キューバもウィズコロナへ・・・イベント解禁

コロナ禍で様々なイベントが中止となったり、規模を縮小したり、手段を変えたりしてきたここ2年、キューバの大きなイベントも軒並み実施されることなくきたが、ついにそれらがほぼ正常開催されるようになった。

ハバナで最も人が集まるイベントといえば、毎年2月に開催される国際本の見本市Feria internacional del libro。メイン会場はカバーニャ要塞とその周辺で、タイトル通り本の販売や展示をするほか学用品の販売、飲食の屋台はたまた移動遊園地まであって、娯楽の少ないキューバでは滅多にないお出かけスポットが期間限定で出現するものだから、その盛況ぶりといったら半端ない。屋外が主とはいえ会場が「密」になるのは当然、コロナ禍でここ2年間の開催が見送られた。思えば2020年2月中国や日本でコロナの感染が報告されはじめ、アジア人への偏見が気になり始めた頃にあったのが、前回のフェリアだった。今年も通常通り2月開催を予定していたが、オミクロン株の登場で年始以降、感染者数が増加してしまったため4月に延期された。その後コロナはしっかりコントロールされており、4月13日から30日まで開催されるにいたった。

今年の招待国はメキシコ、メキシコからはいつも日本の漫画やアニメのポスターもやってきて大人気

なんだかんだで1度は足を運ばなければ、と平日午前中に行ってみたところ、それほどの混雑もなくゆっくり見学することができた。移動遊園地はなく、屋台の数も以前より少なめ、会場内のパビリオン数も制限されていたけれど、いつものフェリアの雰囲気は十分に味わうことができた。思えばこういうイベントに参加するのも本当に久しぶりだ。

カバーニャ要塞会場内の様子、平日でお客さんは少なめ

そして5月1日キューバで一番重要な祝日メーデーの行事も、3年ぶりに各地で行われた。久しぶりのメーデーで、いつもよりも事前のプロパガンダが派手だったように感じたのは気のせいじゃないはず。決して国民が待ち望んでいたわけじゃないけれど、政府としてはこの「密」な行事をウィズコロナの象徴としたかったのかもしれない。

今年のスローガンはCuba vive y trabaja(キューバは生き、そして働く)とシンプルなものPhoto by Irene Peérez/Cubadebate

ハバナのメイン会場は革命広場。夜中のうちから広場周辺に各労働者団体が集まって待機するため、前日夜から翌日の集会が終わるまで公共交通機関はストップするという毎年の「慣例」も復活した。会場には行かなかったが、映像や写真で見る限りコロナ前と同じように滞りなく式典が開催されたようだ。

手作り看板や横断幕がキューバらしい。Photo by Abel Padrón Padilla/Cubadebate

ところで街の噂ではこのメーデーの成功を機に、屋外でのマスク着用義務が解除されるのではないかということだったが、今のところそれはない。でもここ数日の新規感染者数を見てもほぼ二桁と増加傾向にはなく、現状陽性者数は日々減少していて「脱マスク」の日は近いんじゃないかと思う。

ということで、キューバのウィズコロナ、順調に進行中。

キューバPCR検査事情

コロナ前までは世界最強日本のパスポートを持っていれば、フライトチケットを手に空港へ行き、出国審査を通過して飛行機に乗れば、世界中ほとんどの国へいつでもお手軽に飛ぶことができた。今では各国の対コロナ出入国条件があれやこれやとあって、出発前の準備がただ事ではない。出たからには戻ってこなければならず、旅先でも帰国前に同じようなことを繰り返すことになる。その中でも多くの国で必須、これがなきゃ飛行機にすら乗せてくれない、というのがPCR検査などによる対コロナ陰性証明。ワクチン接種が進んで一時期はキューバもワクチン完了証明があれば、PCR検査陰性証明は不要となっていたのだけれど、オミクロン登場で世界中の感染者が激増したのを受けて再度入国時の提示が必須となった。

そのPCR検査=コロナ陰性証明、外国人旅行者はハバナのどこで、どうやって受けることができるのかご紹介。

キューバ在住者は居住地区のポリクリニコ(診療所)で受けることが可能。ただし証明書の発行できる機関は限られる。Photo: Ricardo López Hevia, by Granma

