ハバナで列車に乗ってみる

キューバに鉄道に列車が登場したのは1837年、世界的にみても早い時期に列車が導入された国であることはあまり知られていないかもしれない。植民地時代サトウキビ栽培の全盛期、その収穫したサトウキビや生産した砂糖を運ぶためにキューバ各地に鉄道が敷設されたそうだ。もちろんそのうち客車も走るようになり、20世紀の前半ぐらいまでは主要な移動手段であったのが、自動車が台頭して道路網が整備されると鉄道の近代化は遅れ、今キューバ全土にある鉄道路線は効率的に稼働しているとは言えない。ハバナ−サンティアゴ・デ・クーバなど地方を結ぶ長距離路線もあるが、頻繁にはなく時間も車より随分とかかってしまう上、故障や遅延も多いため、陸路であれば車での移動の方が一般的だ。

そのためなかなか列車に乗る機会はないのだけれど、ハバナと近郊を結ぶ2路線で列車に乗ったことがある。2年ほど前までは観光客にも人気のハバナ・カサブランカとマタンサスを結ぶ通称ハーシー列車(チョコレートで有名なハーシー社が輸出用砂糖を運搬する列車のために敷設、キューバで唯一電化された路線)に乗ることができたのだけれど、老朽化が進み修復予定とのことで現在運休中。

ハバナ−San José de las Lejas サン・ホセ・デ・ラス・レハス
ハバナから車なら1時間弱、お隣Mayabequeマヤベケ州の州都であるサン・ホセ・デ・ラス・レハス間の列車。列車だと2時間近くかかる。最初のうちは「ディズニーランドの列車みたい!」と楽しいのだけど、同じような車窓の景色に飽きてくるとお尻の痛さが気になる。サン・ホセより先へも行くけれどお試しだけならこの辺りまで。

サン・ホセ駅。ハバナは旧市街にある中央駅(現在修復中)に発着、もちろん途中の駅で乗下車も可能。

ガヤガヤ賑やかな車内。キューバ人たちの旅姿を観察するのも面白い。

ハバナ−Marielマリエル
ハバナと経済開発特区で有名なマリエル港を結ぶ路線。マリエル港からの貨物車の利用が多いようだが、路線に隣接する地域に住む人たちが近距離利用する客車も1日に数本走っている。鉄道好きの友人の息子さんとPunta Bravaプンタ・ブラバ駅まで1時間ほどの距離を乗ってみた。ローカル色いっぱいでなかなか楽しい経験ができる。

革命広場近く、19 de Noviembre駅。ここがハバナの始発、終点。

乗車前に駅舎内で切符を購入。

出発時間になると構内へ入場、自由席。運が良かったのか、ほぼ定時に出発。

ハバナの西隣りアルテミサとの州境近くにあるプンタ・ブラバ駅で下車。ここからハバナへは車で帰った。

こうした列車体験、ハバナから日帰りで往復できる範囲だとこれといった観光地となる目的地もなく、運行している本数が極端に少ないので往復列車に乗るのは難しいかもしれない。でも鉄道マニアや乗り物好きの方はもちろん、世界でも有数の優れた鉄道を持つ国に住む日本人は、遊園地のアトラクション感覚でレトロでいかにもキューバらしいボロさ加減の列車に乗れば、遠足気分を楽しめること間違いなし?!

キューバインターネット最新情報 2020.6

コロナウィルス感染予防対策のため家で過ごす時間が長くなり、多くの人が自宅で仕事をせざるを得ない状況が続いている。自宅でリモート勤務となるとインターネットは必須だけれど、キューバではまだまだネットが使える環境にある家庭は少ない。それでも2018年12月以降1年ほどで携帯電話を利用したデータ通信3G/4G によるネット接続が普及して、公園やホテルへwifiを繋ぎに行かなくてもどうにかインターネットへアクセス可能となったのでリモート勤務も成立、かもしれない。とはいえ、この状況下、自宅でネットを繋いでまで仕事をしなくてはならないキューバ人は少ないように思う。

以前からETECSAエテクサ(キューバの国営電話会社)に対するコメントは、キューバらしいジョークを交えて面白おかしくネット上でアップされているので楽しんで見ているけれど、コロナ対策が始まって以降このETECSAへの苦情や非難が目立つようになった。ネットが繋がりにくい、チャージの残高の減り方がおかしい、深夜の割引料金が適応されているのか怪しい、コロナで皆困っているのに値下げしないのか・・・などなど。なかでもデータ通信の料金がごまかされているのではないか疑惑、についてが面白い。(以下、すべて フェイスブック)

