キューバのメーデー2020

5月1日のメーデー、キューバは祝日だ。祝日の少ないキューバで、最も大事な祝日=祝日らしい祝日かもしれない。

例年、5月1日は朝から各都市の広場などに多くの労働者たちが集まって大規模な祝典が開催されるのだが、ハバナの場合は革命広場が会場となる。この日は夜中の2時頃から革命広場から数ブロック離れたあたりに人が集まり始めて、明け方までに団体ごとに集合して準備を整えて待機する。参加者は職業別、職場別にユニフォームやメーデー用に誂えたお揃いのTシャツなどを着て、看板や横断幕そして必ずキューバの国旗を手にしている。もちろんどこかの組織に属していなくても参加可能で、キューバ名物のメーデーの行事を見ようと外国人観光客も早朝から広場へ向かう。

そして夜が明けると同時、7時前には行進が始まる。行進といっても集合場所から革命広場までパセオ通りを500mほど歩き、ホセマルティー記念館の前で待つ来賓たちの前を通って広場へ入るだけ。参加者が皆、広場へ収まったところで共産党第一書記長、大統領らの挨拶があり8時には終了、と実にあっさりしたものだ。

以前は毎年恒例のフィデルの演説を聞くために、広場に入りきれないほどの大観衆が集まり、式の終わった後にはフィデルも一緒に広場から海沿いのマレコン通りへと延々と続く大行進を行うという、まさに年に一度の大イベントだった。革命広場を埋め尽くす民衆を前に、大振りなアクションで演説するフィデルの姿をどこかで目にしたことがある人も多いだろう。中でもちょうど20年前、2000年のメーデーの演説で語られた『Consepto de Revolución(革命の概念)』は、今でも何かにつけて度々触れられるし、「Revolución es…(革命とは)」で始まる冒頭のいくつかのフレーズは誰もが知っている。そのフィデルが最後にメーデーに登場したのが2006年、以後はどんどん規模が縮小されて、現在は交通や観光への影響を配慮もあってか、上記のように早朝にパッパとやって終わる。

とはいえ、大勢の人が「密」になる行事であるのは間違いないので、今年は早々に通常開催の中止が発表された。そして迎えた2020年のメーデー、数日前から「Mi casa es mi Plaza(私の家が私の広場)」という言葉で呼びかけられたように、各家庭でお祝いする形となった。TVで朝8時に国歌が流れ、マスク姿の人が自宅のベランダからキューバの国旗を振る様子、家の前に出て国歌斉唱する人々、そして過去に革命広場で演説したフィデルの姿が映し出された。

社会主義国、共産党一党の国キューバの一番盛り上がる行事がメーデーであるのが、いかにもという感じで「らしい」な、と以前は思っていたけれど、その「らしさ」は時代とともにだんだん薄れている。では、キューバ「らしさ」はこれからどうやって表現されていくのか?

ともあれ、来年のメーデーは通常通り開催されますように(広場には行かないけど・・・)

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