まずはホテル滞在者。医療充実国家キューバ、対コロナ対策としてホテルには専門医と看護師チームを常駐させ、観光客の保健衛生管理に従事している。帰国前の検査が必要な場合、この医療チームまたはフロントにその旨を伝えれば、検査日時を予約することができる。検査担当者がホテルまで出向いて検査してくれ、結果もホテルに届けてくれる。

検査のことを考えるとホテルの方が安心、楽チンと思われるけれど、やはりキューバではカサパルティクラルにも滞在して欲しいので、カサ滞在の場合について。カサパル滞在者は保健省の指示だとカサのオーナーが責任を持って宿泊客の検査に対応するとなっているが、結局のところは自分で検査可能なクリニックへ出向いていくことになる。ハバナで外国人観光客の検査をしてくる主な病院は以下の2か所。

ハバナ旧市街からはタクシーを利用して行く

Clínica Internacional Camilo Cienfuegos(カミーロシエンフエゴス国際クリニック)
住所:Calle L No.151 e/Línea y 13, Vedado, La Habana
時間:8:00-18:00(週末を含む)
費用:30USD(Visa, Masterのクレジットカード支払いのみ、現金不可)
ベダード地区の中心、ホテルハバナリブレ23 y LからL通りを下って、突き当たりにある公園に面した病院。便利でわかりやすいので多くの旅行者はここで検査を受ける。72時間前PCR検査に対応。午前中に受けた場合、翌日午後に結果を取りに行く。決まった書式に記入が必要な場合は、受け取り時にやってくれるが説明が必要。

Clínica Internacional Siboney(シボネイ国際クリニック)
住所:Calle 17, No.20005 e/200 y 202, Siboney, Playa, La Habana
時間:PCR/8:30-11:30(週末を含む) 抗原検査/8:30-16:00(月~金)8:30-12:00(週末)
費用:PCR/30USD 抗原検査/25USD(Visa, Masterのクレジットカード支払いのみ、現金不可)
72時間前PCR検査(翌日13:30結果受け取り)のほか、即日結果が出るAntigen test抗原検査も可能。アメリカなど入国条件として24時間以内の検査結果が必要な場合はここで。また20分ほどで結果が出るので、抗原検査でもOKの場合はこちらの方が翌日まで待つ必要はない。ただし観光客がまず行くことがない地区、Playa地区の外れにあり、タクシーでハバナ旧市街から30〜40分かかる。

いずれも外国人の場合パスポートの提示が必要。また支払いはキューバで決済可能なVisaか Masterのクレジットカードでなければならず、現金での支払いは不可。日本で発行されたものなら通常問題ないが、アメリカ発行のものまたアメリカの銀行決済となっているカードは使用できないのでご注意を。またこれらのクリニックは基本的に予約ができないので、朝早く行って順番待ちをしなければならず、「El último!エル・ウルティモ〜」と叫んで行列の最後について待つしかない。一般の診察目的、支払い目的など行列がいくつもある場合があるので、必ずPCR検査の列に並ぶこと。超キューバな体験=行列待ちという旅の想い出ができること間違いなし!?

ところで、キューバのPCR検査事情を最初に知ったのは実際に検査を受けたある外国人に遭遇したからだ。

「支払いはキューバで決済可能なVisaか Masterのクレジットカードでなければならず、現金での支払いは不可。」であるのが仇になってPCR検査を受けられず、予定していた飛行機に搭乗できなかった哀れなアルゼンチン人男性。帰国を2日後に控えPCR検査をしようと上記のベダードにあるクリニックへ出かけて申し込みをして決済しようとしたところ、カードが通らない。何度やってもダメ。だったら現金で払うよ、とドル札目の前に出しても「NO!」すぐにカード会社に電話しても原因不明。真っ青になった彼の知人を介して、外国人でクレジットカードを持っている私にヘルプの電話がかかってきたわけだが、一晩中クリニックに対応してもらえるようメールを打ち続けても返信なく・・・