ETECSAの頭文字を使って、「我々は、確実に騙そうと試みております。」

映画の宣伝広告「近日公開、偉大なる詐欺と失われたギガの謎 製作・監督ETECSA」*ギガ=10CUC(約1200円)/1GBの料金プランを指す

「いつ、Tras la huella(ドラマ『痕跡を追って』実際にキューバで起こった事件を題材にした人気の刑事番組、)でETECSAの残高泥棒事件についてやるんだろう?」

で、上の回答?!

「次回 Tras la huella 事件:ギガ」

これらのコメントに対応しているわけではないが、ETECSAが現在のインターネット事情について説明していた記事(2020年5月29日付グランマ新聞)があった。データ通信に関しては、「基地数を増やすなどして、ここ数ヶ月で通信量とスピードともに90%アップした。」としつつも、「もっとも集中する午後9時から10時のアクセス数が通常時に約41万7千(2019年データ)であるのに対し、(外出自粛が続く)現在これよりさらに20万増となっている」から遅くなるのも仕方がない、と。料金については、利用者に納得してもらえる新たな料金プランを設定するとしただけで明確な提示はなかったが「キューバで一般対象のネット接続が開始した2013年6月に4.5CUC(約540円)/1時間だったものが、現在では0.7CUC(約85円)/1時間となり、携帯電話回線料金は2008年に60CUCだったのが、2011年以降は30CUCで現在も同じ料金を保持している」こんなに下がっているじゃないか、と。

携帯電話回線数:610万回線
携帯電話データ通信利用アカウント数:370万
家庭用インターネット回線利用数:16万
3G基地数:1,629
4G基地数:666
*キューバの人口は約1,120万人

キューバでは、どんなことに対してもあれこれ数字を並べて「ほーら、我々は国民のためにこんなに頑張っている、革命万歳!」ともってくのが常道だけど、数字をみたところで改善や改革を実感するは難しい・・・ただここ数年のネット環境向上については、他分野での対応に比べてよく頑張ってるなあ、と個人的には思う。でも世界的なレ改善ベルで見ると確かにまだまだな訳で、これからもETECSAをネタにしたSNS上の書き込みはきっと続く。面白いからこれはこれで楽しみだけれど、コロナを機にインターネットの重要性がより強調されてETECSAがもっと頑張ってくれるに違いない、と信じたい。

ETECSA期待してるよー!

徒然なるままに6月

コロナ感染予防対策の影響で、「ほぼ隔離生活」となり、徒然なるままに2ヶ月が過ぎた。できる限り規則正しい生活をして有り余る時間を有効に使おう、なんて考えているのは我が家で私だけで、男どもは妙な結束をして共に遅寝遅起き、気の向くままの毎日を送ってよし、としている。息子に対しては最初のうちこそ朝早く起こして午前中は机に向かわせようとしたけれど、今では夜遅くまで父親と一緒に映画を見て、時には昼近くまで寝て、食べて、午後からは同じアパートに住む友達が来て夕食の時間まで遊んで、を放任している。いかんなー。

休校対策として行われているテレビ授業は週2回の算数と国語(スペイン語)のみで、そこで出される宿題を1日のどこかで無理矢理一緒に座ってやらせるのが精一杯だ。他の国ならインターネットを使ってリモート授業を受けたり色々な教育サイトを利用したりできるのだろうけれど、我が家にネット環境はまだない。あったとしても一般家庭で繋ぎっぱなしにする贅沢はできない。キューバのインターネット事情は今だにそんなものなので、このコロナを機にネット環境の充実が加速することを願ってやまない。

それでも子供達が夢中になるのはデジタルな遊び=ゲームであって何処も同じ、みんなで座り込んで小さな画面に向かう忌々しい光景をここ2ヶ月毎日見せられている。時に中断させて一緒にドミノをやったり、パズルをやったりしているのだけれど、さすがにずっと相手をするわけにはいかない。キューバの子供達はこのまま夏休みへ突入、夏休み返上で授業はなさそうなので、なんと5ヶ月連続の休校!9月にスムーズに学校生活が開始できるとは、誰も信じない。親も先生たちも・・・

