第8回キューバ共産党大会開催

4月16日から19日、5年ぶりの第8回キューバ共産党大会が開催された。今回は党のトップ中央委員会第一書記であったラウル・カストロ(89歳)の引退と、新たに現大統領であるミゲル・ディアスカネル(61歳)の就任が決まったということもあり、日本のニュースでも取り上げられていた。日本では「60年に渡るフィデル、ラウルのカストロ兄弟による体制が終わったこと」が強調されて、はっきりとした表現はないけれど、長く続いた独裁に終止符が打たれたことを良しとする、という印象を受ける記事であったように思う。

ところでキューバは社会主義国で、もちろんその体制も日本のそれとは大きく異なる。共産党が唯一の政党で、国の中枢にいる人たちは軍関連の人も含めてみんな党員である。その共産党のトップ中央委員会第一書記が実質的に国の指導者、以前はカストロ兄弟が兼任していた国家評議会委員長(元首)・閣僚評議会委員長(首相)があったのだが、2019年からはそれぞれ大統領と総理大臣と名前を変えて別の人が就くようになっている。

キューバ共産党大会でラウル・カストロは引退を表明した。Photo : Estudios Revolución /Granma新聞より

国のトップに当たる同じような立場の職がいくつもあってややこしい・・・でも皆、同じ共産党員で目指すところは同じだから誰がなろうと対立することはない。今後はラウルが退いたことでディアスカネルが共産党中央委員会第一書記長と大統領を兼任し、引き続きマヌエル・マネロ・クルスが総理大臣、その他党の中央委員が今回の共産党大会で承認された。最近ではラウルは高齢でもうあまり表舞台には出てきていなかったし、今回の引退は後継者ディアスカネルが決まったときに宣言されていたから、「来る時がきた」というだけで何ら大きな動きも変化もない。唯一の政党が全てを承認するのだから、反対票もないし揉めることもなく実にスムーズ。この体制に対する大きな反対勢力が国内で起こることなく、革命が60年以上続いていることはある意味すごいなあ、といつも思う。

ところで「革命は続いている」という表現、キューバ革命はかつてあったものではなく、今も継続しているものである、というのが正しい。だから歴史上のひとつの事象として《1959年キューバ革命》というのは少しおかしくて、フィデルらによって起こされた革命戦争の勝利、終結が1959年1月1日であり、そこから始まったのがRevolución Cubanaキューバ革命である。そう、今でもキューバは革命真っ只中!というのがキューバ革命政権の考え方というわけだ。

キューバでは西暦とともに革命〇〇年という年号表記がある。新聞の日付欄にもAño 63 de la Revolución 革命63年

そういうわけで今回の党大会は書記長交代という注目すべき大きな名目があり、ラウルとディアスカネルの長い演説をテレビで聞き流し、全文を記載した新聞を目にして終わった。

そしてふと前回、5年前の大会を思い出す。

革命にも政治的なことにも全く興味がないけれど、キューバにいてリアルタイムでフィデルが話す姿をテレビで見て、鳥肌が立ち震えた。すでに闘病生活に入っていて、もう長いこと国民の前に姿を現すこともなかったフィデルが、共産党大会に登壇し、ジャージで演説する姿。

その瞬間、思わずテレビの画面を撮影した!

かつての力強さはないものの、相変わらずの簡潔で人の心に届く言葉がさすがだなあ、と感動し、「これが最後の共産党大会になる」と言いきったことに一外国人だけど、寂しさを覚えた。でもそれをテレビ越しとはいえ生で見ることができてよかったなあ、と。Fidelistaフィデル信仰者でも何でもないけど、歴史上の人物でもあれほどカリスマ性の高い人はこれから先もなかなか出てこないだろう、といつも思う。

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