結局時間オーバーでフライトに間に合わず、彼はブエノスアイレスへ帰国できなかった。ちょうど感染拡大に伴ってフライトの減便されていた時期で、次にチケットが取れて帰国したのはそれから2ヶ月後。かわいそうな彼は職を失い、借りていた部屋の家具やらエアコンやら全部売らなきゃならない羽目になったらしい。ちなみに2ヶ月後のPCR検査は、万が一を考慮して私もクリニックに一緒に行って待機していたのだが、無事カード会社が調整してくれたカードで決済でき翌日の飛行機も飛んで帰国した。 ハバナ滞在の2ヶ月間で彼は嫌がっていた大音響で流れてくるレゲトンの音楽にも慣れ、最初は小声しか出なかった「El último!エル・ウルティモ〜」も大声を張り上げて言えるようになり、行列に横入りする人に向かって反論するまでにキューバ人化していたのだった。

*以上は2022年1月現在の情報です。お国柄これらの状況は何の告知もなく変更されることがあり、昨日はやっていても今日はダメ、ということもあり得ます。最新の情報、また他地域の状況は現地にて必ず時間に余裕を持って確認してください。ホテル滞在者はホテルにて、カサ滞在者はカサのオーナーや管理者に尋ねましょう。

キューバのコロナ近況:再び感染者増加2022.1

2022年1月10日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者2,685名、現状陽性者11,136名、累計感染者982,614名、累計回復者963,091名、累計死亡者8,330名

キューバの年末年始は、いつもながらサラッと何事もなく過ぎた。例年なら12月になると大晦日、1年最後の晩餐を定番のキューバ料理、コングリ、豚肉、ユカ芋+ラム酒にビールで締めくくるために食材確保に奔走するのだけれど、今回は早々から諦めムードが漂った。どうせ豚肉は手に入らないと・・・もう何ヶ月も好物の豚肉にありつけず、肉といえば鶏しか食べていないキューバ人たち(元々、キューバでは牛肉はほとんど入手不可能)。2021年大晦日、いつもなら昼間からどこからともなく豚を焼いている匂いが立ち込めるのだけど、代わりに使い古した油で揚げたフライドチキン臭が蔓延していた。

そして迎えた2022年。オミクロン株が出現してコロナは再び世界中で猛威を奮い、キューバでもみるみるうちに感染者が増えて、ここ数日は連日2000人超え。周囲にも感染してたり、疑いありで隔離してたりする人がいて、またもや脅威が迫っている。加えて寒暖の差が激しいこの時期、風邪ひきも多く世の中病人だらけ・・・

それでも1年のうちで最も観光客の多い年末年始、ハバナの街でも例年にはとても及ばないものの外国人が目立ち、長いこと閉店していたレストランがオープンし、カラフルなクラシックカーもパルケセントラルの周辺で客待ちをする様子が見られた。感染者の増加によって1月5日以降、入国時にワクチン接種証明とPCR陰性証明の両者の提示が義務となったけれど、それ以外は観光や生活に影響を及ぼすような規制は課されていない。

現在のところ海外からの観光客受け入れは続行。photo by Granma

ひとつ気になるのは外国人観光客には空港や規制のある場所以外では、マスクが義務となっていないことだ。確かに旧市街などではマスクをせずに歩く外国人も多い。一方キューバ在住者は屋外でマスクしていなかったり、正しく付けていなかったりすると罰金だ。マスクの効用がどこまであるのかは別にして、海外から持ち込まれる例も多く、今回の再拡大の一因は国境再開であるはずなのに、外国人観光客はノーマスクOKというのに不満を抱くキューバの人たちも多い。

ところで、我が家では年明け早々にラッキーなことがあった。年始も仕事だった夫が、ハバナ市内の正月市へ寄った際にクジ引きで、なんと豚の丸焼きとビール1ケースを当ててきたのだ。

キューバ人の誰もが欲しくてたまらない豚肉!
しかも丸ごと!!
ビールは正規ブカネロ!!!

正月2日にして今年の運の全てを使い果たした夫のこの先が少々心配されるが、まあ幸先よろしいということで。2022年、良い1年となりますように・・・

いよいよ、11月15日キューバの国境再開!