いつまで続くかこの「ほぼ隔離生活」。先が読めない不安はあるけれど、非日常のこの状態を楽しむ余裕はまだある。子供と一緒に久しぶりに算数の問題解いて、スペイン語の勉強して、家族でドミノして、いつもより丁寧に家事をやって、いつも以上に活字を読んで、いつも見られない映画を見て、思いのほかに退屈することもなく、あっという間に1日が過ぎる。

あっそれじゃ徒然なるまま、じゃないか。

折り紙たのし。6月といえば紫陽花(あじさい)、は日本限定だけど。

コロナ禍、コスタで泳ぐ

今年のキューバ、4月は史上最高の月間平均気温を記録したそうで、本格的な夏到来の前にすでに各地で33〜35度と真夏並みに気温が上がっている。5月になって雨も増え始めたが、日差しが出るとカッと照る太陽と真っ青な空はキューバ人たちを海へ誘う。11月〜3月上旬ぐらいキューバで言うところの「冬」の季節、十分に水にも入れる暖かさなのだが、キューバ人たちは海水浴をしない。この時期ビーチは外国人観光客のものだ。キューバ人にとって海の季節はやはり「夏」、4月ぐらいになると週末のビーチがボチボチ混み始める。

だが今年はコロナの影響で外出自粛、ビーチは閉鎖状態。自粛生活が始まってすぐぐらいに、観光客がいないのを利用して各地のビーチ清掃をしています、とニュースになっていたから、今行けばゴミのない綺麗なビーチが楽しめるのだろうな、と思いを馳せるがもちろん行けない・・・

ところで我が家のある団地は海のすぐそば、オーシャンビューではないけれど家からも真っ青な海が望め、今の時期は海に沈む夕日を眺めることができるという贅沢な立地。海辺は砂浜ではなくゴツゴツとして岩場なのだけれど、「夏」になるとこのコスタ(スペイン語で海岸の意味)でも近所の人たちが海水浴を楽しむ。遠浅ではないので沖に出ることはできないけれど、夏の夕涼みがてらコスタで水に浸かるのは気持ちがいいし、わざわざビーチまで行かなくてもいいので子供連れには助かる。

今はそのコスタでも、もちろん泳ぐ人はいない。が、ここ1ヶ月以上息子の体にできた湿疹が治らず、近所の皮膚科の先生に診てもらったところ薬を処方された他、

「コスタに行って海水に浸かりなさい」

という指示が出た。お医者さんの指示だから、誰かに咎められても言い訳できる。

「よし、コスタへ行こう!」

家から徒歩5分、道中誰にも会わないのだけれどマスクをして、いざコスタへ。さすがに海へ入る人はいなかったが、釣りをする人、沖には近くのコヒマルからきたのだろうか小さな釣船も見かけた。そして息子と夫は海の中へ。

「¡Qué ricoooo! (気持ちいいー!)」

と二人とも大喜び。巣ごもり生活から一瞬解放されて、水に浸かって涼しんで、カニやウニの生態観測もできて、これで湿疹も治ったら言うことなし?!

ということで2日目からはゴーグルとシュノーケリング持参、やる気満々で海水療法を楽しんでいる。

コスタからハバナの街を見る。こんなに近いのに2ヶ月近く行っていない。¡Oh, Habana!

ハバナでプラネタリウム

プラネタリウム、と聞くとなんとなく昭和の匂い、子供の頃の想い出がよみがえり懐かしい感じがしてならない。小学生のとき、学区外へ子供同士で出かけるのは基本的に禁止されていたのだけど、高学年になるとバスに乗って中心街にある図書館や児童会館など学習目的の健全な場所へ行くことが解禁となった。児童会館には体験学習ができるような遊具や定期的なイベントなどがあって、週末や長期の休みには友達同士でよく行ったのだが、そこにはプラネタリウムが併設されていた。星にたいして興味があった訳ではないけれど、季節ごとに変わる内容を見た覚えがある。この地元のプラネタリウムは、だいぶ前に閉館したと聞いたけれど、最近日本のプラネタリウム事情はどうなんだろう・・・

ハバナ旧市街、ビエハ広場にプラネタリウムがある。元々映画館だったという広場に面したコロニアルな建物に入っているのだが、大きな看板が出ている訳でもないので、「こんなところにプラネタリウム?」と知らなければ見過ごしてしまう。

