本の国際見本市―Feria internacional del libro en La Habana

毎年2月に行われる本の国際見本市、ハバナで年に一番賑わうイベントのひとつと言っていい。本年度は2月7日から17日まで開催、ハバナを皮切りにその後全国各都市を巡回する。

メイン会場は観光スポットとしても知られるハバナ湾に面したカバーニャ要塞、世界遺産にも指定されている要塞の中が期間中多くの人でごった返す。この盛況ぶりが半端なく、観光客たちは一体何事かと驚くほどだ。要塞の中だけでなく、要塞周辺の空き地や駐車場にも食べ物の屋台が出たり、子供の遊具や移動遊園地が出現したりして、遠目にも何やら面白いことをやっていることがうかがわれる。

移動遊園地も登場!遠目にもなにやら楽しそう。

乗用車を持つ人が少ないキューバ人たちの移動手段はバス。通常の路線バスに加えて、ハバナ市街中心地からは無料シャトルバスも出ていて、それらを利用して会場へ到着、バス停から歩いて会場入り口までゾロゾロ移動、チケットを買うのに長蛇の列・・・。毎度お馴染みの風景。

入場口前の人の波。食べ物の屋台を覗きながら歩くのも楽しい。
要塞のお堀もご覧の通り。

この混雑が嫌なのだけれど、我が家からバス停ひとつのご近所でもあるし毎年1度は足を運んでいる。今年も息子と二人で週末の土曜日に訪れた。平日でも大概な人なのに週末、最終日近くとなるととんでもない人、人、人。息子は遊具や食べ物には大して興味を示さず(ホッ!)、友達が「Feria で買った」と言って見せびらかしていたオモチャを探している模様。前日には父親と行き、3Dメガネをかけて見ると飛び出す恐竜の絵本を買ってきた。去年も恐竜本だったような・・・まだブームは続いているのか。結局お目当てのオモチャは見つからなかったので、もう1冊恐竜フィギィアのおまけがついた雑誌を買った。雑誌はいらんのだろうけど。

子供向けの本、グッズが多く親たちには悩ましい?!

私も少しは本を見ようといくつかのセクションをのぞいた。最近はスペイン語の本を読む時間はあまりないのが残念だけれど、本をあれこれ物色するのはやっぱりいい。

フィデルの本もたくさん。こちらは去年の様子。

見本市で売られているのはキューバ国営の出版会社が出版する本=人民ペソ支払い、と各国の輸入本=CUC(兌換ペソ)支払いがある。残念ながら読書の習慣があまりない中南米において、キューバ人はよく活字を読む。本も自国でちゃんと出版して販売、しかも激安。1冊10ペソ(約40円)以下が普通で、辞書やちょっとボリュームのある本でもせいぜい20ペソ(約80円)ほど、平等主義という体制のもと、誰にでも手にすることができる価格に設定されている。キューバ革命直後、フィデルらが行った識字率向上運動の成果、現在も識字率は98%以上と先進国並みであり教育水準も高いといわれるが、読書の大切さを国民に浸透させようという意図がこの国をあげて行われるイベントを見てもわかる。

「読むことは育むこと」

といっても、見本市に皆が集まるのは必ずしも「本」目的ではなく、娯楽の少ないキューバにおいてみんなでお出かけするにはもってこいの場所だから、というのも大きいのだけど。

何はともあれ、2月はFeria(見本市)の月、今年も大盛況に終わったのでした。

360度Habana、ハバナで一番高い展望台

2019 年、新年が明けた。

キューバのお正月はそっけない。家族や友人同士集まってのパーティーは大晦日の晩、0時に日付が変わるのを皆で待ち、年明けと共に「おめでとう!」の挨拶を交わす。最近はキューバ人も携帯電話を持つようになったこともあり、夜中の混線を避けて31日の昼間から「新年の挨拶」メッセージや電話があったりして、年が明けてから「おめでとう」を祝う日本人の感覚にちょっとそぐわず変な感じがする。

そして元旦は静かなもの。1月1日は新年でもあるが、キューバにとっては「革命勝利の日」という大事な祝日でもある。特に今年は1959年のその日から60周年の区切りの年ということで、何か大きな催しがあるのかと思ったけれどハバナは静かなもので、例年通りサンティアゴ・デ・クーバのホセ・マルティやフィデル・カストロの眠るサンタ・イフィヘニア墓地で式典があったくらいだった。