2021年10月24日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者1,210名(ハバナ79名)、現状陽性者5,761名、累計感染者946,960名、累計回復者932,951名、累計死亡者8,191名

上記、本日発表のコロナ感染状況。数字を見ても新規感染者数はグーンと減って状況が良くなっているのは明らかだが、先週からさらにハバナとサンティアゴ・デ・クーバの2大都市で規制の緩和「新しい日常」への移行が発表されたこともあり、街中を見ても街をゆく人たちの足取りや表情まで違って見えるような気がする。ハバナでは多くのレストランが店内での飲食を開始し、久しぶりの外食を楽しむ家族連れなどが見られるようになり、Calle(通り)で遊ぶ子供たちの姿と賑やかな声が戻った。そしてハバナの人たちにとって最大の娯楽、マレコン散策も解禁!釣りをする人、音楽を演奏する人、ビールやラムを飲みながら語らう人たちが帰ってきた。

日曜日の旧市街ビエハ広場、賑わうレストランを見るのも久しぶり!

また先週12日には、11月15日の国境再開にあたっての入国条件が観光省によって発表された。それによると・・・

  1. 11月7日より入国時に空港などで各自のPCR-RT検査、入国後の隔離規制は排除される。
  2. 海外からの旅行者はキューバ人、外国人を問わずに該当機関が発行したワクチン接種済みを証明するための「健康パスポート」または「対Covid-19国際証明書」を提示すること。
  3. 上記のコロナワクチン接種済み証明書を提示できない旅行者は、出発国の認証された機関で出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を提出する。
  4. 0~12歳の子供には国籍を問わずワクチン証明、PCR-RT検査を要請しない。
  5. 出発国搭乗時に航空会社は旅行者に対して、ワクチン証明または出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を要求する。
  6. 「旅行者健康状態表明」(健康宣言書、到着前に機内で配布される)を提示すること。
  7. 空港で国際保健管理者によってランダムにPCR-RT検査が行われる。
  8. マスクの着用は空港エリアまたその入り口、同様に国内全域で引き続き義務とする。
  9. 引き続き感染病予防体制がすべての入国箇所:空港、港で取られる。
  10. 入国箇所を問わず海外からの旅行者でCovid-19およびそのほかの感染病症状または兆候のある者は、有効な対処についての導入を受けPCR-RT検査が実施される。
  11. 旅行者が滞在中も引き続き感染病監視を実施するものとし、ホテルには基本的な医療機器を揃えた医師が常駐する。
  12. カサパルティクラルのオーナーおよびキューバに居住しない旅行者を宿泊させる個人は、宿泊客にいかなる症状が見られた場合も速やかに担当の保健管理者に通知する責任を負う。
  13. カサパルティクラルに宿泊する旅行者に対する監視は、地域の保健医療機関が行う。Covid-19の症状が見られた場合には担当の保健管理者に通知しなければならない。

*観光省は宿泊施設、観光施設に対して、観光省の定めたプロトコルを遵守させ最上の衛生管理を備えたサービスを提供し、キューバ観光の復興に努める。
*観光施設内で密閉箇所や人の集まるところでのマスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持、手消毒などによる清潔状態を保つ、検温の実施等のプロトコルはより強化される。
(以上、キューバ観光省HPより抜粋:11月7日以降旅行者に課される衛生管理プロトコル

現在キューバのワクチン接種完了率は70%少々、11月中旬までには現時点で接種可能な人(過去感染していない人、健康上の理由で接種困難な人を除く)すベてがワクチン接種を済ませる予定で、国民の命を守った上での海外観光客の受け入れとなる。昨年同じく11月15日に観光再開し海外からの入国を再開したのがきっかけで、うなぎ登りに感染者が増えてしまった悪夢が繰り返すとはないと信じたい。 経済面だけでなく、街の雰囲気や人々の生活ぶり、特にハバナなどの見所の多い街はやはり観光あってのキューバだとここ1年半で痛感した。観光客が戻って、より活気ある街が見られることを心から楽しみにしている。

キューバのコロナ近況:規制緩和へ 2021.10

やっと、やっと、や〜っと、コロナの状況に明るい兆しが見えてきた。

9月の後半から感染の減少傾向が数字にはっきりと現れるようになり、10月になってここ5日間の新規感染者数は日を追うごとに100人単位で減少、ついに3ヶ月ぶりに3000人代まで。

2021年10月5日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者3,596名(ハバナ251名)、現状陽性者20,884名、累計感染者875,464名、累計回復者841,128名、累計死亡者7,703名

世界遺産の観光地として有名なビニャーレスのあるピナール・デル・リオ州やトリニダのあるサンクチ・エスピリトゥス州など、いくつかの地方はまだまだ高い感染率で心配されるところだけれど、ハバナに関してはだいぶ落ち着いてきた。