正面中央の白い2階建の建物がプラネタリウム。

正面入り口機の扉の横にスペイン語で「PLANETARIO」のプレートが掲げられおり、よーく見ると

Japón

の文字。そう、ハバナのプラネタリウムは日本産。2009年に日本とキューバの国交樹立80周年を記念してつくられたものなのだ。

コロニアルな建物の外観から想像がつかないが、中の施設はモダンで洒落ている。入り口を入るとすぐに、目の前にある大きくな「太陽」に驚く。その輝く「太陽」周りに惑星が配置されていて、館内全体で暗い宇宙の中に浮かぶ太陽系を表現するという凝った演出。

全体が撮れなかったので、上下2枚の写真で。どんな感じかわかる?

宇宙や星に関するパネル展示や体験施設がいくつかにあり、これらをガイドの案内で見学した後、いよいよプラネタリウム。

「ん?!どこで?」

ガイドに導かれて、なんと太陽の中へ!

太陽の球体がプラネタリウムの星が映し出される天球となる仕組み、素晴らしい発想じゃない!さすがHecho en Japón(メードインジャパン)!!座席もキューバの他の映画館みたいに硬かったり、沈みすぎたりせずにゆったり快適、星空の解説はほとんと覚えていないけれど空調の効いた「太陽」の中で、星空を見る体験はなかなかのものだった。

ハバナでプラネタリウム、いかが?

Planetario de la Habana Vieja(ハバナ旧市街プラネタリウム)
ビエハ広場内。開館不定期。本来決まっているのだが、調整中、故障中などの理由でなぜか閉まっていることが多い。入場時間が決まっているので、希望時間のチケットを広場内すぐ近くにあるキオスクで購入。外国人10CUC。見学時間は約1時間、ガイド付き。

キューバのコロナウィルス感染予防対策:国境閉鎖継続

キューバのコロナウィルス感染者数(5月22日発表)
累計:1916人、死亡者数:81人、回復者:1631人

キューバでは3月24日より国境閉鎖のほか様々なコロナウィルス感染予防対策が実施され、2ヶ月が経過した。ここ10日ほどは新規の感染者数も1桁〜20人以下と落ち着いてきて、発症場所もハバナと2、3の州に限定している。想定された最低ラインで推移していているものの「感染予防対策は緩めない」と先週のうちに政府の発表があり、すべての制限が期限未定で延長されることになった。これに伴い、特別便を除いて国際線の発着も7月以降になる見通しで国境閉鎖状態が続く。

観光:観光省は宿泊等の観光施設の再開も当面見合わせる、と発表。この間を利用して老朽化した施設の修繕等を進めている。

教育機関:学校等の再開時期は未定。キューバでは6月が学年末、卒業シーズンだがこのまま本年度は休校、9月の新学期に再開となる模様。教育省によると再開から8週間は、休校となった現学年の内容を学習し、その後新規の内容に入るとあったが、卒業年度の学年はどうするのだろう?

交通:各州を結ぶバス、鉄道路線、公共交通機関は引き続き運休。

レストラン、店舗:デリバリー、持ち帰りの形態で政府が指定許可した店舗のみ営業可能。基本的に食料品と衛生用品の販売のみ。

外出:禁止はしないが自粛徹底。

隔離:ハバナ市内では数カ所の地区で隔離状態が継続中。海外から入国時には隔離施設へ空港から直行しそのまま14日間、感染接触者も隔離施設または自宅にて14日間隔離する。

予防:マスクの着用(外出時、公共の場でしていなかった場合は罰金)や手洗い・消毒の推奨、ほぼ毎日の家庭訪問も継続実施される。

これらの規制の緩和については、まだ発表されていない。現状維持のまま今後、全国の感染状況を正確に把握するため、ランダムに抗体検査を実施する予定だそう。最終的には国内感染者ゼロになってから、2週間観察後にようやく規制緩和=国境再開という噂もある。

先はまだ長い・・・

キューバが最も力を入れる保健医療に関連することだけあって、政策に対する取り組みの体制や厳格さが際立っている気がする。検査は感染の疑いがある人のほか、未症状でも海外帰国者や感染接触者すべてに実施、感染経路についても徹底的に調査してほとんどの感染経路を確定している。またこれらの情報について詳細に国民に伝えた上で、有無を言わせず予防対策を呼びかける。国民をコロナから守る、が第一でそのほかの犠牲については省みないというキューバらしさが今回の対応によく現れているなあ、と思う。