おなじみのチェ・ゲバラとカミーロ・シエンフエゴスの肖像。

いつもの週明けと変わらない感じで、2日にはぼちぼち仕事始め。3日、たまたま近くへ行く用事があったので今年初の革命広場へ。いつもは広場のチェ・ゲバラやカミーロ・シエンフエゴスの肖像の前で写真を撮るだけでホセ・マルティ記念館へ行くことはないのだけど、この日はまだ学校が休みの息子も一緒だったので、2005年初めてキューバを訪れた時以来、実に13年ぶりに入場した。

ホセ・マルティと記念館

ホセ・マルティはキューバ人の誰もが間違いなく尊敬するキューバの英雄だ。スペインからの独立に尽力した一人だが、フィデルもマルティを師と仰ぎ、彼の思想をもとに国を作ろうとした。そのため現在のキューバという国を知るためにはマルティの思想を知らねばならない、とも言われる。そのマルティについて様々な展示がなされているのが、革命広場にある一際目立つ高い建物内にあるホセ・マルティ記念館だ。ここでマルティに関する展示を見た後は、建物最上階の展望台へ。東西南北ぐるりとガラス張りとなっていて、標高約110mハバナで一番高いところから360度市街を見渡せる。

南、記念館の裏にある共産党本部の建物。展望台に登らないとなかなか見られない。

13年前見たハバナの風景とたいして変わっていない。今も目立つのは旧市街のカピトリオといくつかの古い高めの建物、新市街のホテルハバナリブレなどいくつかの高層ビル、北には青い海の水平線が広がり、南は遠くに山並みが見えて街の広がりが対して大きくないことが知れる。

東、旧市街方面、カピトリオのドームが見える。
2005年、カミーロの肖像がまだない。
北、右端にホテルハバナリブレ。
2005年。建物の様子はほとんど変わらないけれど、今より木々の緑が小さい。

お天気が良かったこともあり、キューバらしい青い空の下のハバナを見るのはなんとなく晴れ晴れとした気持ちになって「正月らしくていいかな。」と思った。

キューバインターネット最新事情、その後

先日12月6日にスタートした携帯電話への3G導入、その後。

キューバ人は新しいもの好き、特にデジタルものには敏感でモノはなくても最新情報はすぐにキャッチ、口コミですぐに広まる。今回も当日からやはり街はその話題であふれていた。会う人みんなが「もう使ってみた?」と挨拶がわりに尋ね、新聞にも関連記事が連日掲載され関心の高さが知られた。

反応は様々のようだけど、事前に行われたお試しキャンペーンで起きた混乱もなく、順調なスタートといえそう。利用者の話を聞くと、

「思ったよりも接続はいい。」

「スピードが遅い。」

「メール送受信やネット通話だけなら十分。」

「Wifi接続よりもずいぶん料金が高い。」

といった声があがっていて、サイトによって使い分けをすれば有効に利用できそう。使用した容量、パッケージ料金の残金が一目でわかるアプリも国営電話会社ETECSAが無料で提供しているので、こちらを使えば接続をコントロールすることもできて安心。

が!こういった情報を得て、周囲の人たちの反応も見たのに、実はまだ試していない。

なぜなら現在使用しているスマホですぐにパッケージが購入できないことが判明したから・・・そもそもあまり携帯電話でネットに接続することがないので困りはしないからいいか。ということで、実践はまだしばらく先になりそう。

 

ちなみにこちらの3Dサービス、キューバの携帯電話回線を持ち、ネット接続のためのアカウントを所有していないと利用できないので、旅行者の方はこれまで通りWifiスポットへ行って繋がなければならないので、悪しからず。

キューバのインターネット事情が世界に追いつく日はまだまだ遠いかぁ。

本日開始、新サービスはいかに?ーキューバインターネット最新事情ー

キューバのインターネット環境は呆れるほどに遅れているけれど、なければないでどうにかなるもので、私も仕事で使用する以外はほとんどネットに接続しない。仕事でなければキューバ人同様、海外に暮らす家族や友人とのコミュニケーション手段として使うくらいで、それもキューバ人以下の頻度でしかない。

でもやっぱり他国並みの環境にあって欲しいとキューバ国民の誰もが思っているし、そうあるべきと政府も思っているし、そうなるよう努力をしている。他の制度や生活環境改善に対する取り組みと比べたら、ネット環境の整備はここ数年で目に見えて向上し、この国にしては素晴らしいスピードで「進化」しているように思う。

これからは路上でWifiつなぐ姿も少なくなる?