こうした状況を受けて9月24日からハバナを始め7つの州(マタンサス、シエンフエゴス、シエゴ・デ・アビラ、サンティゴ・デ・クーバ、マヤベケ、イスラ・デ・フベントゥ)で段階的な規制緩和が始まった。

営業再開したハバナ旧市街にある老舗カフェ「CAFE DEL ORIENTE」

まずは飲食店の再開から。これまで店内飲食は禁止、持ち帰りかデリバリーのみでの営業可能だったが、感染予防対策の措置をとった上で店内飲食、夜間の営業も9時半まで可能となった。国営店は軒並み営業を開始し、個人経営の店もボチボチ様子を見ながら再開している。これに伴って公共交通機関の運行も夜10時半までとなり、同時間まで外出が許可されることに。

さらに10月1日にはビーチとプールが解禁!まだまだ暑い日が続くこの時期、夏の間我慢していた海へGO!子供達も幸い(?!)まだ学校が始まらないから、来年の夏まで待たなくていいのなら、もちろんGOOOO!!というわけで、早速週末には多くの家族連れがハバナ近郊のビーチへ向かったようだ。他にも公園やジム、そしてハバナ市民の憩いの場マレコンでの釣りや立ち止まってのお喋りもOKに!正直、今は経済的な理由で外食する余裕がない人も多く飲食店の営業再開はあまりピンとこない感じだけれど、ビーチやマレコンが戻ってくるといよいよ「日常」がグッと近くなった気がする。

我が家は幸い目の前に「プライベートコスタ」があるから、規制があった時からこそこそ通っていた。これからは堂々と行ける?!

そして国中が期待して待っているのが11月15日の海外観光客の受け入れ再開。この最悪の経済状況を打開するのは、やはり観光しかない、と政府の全面的なバックアップのもとホテルや各観光関連施設、旅行会社は着々と準備を進めている。コロナ禍の観光でキューバの強みは医療体制や衛生面における「安全な旅行」をアピールすることだろう。ホテルへの専門医の常駐や感染した場合の受け入れ機関、治療まで、この辺はきっと徹底してやってくれるはずだ。11月15日以降、旅行者に対する入国時の規制や条件などはまだ発表されていないが、現在課されている指定施設での5日間の隔離や複数回のPCR検査は緩和されるのではないかと予想される。

マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、密閉箇所での人数制限、入場時の検温、いろんな規制は今後もまだまだ残るだろうけれど、国民のほとんどがワクチン接種を終えて、コロナから身を守った安全な状態で観光客受け入れることができる日も近い。ハバナの旧市街のバーやレストランでバンドの生演奏が流れるなかモヒートを片手に踊り、クラシックカーに乗ってマレコンをドライブする外国人たちの姿が戻ってくる日はもうすぐ!

最近のキューバ、タバコ事情

キューバの葉巻は世界的に有名だ。良い葉巻が作られるのは、良質のタバコの葉が栽培されるからである。葉巻工場へ行くと説明があるが、一般的な紙巻きタバコは葉巻を作った際に出る切り屑や、葉巻では削除される葉脈の部分などを使って作られる。葉巻工場とは別にタバコ工場があって、タバコも多く生産している。

オルギンにあるタバコ工場の様子  photo by Radio Anglo, Cubadebate

世界中、禁煙傾向にあって愛煙家には辛い世の中、タバコの生産量や商品の出荷量は減っているが、葉巻は贅沢な嗜好品として世の風潮に関わらず一定数の愛用者を保っているらしく、近年でも売上的にほとんど変動がないそうだ。キューバの葉巻も重要な輸出品として、コロナ禍にあっても工場は通常稼働して世界へキューバ産葉巻が供給され続けている。

ところでキューバ国内での消費は、葉巻よりもやはり紙巻きタバコが主流だ。そのキューバのタバコはキツい。日本のような軽いタイプは存在せず、多くの人はフィルターのない両切りのタバコを好む。料金も他国に比べると格段に安く、配給所でも売られている国民の誰もが楽しめる嗜好品のひとつということもあって、男女関わらず喫煙率は高い。若年者の喫煙も目立つ。高校生たちは制服のまま隠れることもなく、学校の横を歩きながらタバコを吸う。もちろんキューバでも未成年者の喫煙は禁止されているのだが・・・