夜9時のAplausos(アプラウソス)=医療関係者などコロナウィルスと戦う人々への激励の拍手はその後も続いていて、毎晩、各家庭から大きな拍手が鳴り響く。キューバ人と一体感を感じながら、夜な夜な拍手。でもこれがいつまでも続きませんように、が本音。

キューバ土産事情

「キューバのお土産、何がオススメですか?」

聞かれる度にいつも悩んでしまう。一般的には海外でも有名なキューバの名産品である葉巻、ラム酒、コーヒーあたりだろうか。キューバを訪れた記念に葉巻を吸ったことがない人がCohiba(コイバ、一番高級な葉巻ブランド)、普段ラム酒は飲まないけれどモヒートは最高だったから家でも試してみようとHabana Club(ハバナクラブ、キューバを代表するラム酒ブランド)、朝食で出たコーヒーが気に入ってキューバンコーヒーを買うのはもちろんオススメだし、是非キューバの味を日本へ持ち帰って楽しんでもらいたいと思う。

ただし、これらすべて嗜好品であるため好きな人には良いけれど、やらない人へのお土産としては不向きなのが難点。

キューバは、コロンブスに発見される以前にこの島で暮らしていたいわゆる原住民と呼ばれる人たちが絶滅してしまっていることもあり、中米のメキシコやグアテマラ、南米のペルー、ボリビアといった国のように植民地時代以前の文化が受け継がれ、現在にいたる伝統工芸品というものがない。個人的にはそうした手仕事による雑貨が大好きなので、そうした国へ行くとお土産天国だわーと嬉しくなるのだが、キューバにはそれがない。近年、国が観光業に力を入れて新しく民芸品的なお土産も開発しているものの、国営工場の計画的量産体制から生み出されるものはセンスがないし、原材料の乏しさが目に見えてわかる。

キューバはお土産に関して言えば、ショボすぎ、残念すぎである。

とはいえ、何かしら思い出の品が欲しいし、日本にはお土産を「ばら撒く」という習慣もあるから何か持ち帰らないといけない。そこで個人的にオススメしているのは、蜂蜜、石鹸、トリニダへ行ったら刺繍を施した布、楽器、キューバ音楽のCDあたり。

蜂蜜は意外に知られていないが、海外にも輸出していてなかなかの高品質。純粋な味わいで美味しい。一番小さな容器に入ったものが2CUC(約240円)ぐらいから。花粉入り、プロポリス入りなんていうのもある。お土産物屋、スーパーで購入可能。ハバナ旧市街には専門店あり:Amargura e/San Ignacio y Mercaderes, Habana Vieja

石鹸は別にキューバ名物でもなんでもないが、ハバナ旧市街のサンホセ民芸品市場に入った店にあるセンスの良い天然手作り石鹸は、日本人的感覚で合格点。キューバらしいコーヒーやココナツの匂いのものも。1個2.5CUC(約300円)から。サンホセ民芸品市場入り口から一番手前の通路、右手一番奥にある小さな店『D Bruja』にて。

トリニダ名物のファゴッティングという伝統的な透かし入りの刺繍を施した布。小さいものはコースターやランチョンマット(2-3CUC)、大きいものはベッドカバーサイズまで。基本は白い木綿か麻に単色刺繍だが、色物のステッチが入ったものもある。手の込んだ透かしが多く入ったものほど高い。

民芸品として作られたマラカスなどの楽器は、インテリアとしても使えるけどちゃんと「音」が出るので鳴らして楽しめる。小さいお子様へのお土産にもいいかも。合わせてキューバ音楽のCDも入手して欲しいところ。路上やレストランで演奏するミュージシャン達も自作のCDを売っているので、気に入ったら1枚どうぞ。

そのほかに人気のもの、個人的な趣味やコレクションがある方はこんなものもお土産にしています、というのをご紹介。(基本的にハバナで入手可能)

ゲバラTシャツ:なんだかんだ言って、結構な確率で皆さんご購入。Tシャツとしての質は決して良くないので、パジャマや家着に。

3ペソ硬貨と紙幣:キューバの通貨、人民ペソ。チェ・ゲバラの肖像が人気。キューバ人がフツーに使うお金だが、なぜか流通量が少なく(理由は想像下さい)両替所や銀行でもらおうと思ってもなかなか難しい。