そして2018年12月6日、ついに

キューバ全土で3G導入、どこでもスマホでネット接続可能なサービスが開始!

と聞いて思い出すのが、ここ半年ほど何度か行われた「3Gお試し無料キャンペーン」による混乱・・・キャンペーン期間中、無料ということもあってアクセスが集中したこともあるだろうけれど、ネットの接続はおろか携帯電話が不通になったり、メッセージが送れなかったりと大々的に不具合が出た。

しかしこの混乱から国営電話会社エテクサは「貴重な資料」を得て、今年前半に公言していた通り年内3G導入に踏み切ったわけだ。

国営電話会社のサイトにある新サービスはについてお知らせ

そこで気になるのがお値段の方。現在、キューバのインターネット(Wifi)接続料金は通常1時間=1CUC(約120円)。今回、3G接続にかかる料金は、

携帯電話通話用チャージ料金から引き落としの場合:0.10CUC/MB

3G専用パッケージプラン:7CUC/600MB、10CUC/1GB、20CUC/2.5GB、30CUC/4GB

わからん・・・いったいこの料金で、ここのネット環境でどの程度の利用が可能なのか想像できない。料金も繋がり具合もよく分からないので、しばらくは様子を見てどんなもんだか街の噂が耳に入ってくるまで待とうかと思う。

よってせっかくの最新情報なのだけど、実体験レポートは後日。中途半端でスミマセン。

キューバの冬到来

常夏のキューバだけど、11月から3月のこの時期にはちょっとだけ「冬」を感じることがある。

11月が終わろうとしているが、今週半ばには今年3度目の寒冷前線が南下して気温がグッと下がった。内陸部では最低気温が10度を下回ったところもあり、ハバナでも16〜17度、最高気温も23度ほどでとても爽やか過ごしやすい日が2日ほど続いた。

冬の海と空。

寒冷前線が接近すると気温が下がるだけでなく曇りがちで風が強まり、海も荒れる。波が高くなってハバナのマレコン通りはバッシャンバッシャン道路まで水が入ってきて、すぐに閉鎖されてしまう。場合によっては雨も降って荒れ模様、雨季の雨と違って1日中冷たい雨が降ることもある。気温はそれほど下がるわけではないけれど、普段が暑いだけにものすごく寒く感じる。

住宅も基本的に夏仕様にできていて、密閉率は低いし、それでなくてもガタガタで穴だらけの建物だからすきま風が辛い・・・

すきま風入り放題。

キューバ人も寒さにめっぽう弱いのが普通で、普段Calle(通り)で何するでもなくフラフラしている人たちも、目立たなくなるような気がする。それほど寒くはないだろう、と思うけど街ゆく人たちは分厚い冬物を着込んで丸くなって歩いていたりする。子供達は風邪ひかないようにとより大げさに厚着させられ、毛糸のマフラーに耳あてにタイツと

「そんなもの持ってるんだ!」

と思うようなものを身につけて登校する。

普段はそれぞれ個性を発揮しておしゃれなキューバっ子も、冬物は手持ちのアイテムが少ないのかちょっとチグハグな組み合わせの着こなしになっていたりするのも面白い。

Calle(道)で物売るおじさんも寒げ。

我が家のキューバ人が日本で初めての冬を迎えた時に気がついたのだけど、暑いところ育ちの彼らはそもそも寒さに耐えるためにどうやって服をきたらいいのか知らない。やたらと重ね着しても暖かくはない、ということを・・・育った場所の環境から自然に学んでいることは多いものだと思った。ちなみに彼は数回冬を越してちょっとは冬の着こなしを学んだけれど、やっぱり寒いのは苦手だ。これは私も同じで、ここにいる理由の一つはそれ=寒いのダメ。

キューバの子供たちも風の子?