女性革命家セリア・サンチェスもヘビースモーカーだった。肺ガンで亡くなっている photo by Cubadebate

それがここにきて、禁煙せざるを得ないような状況になっている。

ひとつには2021年1月1日以降の経済改革で国産タバコの料金も上がったから。配給所の最低品質タバコCriollosやPopularが1箱7CUP(約35円)から10CUP(約50円)、それよりちょっと質の良い国産タバコH.Upmannは0.7〜0.8CUC(約90〜105円)から24.5ペソ(約120円)といった具合だが、まだまだ世界的に見れば随分安い。

加えてコロナ禍で輸入タバコがほとんどなくなり、国産タバコの生産量も落ちたのか市場に出回る量がぐんと減って、タバコ自体を手に入れることが難しくなってしまった。店で販売されるときにはいつもの大行列に加え、なぜか喧嘩沙汰の大騒ぎ。喫煙者の柄が悪いというわけではなく、吸う人にとっては何としてもゲットしたいという必死さがそうさせるのだろうとかつての喫煙者として寛容に理解している。

当然、店で買えないのなら、行列するのが嫌なら、闇で買う。ただいま闇での料金銘柄問わず、100〜150ペソ(約400〜600円)!!かつて禁煙を決心した20年ほど前の日本の料金をとっくに超えて、現在の日本の料金と変わらなくなってしまった・・・

となると、やはり禁煙。

Criollosのパッケージにある保健省によるメッセージが強烈。「あなたの年(=命)を吸うな、健康に気を付けて」「今日始めよ。火を付けるな、悪習を消せ」「タバコ1本につき1日が失われる」「タバコはあなたを身体の中から燃やす。消しなさい!」(左上から時計回りに)

となってほしいところだけど、辞められないものは仕方ない。友人も「コロナとこの物不足でこんなに我慢してるのに、タバコまで辞めなきゃならないなんてあり得ない!」と意地でも吸い続ける決意だ。値上げによって若年者の喫煙はなくなりそうで何よりだけど、年季の入った愛煙家には、いかにやりくりしてタバコを手に入れるかが目下、食糧調達以上に悩ましいに違いない。

子供のワクチン接種開始

キューバでは先日、予告があった通り9月15日から小学生年齢対象のワクチン接種が始まった。基本的には自分の通う学校で、学年ごと決められた日時に保護者同伴のもと接種が行われるようだ。息子の担任の先生からも先週のうちに電話で、「9月16日木曜日午前11時」と指定日時のお知らせがあった。

そして当日、珍しく朝から怪しい雲行きで今にも雨が降りそうな中、我が家から徒歩1分の小学校へ向かった。久しぶりに会う同級生たちと、ちょっと恥ずかしそうにでも嬉しそうに挨拶してお喋りする子供たち。それにしても小学校高学年の成長ぶりには目を見張る。特に女の子は背が伸び、体つきはすっかり大人、すでに母親の背を追い越してしまう子もいて驚いた。それに比べて毎日見ている我が子、多少背は伸びたけれど相変わらず幼いガキンチョ、ワクチンの注射もホントはドキドキしてしょうがないのを必死で隠してるし。

むちゃくちゃ緊張した面持ちで注射される息子。

さて接種会場の方は大人の時と同様、とてもスムーズだった。保護者の身分証明書を確認して署名、それから待合室で少し待った後、検温と問診を行い接種、接種後30〜40分ほど待機して問題がなければ解散。

今回子供に摂取されるのは、5種あるキューバ産ワクチンのうちSoberana02ソベラナ02、28日後に2回目の接種が行われる。ハバナではすでに先週、中高校生年齢の接種が行われ、ハバナ以外の地方でも未成年者の接種が開始、順調に進めば10月末には全ての子供たちの接種完了、11月15日から学校での対面授業の開始という計画だ。大人の方もうまくいけばキューバ国民の9割以上が11月までにコロナに対する免疫を獲得することになる。

