホセ・マルティ広場周辺の建物は、他のキューバの街とはちょっと違う。

フランスへ行ったことがないのでよくわからないのだけれど、外壁を飾るレリーフなどにおフランスなエッセンスが感じられなくもない。

このシエンフエゴスも昨年2019年が創立200年の区切りの年だったため、それに併せて観光名所であるトーマステリー劇場やバジェ邸の修復も行われた。

Teatro Tomás Terry テアトロ・トーマステリー トーマステリー劇場は1889年に作られたキューバでも屈指の劇場のひとつで、今でも様々な公演が行われている。スペイン、フランス、イタリアとヨーロッパ各地の折中様式で舞台上部の装飾や天井のフラスコ画が印象的だが、木製の椅子や照明に施された装飾といったディテールも洒落ている。利用時でなければ内部の見学も可能。

Palacio de Valle パラシオ・デ・バージェ バジェ氏の邸宅、パラシオ=宮殿とある通り個人の家とは思えない豪邸。ヨーロッパからアジアまで多国籍な建築様式、デザインが特徴で建築資材も各国から取り寄せたという、「お金持ちの考えることはわからない」と言いたくなるほど行き過ぎた感がある建物。建築された1917年当時は、これだけの贅沢ができる階層の人たちがキューバにいたということ。屋上がテラスになっていて、モヒートを飲みながら一服することができる。ここから見える穏やかなシエンフエゴス湾の眺めは思わずホッコリ、長居したくなる。

シエンフエゴスでいつも思うのは「ゴミがない」。ハバナ市内はどこを歩いていてもゴミだらけで悲しくなるのだけれど、シエンフエゴスは人が多く集まる公園でもゴミがほとんどなくキレイだ。ハバナの汚さにウンザリしているので、それだけで「すてきなところだー」と思ってしまうが、実際キューバ人にも住んでみたいと思わせる人気の街らしい。適度に都会でありながら、海あり山あり風光明媚で住みやすそうといえば確かにそうかもしれない。通常、シエンフエゴスはトリニダの行き帰りに数時間寄るだけのことが多いのだけれど、日本人観光客の方に案内しても「居心地がいい」「気に入った」「いい街」といったプラスの感想が多くウケがいい

シエンフエゴス、意外にいける?!

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