 

それでもこの時期寒さを逃れてキューバへくるカナダやヨーロッパの人たちからしたら、キューバの気候は天国。キューバ人が絶対泳がない冬場でもビーチは大人気。年末年始から3月にかけて、1年で一番多くの観光客で賑わう時期到来。

ハバナ500年アニバーサリーまでのカウントダウン

11月16日はハバナの誕生日、 創立記念日だった。

ハバナ創立記念日恒例、テンプレテ横のセイバの木の周りを3回周ってお願いごと。

ハバナの街が創られたのが1519年、今年で499歳のハバナ。500年を前に少し前からいたるところで「La Habana 500」の文字が目につき始めた。

何年も前から行っているハバナのシンボルカピトリオの修復も、来年にはすべて終わって全身生まれ変わって私たちの目の前にその完璧な姿を見せる(はず)。

ハバナを訪れる観光客が必ず足を運ぶ革命広場では、1ヶ月ほど前から周辺を囲むように大きな穴を開けて工事をしているが、これもハバナ500年事業の一つで電線を地下に埋める作業だそう。確かにチェゲバラの肖像の前で写真を撮るのに、顔の前をベローンと電線が通っているのは邪魔だしね、と納得。そのほかの場所でも電線の地下化、電灯をLEDに取り替えを進めていて、これらも全部記念事業とのことだ。街中が明るくスッキリするのはよいけど、これでまたそこら中の道路が穴だらけになって、いきなり通行止めが頻繁にあるのはどうかと・・・まあ、この辺はハバナの人たちは慣れっこか。

この電線が消える日も近い。

もうだいぶ前から観光客の急増でホテルの客室不足が問題となっているが、今、ハバナの街中はホテルの建設ラッシュ。つい先日も旧市街マレコン近くに5つ星ホテルパッカーズがオープンした。そのほか新市街ではハバナで最も高層ビルとなる予定のホテル建設が始まり、旧市街の中も崩れかけた大きなコロニアル建物のほとんどが、ホテルと化す(予定)という。これらの建設現場の前にも「OBRAS POR EL 500 ANIVERSARIO de LA HABANA」(ハバナ500年記念事業)の看板。その数、旧市街だけで10軒を超える。すでに着工しているものもあれば、まだ看板がついているだけのところもあるけれど、それにしても 建て過ぎなのでは?の感。そもそもそんなに需要があるのか?ホテルの前にやることもっとあるのでは?

ハバナの街のいたるところにこの看板。

市民の誰もがそう思っているらしく、先日からハバナ500年に向けての報道の中では、

「500年に向けての事業はその年に完結するものではなく、ここから始まるもの、すべては未来のハバナのために!」

と強調している。

ん?似たようなフレーズがキューバでは繰り返されてきたことに気がつく。

「革命は終わらない、今も、そしてこれからも続く、すべてはキューバ国民の未来のために!」

ということで、500年事業も終わらない。きっとハバナがミレニアムを迎えても・・・

 

とはいえ500年を迎えるのはおめでたいことだし、便乗でもなんでも500年の記念の年が盛り上がるのは悪いことではない。その中心にハバナの街に住む、ハバナを愛する人たちがいたらいいな、と。

カバーニャ要塞から。大好きなハバナのひとつ。

La Habana, real y maravillosa−素晴らしきハバナ

永遠に。

キューバでBalletバレエを

日本ではあまり知られていないかもしれないが、キューバは世界的にもバレエが有名で、素晴らしい踊り手を数多く世に送り出している。ハバナの中央広場パルケセントラルにある国立劇場、Gran Teatro de La Habana(グラン・テアトロ・デ・ラ・ハバナ/ハバナ大劇場)は主にバレエの公演が行われ、キューバが輩出した偉大なバレリーナAlicia Alonso(アリシア・アロンソ1920〜)の名が冠としてつけられている。