LPレコード:19世紀前半代から80年代のレアな音源がたくさんあるらしい。古本屋、アンティークショップで購入可能。

絵画:キューバのモダンアートは世界的にも評価が高い。せっかくなら量産されたお土産品ではなく、あちこちにある個人のギャラリーを覗きながら品定めをするのが良い。

煙草:キューバ人用の配給所を兼ねた店で売っている両切りのキッつい煙草。あなたの健康を果てしなく害する可能性がありますが。

グアジャベーラ:キューバの男性の正装にもなっている4つポケットのシャツ。女性用のワンピースもあり。お土産物屋ではなく専門店で買うべし。

チョコレート:カカオはキューバ東部で多く栽培され、チョコレートの生産も行われている。ハバナ旧市街に専門店もあるが、閉まっていることも多く、オープンしていても商品数は決して多くない。買えたらラッキー。

セレクトショップ雑貨:最近はデザイナーが出品販売する雑貨や服装品のショップが何件かある。キューバらしい素材、デザインのものも多くセンス良し。

砂糖:キューバの主要農作物、ラム酒の原料でもある砂糖。精製されすぎていなくて美味しいのだけれど、店ではほとんど販売しない。なぜなら、配給でたっぷりもらえるから・・・我が家の配給品で良ければ、いつでもお分けします!

でもやっぱりキューバのお土産として一番オススメなのは、キューバでしかできない体験、キューバ人と共有する時間、そして思いっきり絵になる街並み、景色、人々の写真を想い出としてお持ち帰り、かな。

私的懐古、キューバ音楽体験

初めてのキューバ体験はなんだったろう?と振り返ると、やっぱり音楽だったように思う。お気楽極楽なお一人様生活を満喫していた90年代、当時住んでいた京都は自分で動きさえすればありとあらゆる文化体験が可能で、その日の気分でいろんな刺激をチョイスして楽しんでいた。20代後半、体力も気力も頂点だったあの頃、常にいろんな方向にアンテナ張って引っかかってくるものを片っ端から試していた中で、キューバ音楽がヒットした。ラテン系の音楽がかかるカフェがお気に入りでよく行っていたのだが、そこでサルサといわれる音楽やダンス、そのルーツであるキューバ音楽に出逢った。仕事帰りの何もない日には映画館か本屋かCD屋に寄るのが日課で、その日もヴァージンレコード河原町店(懐かしい!)をのぞいてみたところ、エスカレーター前ワールドミュージックコーナーのオススメ商品として並んでいた1枚が目についた。

Los VanVan 1974

決してメジャーとは言えないキューバ音楽のCDがこんなにすぐに見つかると思っていなかったから、嬉しくて即買い。早速聞いてみたところ、タイトルにある通り1974年収録の作品らしいけど、全然古くなくてむしろ斬新、ねとっ〜とまとわりついてくる感じのメロディーが独特でリズムで押してくるラテン系の音楽っぽくもない、それまでに聞いてイメージしていたキューバ音楽とは違う・・・後になってすぐにわかったのだが、ロス・バン・バンは当時からキューバを代表する超有名バンドだった。最初に聞いたそのCDがバンド結成から5年ほどの彼らの初期の音源で、中でもちょっと毛色の違う楽曲ばかりの作品だったから「これがキューバ音楽?」と思ったのは確かだけれど、そのクオリティーの高さは素人が聴いても明らかで、ドカーンとすごい衝撃を受けたのが忘れられない。それ以降、音楽の嗜好はキューバへグッと傾いていった。しばらくしてからスペイン語を学び始め、これがまたハマった。そして京都にいながら「ラテン」をキーワードに生活するようになる。

ちょうどその頃、1990年代後半から2000年代初め、映画とアルバム『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の世界的な大ヒットをきっかけに、日本にもにわかキューバブームがやってきた。ブエナ・ビスタに出演していたミュージシャンやキューバのビックバンドが次々に来日して公演が行われ、それらを追っかけてあちこちに出かけた日々が懐かしい。