キューバ版ワクチンカード。手書きで何が書いてあるんだか・・・

ワクチン接種自体はおそらく問題なくこのまま進められるだろう。あとはちゃんと効果が目に見えて感染者数にも現れてくれれば、みんな安心できるのだけれど・・・

ところでキューバ産ワクチン、まだ国際的には認証されていない。キューバ国内の認定機構が「緊急時使用可能なワクチン」として認めているだけで、効果率の高さや接種時の副反応の少なさ(死亡者はゼロ)を見るとものすごく優秀なはずであるが、世界的に今、渡航条件などに加えられつつある「ワクチン証明」や「ワクチンパスポート」に使うことはまだできない。先日からWHOへの認可申請手続きを始めたらしいので、早いところ世界デビューを果たしてもらって、「ワクチン接種済」の烙印を押してもらいたい。

キューバ産ワクチン5種。これらのうち3種がすでに緊急時用として接種されている

が、もし万が一、認可されなかったら・・・ここでまた某大国の横槍が入るんじゃないかと心配されるところだが、もう打っちゃったもんは仕方がない。ちゃんとお墨付きがもらえることを祈る!

キューバのコロナ近況 2021.9

1日あたりの新規感染者数8000人超えという最悪の8月が終わって9月になり、ようやくすこーし減少の兆し。

2021年9月8日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者7,747名(ハバナ687名)、現状陽性者39,213名、累計感染者720,739名、累計回復者675,413名、累計死亡者6,056名

日によって増減があるものの9月になって9000人を超えたのは1日だけで、ほぼ6000〜7000人代で推移している。これでもまだまだ驚異の数字だけれど、減少傾向にあることは見て取れるので、このまま落ち着いていってくれることを願うしかない。

そんななか9月といえば新学期だが、当然まだ子供たちは学校へ行くことはできない。それでも前年度2020-21年度継続ということでテレビ教室が今週から再開され、同時に今後の日程が発表された。もう1年半にわたってほぼ登校することなく、対面授業なしで1日30分各教科週1回のテレビ教室という何とも心許ないというか、虚しいだけの授業しか受けていない子供たちの学校教育をどうやって調整して回復するのか、と注目されるところだ。とにかくワクチンを接種しないことには子供たちを学校へ行かせるわけにはいかない、いかないというのが大前提。急ピッチで治験段階を突破して9月初旬から中学・高校年齢、中旬からは小学校年齢の子供たちへのワクチン接種が始まる。ハバナは最初に実施されるだろうから、来週には息子も1回目の接種を受けることだろう。

子供たちへも、もちろんキューバ産ワクチンが接種される。ガブリエル君、キューバで初めてコロナワクチンの接種を受けた子供。Photo by Ismael Francisco, Granma

そして先日、全国の子供たちへのワクチン接種を11月までに終える計画で対面授業の開始は11月15日、前年度2020-21年度を2022年3月12日まで(全16週)とし、翌週3月14日から新年度2021-2022年度開始して同年11月26日まで(全30週)、その後本来の学年サイクルに戻す、と発表があった。もちろんワクチン接種が順調にいって、コロナ感染状況が収束することが条件ではあるだろうけれど、この通りうまくいってくれるなら何よりだ。

小学校の修正された今年から来年にかけてのプログラム。Granma新聞より

さらに11月には全国民の90%以上のワクチン接種完了、免疫獲得を目指すとした政府発表に併せて、観光省は11月15日以降の海外からの観光客の全面的受け入れに向けて徐々に対コロナ規制を緩和していく方針を発表した。まずは現在も観光客を受け入れているリゾート地バラデロとカヨ・ココの外国人観光客に対しワクチン証明書またはPCR陰性証明書どちらかの提示、空港でのPCR検査の免除、荷物重量制限の解除などが行われる。観光再開のためには入国時国境での水際対策の緩和だけでなく、空港やホテル、各施設やレストラン、各種交通機関の再開正常化、州を越えた移動制限の解除とあらゆる規制を緩和していくことになるが、まずは国内観光を手始めに、海外観光客受け入れ体制を整えていくそうだ。が、何れにしても具体的な内容や日程は今後発表されるようなので注目したい。

ハバナの革命広場。観光客が戻って賑わいを見せるのはいつ?