2018年国際バレエフェスティバルポスター

今年も国際バレエフェスティバルが10月28日から11月6日にかけて開催され、この劇場ほか、ハバナ市内4つの劇場を会場として様々な公演・イベントが行われた。今回は特にアリシアが創立した国立バレエ団誕生70年、アリシアの十八番「Giselle(ジゼル)」初演から75年の記念の年ということで、大々的に行われたらしい。小学生のころ、バレエを習っていた友達の発表会に行ったことはあるけれども本格的なバレエの公演は見たことないし、ハバナ大劇場にも入ったことないし、事前に知っていたら見に行ったのに・・・

青い空に生える美しい建物、アリシアアロンソ劇場

しかし、だ。キューバではこういったイベントの情報を得るのが非常に難しく、だいたい直前にならないとわからない、もしくは終わってからニュースを見て知る、ということが多い。特に関心があるもので、それについて常日頃からアンテナを張っていればどこかでキャッチできるのかもしれないが、日々の生活に追われ、たまーに何を思い立ったか文化的活動に参加してみようか、というぐらいのレベルじゃ気が付いた時にはすでに遅し。でもキューバ人たちはどこかでしっかり情報をキャッチして、チケット販売初日に列を作るし、イベント当日は大勢の人が集まる。

今回のフェスティバル開催前のチケット発売日にもたまたま劇場の前を通ったのだが、長蛇の列。中には「こんなおばちゃんがこんな格式高い劇場でバレエ見んのかー!」という人も。これはキューバの素晴らしいところのひとつだと思うが、

すべての国民に芸術を鑑賞する機会があたえられる(べき)

という考え方のもと、こういった公演のチケット価格はありえないほど安い。ハバナ大劇場の場合、席にもよるが10-30キューバペソ(約40〜120円)*。だから行く。その辺でサンダル履いて買い物してるおばちゃんも、パルケセントラルでツバ飛ばしながら大声で話しているおっちゃんも。そんな彼らもきっと公演当日は一張羅に身を包んで、香水の匂いプンプンさせて行くに違いない。TPOのわきまえっぷりが際立っているのがキューバ人。

アリシアのジゼルがモデルの像が玄関前に

というわけで今回バレエ公演は見られなかったが、公演のない日中は建物内を公開しているので入場してみた。スペイン語か英語のガイド付きで、小一時間かけてゆっくり見ることができる。建物全体のうち劇場スペースは約1/4ほどで、あとはギャラリーやイベント会場、会議室などとして利用されているそうだ。外観も素晴らしいが、中の装飾も大理石がふんだんに使われ、細かな彫刻やクリスタルのシャンデリア、モザイク模様の床、豪華絢爛宮殿の様相。

バレリーナの舞台裏をテーマにした写真展が開催中だった

10数年前に初めてハバナに来て以来、何十回も入口前を通って、何百回も目にしているだろうに実は初めて中に入った。建物はもちろんだが特に気に入ったのは、3階のベランダから見るカピトリオ。この高さ、この角度から見たことのないカピトリオ。さらに週末に行われるフラメンコ公演のリハーサルをやっており、こちらもしばし見学することができた。

いつもと違った目線でみるカピトリオ

ふと思い立って入ったわりに、知的好奇心が十分に満たされてものすごい得した気分になった。出口でこれから年末にかけての公演もチェック。今年最後の〆は「くるみ割り人形」だな、と密かに決めた。

 

*こういった公共の場への入場料等は、キューバ人価格と外国人価格が異なる。私のように永住権所持している場合もキューバ人価格適応。ハバナ大劇場での公演の場合、外国人価格は演目に関わらず、30CUC(約3,450円)。それでも、大編成のクラシックや世界一流のオペラ公演もこの価格で見られるのだから、超お得。今回私が行った劇場内見学は、キューバ人5キューバペソ(約20円)、外国人5CUC(約560円)。

お試しあれ・・・ラム酒、葉巻、コーヒーのMaridaje(マリダッへ)

キューバ名物、Ron Tabaco Café. (それぞれスペイン語でロン、タバコ、カフェと発音)=ラム酒、葉巻、コーヒーは世界的にも有名で、そのあまりの素晴らしさから「天国への3ステップ」とも言われるほどです。