2005年ついにキューバを初めて訪れることになるのだが、その目的は「キューバ音楽」に他ならなかった。事前に調べてわかったのは、Casa de la Música(カサ・デ・ラ・ムシカ)というライブハウスがあってそこで毎晩サルサなどのライブが行われている、そのほかにもホテル付属のカフェやホールで週末などにライブがある、ジャズは専門のジャスバーで、とざっくりしたものだったので、とにかく現地に着いてから情報収集するしかなかった。と言ってもインフォメーションセンターがあるわけでも、情報雑誌があるわけでも、もちろんネットで検索できるわけもなく(当時ネット接続はほぼ不可能)・・・今だにそうだけれどキューバでこの手の情報を得るのは非常に難しく、直前にならないと確かなことはわからない。だから昼間開店前のライブハウスへ一度足を運んで当日の公演予定をチェックし、その日のマチネー(夕方6時ぐらいからの昼公演)か夜公演(9時開場、深夜0時開演)へ行く、という作戦に出た。そうしてお気に入りから、初めて聴くバンドまで、時には2箇所をハシゴしてライブ三昧。

そのほか宿泊先のカサでラジオを聴いて、各所でのライブ情報もチェックした。すると週末にレーニン公園でロス・バン・バンの屋外ライブがあるという情報をキャッチ!調べたところレーニン公園はハバナの郊外、空港近くにある大きな公園とわかったので、小雨が降る中タクシーで向かった。タクシーのドライバーに行き先を告げても「バン・バンのライブ?知らんなー本当にあるの?」と言われ不安になったが、とにかく行ってみないことにはわからないし気がすまない。公園へ到着したが、ライブの気配は全くない。結局、その場にいた人に聞いてライブが中止になったと知り、仕方なく同じタクシーに乗って街へ帰ったという苦い想い出もある。この時ハバナだけでなくサンティアゴ・デ・クーバへも足を伸ばしたのだが、雰囲気たっぷりのCasa de la Trova(トローバの家)でラムを飲みながら聴いたベテランミュージシャンの歌も良かったなあー。

とにかくジャンルを問わず、生のキューバ音楽を堪能した初めてのキューバ。その土地で、その土地の人たちと一緒に時間を共有しながら聴く音楽は本当に最高だった。

今、キューバに暮らすようになって、よく言われるような「キューバ人にとって音楽は生活の一部」的なことは実感するけれど、自分自身は以前のように貪るように音楽を聴くことがなくなってしまった。贅沢にも身近にいつでも聴ける環境にあるというのに。でもやっぱりキューバの音楽が好きで、サルサもソンもルンバもキューバンジャズもトローバも、サンテリアに関わるちょっと宗教色のある音楽も。コロナ渦中で、ライブはしばらく無理そうだから家で手元にあるできる限りの音源を聴いてみましょうかね。

Día de las madres キューバの母の日

キューバでも5月第2日曜日は母の日、Día de las madres。自分の母親への感謝の言葉、プレゼントを贈ったりするのは何処も同じ。離れて暮らしている場合でも母親のもとに子供達とその家族が集まって食事をしたり、そろってレストランへ出かけたりというのが定番で、キューバらしくワイワイと賑やかに過ごす。

そして母の日は「すべての母親に敬意を表して、お祝いする日」なので、自分の母だけでなく友達の母親や奥さん、近所のおばちゃんへ、あるいは女性同士が互いにFelicidades!!(フェリシダーデス、意味は「おめでとう」だが、祝辞として色々な場面で使われる言葉)と声をかけたり、メッセージを贈ったりする。

キューバだけでなく中南米どこでも、母の日はとても大事な日とされている印象がある。社会的には男尊女卑の風潮がまだまだ残るところがあるけれど、誰もが母から生まれた、ということで母=女性は偉大で尊敬すべき存在、という考えが根底にあるからか。キューバに関していえば社会の制度そのものに「すべての人間は平等であるべき」という前提があるため、実際には意図的にそうしている部分もあるように思うが、表向き女性の地位はむしろ男性より高いくらいに感じる。なので、とにかくキューバの女性は強い。そして男性は、マザコン。タトゥーを入れたおにーちゃんも、イカツイおじさんも間違いなく「おかーさん、大好き」だ。良いことだと思う。自分も息子を持つ身としては、いつまでも可愛い我が子が母にベッタリであって欲しいとどこかで思っているかもしれない。が、露骨にそれを表現されると、どうしてもと引いてしまう・・・

今年はコロナの影響で外出自粛が続いており、人の行き来が少ない分Felicidades!!を聞くのは少ないし、よほど近くに住んでいない限りお母さんに会いに行くことがかなわない人達も多いだろうし、いつもなら会って、ギューっと抱き合って、キスしてという熱烈愛情表現も控えめにしなければいけない。

