最近のキューバ、タバコ事情

キューバの葉巻は世界的に有名だ。良い葉巻が作られるのは、良質のタバコの葉が栽培されるからである。葉巻工場へ行くと説明があるが、一般的な紙巻きタバコは葉巻を作った際に出る切り屑や、葉巻では削除される葉脈の部分などを使って作られる。葉巻工場とは別にタバコ工場があって、タバコも多く生産している。

オルギンにあるタバコ工場の様子  photo by Radio Anglo, Cubadebate

世界中、禁煙傾向にあって愛煙家には辛い世の中、タバコの生産量や商品の出荷量は減っているが、葉巻は贅沢な嗜好品として世の風潮に関わらず一定数の愛用者を保っているらしく、近年でも売上的にほとんど変動がないそうだ。キューバの葉巻も重要な輸出品として、コロナ禍にあっても工場は通常稼働して世界へキューバ産葉巻が供給され続けている。

ところでキューバ国内での消費は、葉巻よりもやはり紙巻きタバコが主流だ。そのキューバのタバコはキツい。日本のような軽いタイプは存在せず、多くの人はフィルターのない両切りのタバコを好む。料金も他国に比べると格段に安く、配給所でも売られている国民の誰もが楽しめる嗜好品のひとつということもあって、男女関わらず喫煙率は高い。若年者の喫煙も目立つ。高校生たちは制服のまま隠れることもなく、学校の横を歩きながらタバコを吸う。もちろんキューバでも未成年者の喫煙は禁止されているのだが・・・

女性革命家セリア・サンチェスもヘビースモーカーだった。肺ガンで亡くなっている photo by Cubadebate

それがここにきて、禁煙せざるを得ないような状況になっている。

ひとつには2021年1月1日以降の経済改革で国産タバコの料金も上がったから。配給所の最低品質タバコCriollosやPopularが1箱7CUP(約35円)から10CUP(約50円)、それよりちょっと質の良い国産タバコH.Upmannは0.7〜0.8CUC(約90〜105円)から24.5ペソ(約120円)といった具合だが、まだまだ世界的に見れば随分安い。

加えてコロナ禍で輸入タバコがほとんどなくなり、国産タバコの生産量も落ちたのか市場に出回る量がぐんと減って、タバコ自体を手に入れることが難しくなってしまった。店で販売されるときにはいつもの大行列に加え、なぜか喧嘩沙汰の大騒ぎ。喫煙者の柄が悪いというわけではなく、吸う人にとっては何としてもゲットしたいという必死さがそうさせるのだろうとかつての喫煙者として寛容に理解している。

当然、店で買えないのなら、行列するのが嫌なら、闇で買う。ただいま闇での料金銘柄問わず、100〜150ペソ(約400〜600円)!!かつて禁煙を決心した20年ほど前の日本の料金をとっくに超えて、現在の日本の料金と変わらなくなってしまった・・・

となると、やはり禁煙。

Criollosのパッケージにある保健省によるメッセージが強烈。「あなたの年(=命)を吸うな、健康に気を付けて」「今日始めよ。火を付けるな、悪習を消せ」「タバコ1本につき1日が失われる」「タバコはあなたを身体の中から燃やす。消しなさい!」(左上から時計回りに)

となってほしいところだけど、辞められないものは仕方ない。友人も「コロナとこの物不足でこんなに我慢してるのに、タバコまで辞めなきゃならないなんてあり得ない!」と意地でも吸い続ける決意だ。値上げによって若年者の喫煙はなくなりそうで何よりだけど、年季の入った愛煙家には、いかにやりくりしてタバコを手に入れるかが目下、食糧調達以上に悩ましいに違いない。

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