Ron, tabaco, cafe ♫…キューバ音楽の歌詞にもよく出てきます。

ラムは砂糖の生成過程でできる糖蜜を使って作られるお酒で、キューバ各地に蒸溜所があり様々な種類のラム酒が生産されています。キューバでお酒といえば何はともあれラム、中でもハバナクラブは世界に名の知れた有名な銘柄です。

葉巻はもともとキューバにいた原住民たちが吸っていたものをスペイン人たちが持ち帰り、ヨーロッパで受け入れられ広まったといわれます。キューバの土と気候がタバコの葉に適していることから良質のタバコ=葉巻が生産され、世界最高級の贅沢な嗜好品が生みだされています。

コーヒーはキューバ人の日常に欠かせない飲み物ですが、こちらはお隣のハイチから入植したフランス人たちによってキューバで広く栽培されるようになったものです。

それぞれキューバの歴史とも深い関わりのある産物であり、キューバを知るため、そしてキューバ人たちと時間を共有し、より深く知り会うために欠かせないものと言えます。

ところでこのラム、葉巻、コーヒーもちろんそれぞれのシチュエーションで別々に楽しむことができますが、本来葉巻の嗜み方としては、これらを組み合わせて味わうのがよし、とされます。

それが、Maridaje(マリダッへ)

英語のMarriageと同じ語源で結婚も意味しますが、調和、組み合わせという意味もあります。同じ意味のフランス語マリアージュは料理などで使うと「相性の良い食べ合わせ」を意味するのを聞いたことがあるのではないでしょうか。要は葉巻だけではなく、ラムやコーヒーと一緒に吸ったほうがより美味しい、というわけです。

ハバナにはこのMaridajeを観光客にレクチャーしてくれ、実際に体験できるところがあります。

コロニアル建物のパティオで優雅なひと時を・・・

まずは、コーヒーを少々。後で葉巻と一緒に飲みたいので全部いってしまわないよう注意。

そしてラム酒。もちろん銘柄はハバナクラブ。蓋を開けたら数滴床に垂らします。これはご先祖様に捧げる仕草とも大地の神に感謝の念を示すためとも言われるのですが、キューバ人がお酒を飲む時、誰もがやる「儀式」です。それから各々のグラスにラムを注ぎ、とりあえず乾杯!そして口の中を湿らせるような感じでラムを味わいます。

キューバ人はどんなラムも基本ストレートで飲む。

それからいよいよ葉巻に火を付けます。国がキューバ産として認定した葉巻には「王冠」と呼ばれるラベルが巻かれていますが、このラベルがある方の端をチョキンと葉巻カッターで切って、反対側に火を付けます。本来の作法からするとマッチやライターで直接火をつけるのはタブー。セドロという種類の木っ端にまずは点火し、この炎で葉巻の先を焦がすようにして火を付けます。そしてゆっくり吸い込む。葉巻は肺まで入れずに、煙を口の中に含みあくまで香りを楽しむものです。

葉巻にも作法あり。

今度はまたラムを一口飲んで、葉巻を吸う。それからコーヒーを飲んで、葉巻。それぞれ違った味わいがあるはず。

シガーバーでもラム酒やコーヒーと一緒に葉巻を。

日本で葉巻を嗜好する方は少なくシガーバーの敷居も高いかもしれませんが、キューバへ来たからには是非とも本場の葉巻をラム酒、コーヒーと一緒にお試しあれ。

ハバナから日帰りリゾート山編−Las Terrazas, Soroa−

のんびりしているとはいえ一国の首都ハバナに住んでいると、たまには都会の喧騒を逃れ自然の中へ行きたくなる。ありがたいことにハバナ市内にいても十分自然を感じられるところはあるのだけど、近年は車の排気ガスによる空気汚染もひどく(車が古いのとガソリンの質が悪いので一層ひどい)、時々キレイな空気を思いっきり深呼吸したい!と思う。そもそも田舎育ち、思えば人生初の首都生活がハバナ。

 

そこで、今回はハバナから日帰りでいける山リゾートLas Terrazas(ラス・テラサス)とSoroa(ソロア)へ行ってきた。キューバのメジャー観光地ランキングでいうとちょっと格は下がるかもしれないが、豊かな自然を満喫できる上、比較的レジャー施設も整っておりキューバ人にも人気のスポット。

 