今できる形で、身近にいる母なる女性へ「ありがとう」と「お疲れさま」を。

キューバで体験!クラシックカー

キューバ名物、クラシックカー。オープンカーでの市内散策はハバナ観光の目玉となっている。真っ青な海を横目にマレコン通りを風をきって走るのはサイコーに気持ちいいし、コロニアルな街並みを背景にその姿をパシャっと1枚撮ればこれがまた何とも絵になる。

通常、屋根のないコンバーティブルタイプのクラッシックカーは観光客用。目的地まで普通のタクシー同様に利用するのも可能だが、多くの場合はいくつかの名所を巡る市内観光ツアーを提供していて、ドライバー自身がガイドもしてくれる。英語を話しクラシックカーが良く似合う素敵なドライバーも多いし、最近は大型のアメ車を粋に乗りこなす女性ドライバーもいる。車にあまり興味がなくても、セントラルパーク付近に停まっているカラフルなオープンカーを見れば「乗ってみたい!」と思ってしまう。車好きの人ならなおさら・・・何はともあれキューバへ来たからには、見るにつけ乗るにつけクラシックカー体験は必須だ。

ところでキューバの車事情。キューバのクラシックカーとして一般的に思い浮かぶのは大型で派手な印象のアメ車。キューバ革命以前にアメリカから入ってきた1940年代〜50年代のシボレーやフォードなどが多く、これらを「改造」しながら現代まで使い続けている。観光客用のオープンカーの中には元々あった屋根を外して作ったものも多く、モーターも含めてありとあらゆる部品が取り替えられ、なんども塗装し直しているものがほとんど。乗用車や乗合タクシーとして使われているクラシックカーにいたっては本当にこれでよく動くな、という代物で乗り心地の快適さはまず求められないし、扉がパッカーンと開いて危うく放り出されそうになったこともあるくらい。アメリカとの国交が断絶された1961年以後、アメ車の輸入が途絶えてしまってからは旧ソ連車や東欧の車が輸入され、こちらもキューバでは一般的で今でも多く見られる。現在、年間輸入車総数は約5000台と言われているが、多くは国や外交官用の車、そしてレンタカーとなり一般に販売されることはほぼない。だから乗用車の普及率は極めて低く、古い車を大切に修理に修理を重ねて使い続けるしかないし、車を持つのは家を持つより難しい・・・もちろん我が家にも車はない。

こんな感じだから、キューバに暮らしているとクラシックカーは見慣れてしまって、むしろモダンな新車、ほぼ皆無の日本車(大使館の車だったりする)が走っていると「おおっ!」と見てしまう。車好きの息子は、クラシックカーだろうと現代車だろうとお気に入りの車が目に止まると、「見て見て〜カッコイイ!」と喜ぶ。

その息子と一緒に今年の初め、ハバナ旧市街にある『くるま博物館』へ行ってみた。こちらの博物館、以前旧市街にあったものを移転改修中なのだが、昨年ハバナ創立500年に合わせて無理矢理一部がオープンされた。もともとガレージだった建物を利用したものでピカピカに新調されたクラシックカーが並び、パネルには自動車の歴史が展示されている。クラシックカーに関していえば、市内各所で多種多様の車が実際に走っている「青空博物館」に比べたら全然大したことないのだけれど、注目はカミーロ・シエンフエゴスセリア・サンチェスというキューバ革命の英雄2人の所有していた車が展示されていること。1959年、1960年のOldsmobile(オールドスモービル)。どちらも新品同様に修復されているが、車体の色は彼らが使っていた当時と同じ色だという。

カミーロのちょっと珍しい淡い緑、少し意外。

セリアの清潔感ある白、似合い過ぎ。

キューバ革命関連人物の中でも、ピカイチの男前とべっぴんさんと思っているお二人の車がこんなところに保管されているとは知らず。いつも彼らの写真で一緒に映っているのは、いかつい装甲車や戦車ばかり。こんなアメ車のハンドルを握る私服姿を想像して少し嬉しくなった。

Museo del Automovil (くるま博物館)
Calle San Ignacio e/Amargura y Teniente Rey, Plaza Vieja(ビエハ広場)近く。現在も改装中につき、開館日時は不定期