ともあれ今度こそコロナをコントロールしつつ、すでにあまり聞かれなくなってしまった(?!)「新たな日常」とやらを始められるといい。

キューバへの救援物資、各家庭へ配布はじまる

7月以降、キューバのコロナ感染状況は悪化したままで、8月も前半高い水準で新規感染者数、死亡者数が推移している。一向に良くならない状況にもう慣れてしまって、毎日の保健省の報告にも驚かなくなってしまった。

こんなキューバの深刻な状況に対して海外からも多くの支援物資が送られてきている。日本からも援助の手を差し伸べようという動きがあることは先日書いた。ここ1ヶ月ほどで主に食料品や医療機器、医薬品などが、ロシアや中国、ベトナムといった社会主義国で普段から関係の深い国々だけでなく、近隣の中南米の国やカナダといった20数カ国から届いているらしい。アメリカからも支援団体が注射器を寄付したというニュースもあった。

医療関連の品は直接病院へ運び込んで使い、注射器はワクチン接種に早速利用されていることだろう。

で、食料品はどうするのか?

と日々の食料確保に奔走する国民は注目したわけだが、到着した先から仕分けして袋詰めにされ各家庭に配布されることになった。日本では災害時の支援物資を被災者に届けるのに、時間がかかったり、必要なものが必要な人に届かなかったりと問題が発生することもあるらしいけれど、今回キューバの場合、否応なしに国が決めたやり方でチャッチャとすばやく対応した。緊急だから、当然といえば当然。

こんなとき、キューバには配給システムという便利なものがあって、国の隅々、国民の一人一人にまで確実にものがいき渡る。今回も配給所を介して、各家庭に袋詰めにされた食料品セットが早速配布されはじめた。普段の配給品は決して無料ではないのだけれど、今回の支援物資は全て無料で1家庭につき1袋。内容は地域や配布されたタイミングによって多少違いはあるようだけれど、米、パスタ、豆類など主に炭水化物の袋詰め。

昨日から我が家の属する配給所でも配布が始まって、早速取りに行ってきた。

米、スパゲッティ、マカロニ、緑豆、砂糖。それぞれポルトガルやトルコ、イラク産のものだった

スパゲッティ、最近は外貨ショップへ行っても売っていなくてしばらく食べていなかった。息子のリクエストで、今日のランチは早速スパゲッティ!

ランチに麺類、ありがたい!

しばらくは多少バラエティーのある昼食が準備できそうだ。

緊急:キューバへのコロナ対策支援

2021年7月27日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者9,323名(ハバナ1,583名)、現状陽性者43,593名、累計感染者358,378名、累計回復者312,169名、累計死亡者数2,560名

キューバのコロナ感染状況が悪化の一方をたどり、なかなか改善しない。独自の医療体制と感染病予防対策で当初は封じ込めも可能かと思われ、海外への医師派遣も積極的に行ってきたほどだったのに、現在は新規感染者数が日々記録を更新、病床も不足している。一方では独自にワクチンを開発し接種も進んでいるが、感染拡大の速さに効果が追いつかない状態のようだ。

photo by Granma

アメリカの経済制裁に加えてこのパンデミア、現在のキューバの経済状況はここ数年で最悪といわれている。医療現場への影響ももちろん大きい。これまでもそうだったが、経済制裁のために医療品、医療器具が思うように入手できない。

すると、どういうことになるか?

ワクチンや新薬を開発しても、製造するための原材料が不足する。

お医者はたくさんいて診察は受けられても、薬や器材がなくて十分な治療ができない。

「今日は脱脂綿がないから、抜歯ができない。」とか「手術用手袋がないから、手術延期ね。」とかフツーによくある。

物がないってどういうことか、ここにいると思い知らされる。そして、いかに物質的に恵まれた環境で育ってきたかということも。

ところで今のキューバのコロナの感染状況を見て、世界各地から救援物資が届き始めた。日本からもキューバへ寄付や物資を送ろうという動きがあるそうだ。

在日キューバ大使館からの支援依頼記事はこちら

コロナで困窮しているのはキューバだけではないと十分承知しているけれど、キューバに行ってみたい方、キューバを旅行したことのある方、キューバ音楽が好きな方、サルサやってる方、スペイン語習ってる方、野球が好きな方・・・どこかでキューバとつながっている方、キューバの現状について知ってもらい、ちょっと考えてもらえたら。

*上記記事にあるキューバの銀行口座宛に直接送金は、現在のところ日本からできません。