ラス・テラサスは19世紀初頭、お隣の島国ハイチ独立後にキューバへ移住したフランス人達がコーヒー農園を開拓、この地へ移住したことに始まる。そのため現在でも当時のコーヒー農園跡がいくつか残っていて、見学することもできる。山がちなこの地にテラス状の段々畑を作って開拓したことからその名前がつけられたのだ。

ブエナビスタカフェ農園跡、奴隷たちの住居跡も残る

20世紀初頭になるとコーヒー産業も低迷しそのほかの作物を細々と作りながら農民たちが貧しく暮らしていたそうだが、キューバ革命後、同地域にモデル集落(Nuevo pueblo modelo)が形成され、周囲の住民がここに住まうようになった。それが現在でもラス・テラサスの湖畔にある建物群からなる村だ。

1990年代より観光業が発達するが、豊かな自然を破壊することなく環境保護を重視して開発を進めたことからエコビレッジとしても注目されるようになる。自然と調和した中で創作活動をするため、移住するアーチストも多い。

「マリアさんのカフェ」で美味しいコーヒーを・・・

中でも音楽家Polo Montañez(­-2002ポロ・モンタニェス)が有名で、彼の住んでいた家は現在博物館として公開されている。他にも見学できる画家のアトリエ兼ギャラリーがあったり、美味しいコーヒーの飲めるカフェや手作りの小物や香水を売る店があったり、と緑に囲まれた湖畔の散策は十分にリゾート気分を味わうことができる。ゆっくり滞在するのであれば、周辺でバードウォッチングやトレッキングなどもできるそう。

Las Terrazas 湖畔にあるLester Campaのアトリエ

 

隣にあるソロアもラス・テラサスと一緒に訪れたいところだ。ここもコーヒー農園を営むフランス人の入植により開拓されそうだが、国内有数の多雨地帯で豊かな森とそこに生息する多種多様な蘭が有名。ここで必ず訪れたい場所のひとつがラン園で400種類ほどの蘭を栽培し、一部展示している。そしてキューバに移住した日本人園芸家竹内憲司氏が一時、蘭の研究資料整理にあたっていたというから、日本人としてもとても興味深いところ。

様々な種類の蘭

ほかにも鬱蒼とした林の中の山道を歩いて行った中にあるSalto de Arco Iris(アルコイリス滝)という清涼感溢れる滝を見に行くのもいい。

ソロアの滝。水に入ることもできるが、山の水はいつも冷たい。

またこの滝の入り口脇へ入って行くと、山の頂上に展望台がある。歩いても行けるが、今回は馬に乗って行ってみた。途中、ガイドのお兄ちゃんが、

「あの山の頂まで行くぞ!」

とえらく上の方にある岩場を指差す。

「嘘だ」

と思って軽くかわしたのだが、本当にそこが最終目的地の展望台だった。

馬に乗って頂上を目指す。途中にも絶景ポイントあり。

キューバ、ちょっと田舎に行くと馬や馬車がまだ普通に市民の足だったりするのだけれど、観光で乗馬できるところも多くここ数年で乗馬歴がぐっと増えた。でもこれほどの坂道で乗ったことはなく緊張感と冒険気分がグーンと上昇、そして頂上からの360度絶景に

「おお〜!」

この乗馬でゆくソロア展望台、なかなかのオススメ。

 

森の匂い、湖畔のほどよい湿気、滝音、見晴らしの良い山の上ですーっと深呼吸。ハバナから日帰りリゾート満喫、久しぶりに自然を五感で感じた気がした。

キューバの新学期

キューバの新学期は9月に始まる。2ヶ月、学年によっては2ヶ月以上もある長い夏休みの後、やっと子供達が学校へ行くようになり親たちはホッとして日常を取り戻し、子供達もなんとか早寝早起き、毎朝の登校に順応してきた今日この頃。
日本でも新しい学年の始まりは大事だけど、キューバは革命の2本柱のひとつが「教育」(もうひとつは医療)なだけに夏休みの終わる頃から、テレビでも新聞でも学校ネタがニュースのトップにきて国をあげて「万全の態勢」で新学期を迎える。

我が子の小学校、中庭にはホセ・マルティ

教育が大学まですべて無償のキューバでは、教科書はもちろん国が必要最低限の学用品や制服を無償、もしくは最低価格で提供してくれる。が、これが十分かといえばそうではないし、登校用のカバン(多くはリュック、デイバッグを使用)や靴、筆入れ、ランチバッグ、などなど各自購入しなければならない。
そのため8月の終わりになると、子供達の憂鬱をよそに親たちは新学期の準備に終われ、お母さん同士でも、どこで何を買った、子供にぴったりのサイズの制服が見つからないから直してもらわなきゃ、といった会話がよく聞かれる。
物資の不足しているキューバでは新学期に必要なグッズを手に入れるのも大変で、たとえお目当てのものが見つかっても高価で手が出せなかったり、粗悪品であったりと、なかなかすんなりとはいかない。仕方ないからしょーもないものを買ってアレコレ手を加えて直して、キューバ人お得意のINVENTO(インベント=でっち上げ)をしなきゃならない。それでもなんとか子供達は皆、ちゃんと必要なものを準備して新学期を迎える。別に毎年すべて新しいものを買う必要はないのだけど、「できれば・・・」と思う親心は何処も同じ。
新学期の朝、久しぶりの学校、子供達の顔がいつもより嬉しそうで、笑顔がキラキラしているのはやっぱりいい。

新学期の朝、ピカピカの3年生たち

ところで新学期準備で最も親の負担となるのは(個人的にはそう思っている)、教科書とノートのカバー付け。何のこっちゃと思うでしょ。何のことだか私もまったくわからず、いまだに非常に抵抗があるのだけれど。
いつからの習慣なのかわからないが、キューバでは教科書やノートにすべてカバーをつける。しかも、紙+ナイロンの二重カバー。そのため、8月の終わり頃になると新学期グッズとしてこの紙とナイロンがそこら中の店や路上で売られている。

紙カバーの上にナイロンカバーを・・・

なぜ、カバーしなきゃならないのか・・・?

教科書は毎年新しいものが支給されない。誰かのお古を使わなければならないことがある。つまり、来年他の誰かが使うかもしれないから傷まないようにカバーをしなさい、と。

教科書もノートも質が悪い。紙、製本の質が非常に悪い。子供達が雑に扱うとすぐにボロボロになってしまう、だからカバーをしなさい、と。

以上、納得するしかないので、今年も新学期前の日曜日丸1日かかってこれをやった。

作業中・・・
本年度の成果!さあ、頑張って勉強してねっ!!

毎年のことなのでだいぶコツがわかって、時短でキレイにできるようになった。新学期恒例行事として毎年やっていたら、必要でなくなった時に寂しく感じたりして・・・

キューバの学校についての諸々
※ キューバの教育制度:初等教育から大学まで無償。義務教育は小学校と中学校、小学校は6年だが1年生入学前に1年プレスクールがある。5歳児より開始。高校は大学準備コースまたは職業訓練コースを選択しそれぞれ異なる学校へ行く。大学は4年から6年、学部による。
※ 学年の区切りは9月ではなく、1月からの1年。つまり、この9月にプレスクールに入学したのは2018年1月1日から12月31日に5歳になる子供達。だから9月の時点ではまだ4歳の子もいる。
※ 学校の制服は全国共通。小学校がエンジのスカートと短パン、中学校がベージュのスカートと長ズボン・・・と行った具合。制服も支給されるが基本1年に上下1枚ずつ。育ち盛り、汚し盛りの子供、1年に1組じゃとても間に合わない!これを探すのも大変。お古やサイズ違いをなんとかゲットするしかない。
※ 小学校低学年の教科は国語=スペイン語と算数。これに日本の生活科にあたるEl Mundo en que Vivimos(私たちの生きる社会)がある。音楽や体育もあるのだけど我が子の学校の場合、「教師がいない」のでほとんど授業がない・・・最近は小学校3年生から英語教育が始まるのだけど、こちらも教えられる先生がほとんどいないとか。でも英語の重要性はここでも当然認識されているので、プライベートで習っている子供も多い。
※ 希望して才能のある子供たちは小学校3年生から音楽や体育の専門学校へ行って英才教育を受けることも可能。その後、高等教育まで専門別に特別な教育がなされる。