キューバの二つの通貨:いよいよ統一へ

キューバに2種類の通貨が流通して、それが近々ひとつに統合される予定だ。という話を少し前に書いた。それがついに現実となる日が決まった。

Unificación monetaria:ウニフィカシオン・モネタリア、通貨統一 Photo by Cubadebate

先週10日、当日朝から「今日の夜のニュースの終了時、国民が大いに関心を持っている事項について重大な発表がある」とあちこちで告知され、ついにXデーがくるのか、はたまた別に何か事件でもあったか、と様々な憶測が飛び交った。普段ならば夜のニュースの前にある報道番組で政策関連のニュースが発表されることが多いのに、ニュース終了時まで引っ張るあたりに何やらただ事ではない重大さが読み取れた。

おかげでニュースを最初から最後までしっかり見て、結局ニュース時間内には「重大発表」はされず、ニュースが終わった直後の「今夜の番組」もいつも通りにあって、その後パシャっと不自然に画面が変わって特別番組が始まった。そして司会者の簡単なアナウンスの後、ディアス・カネル大統領自らが声明を読み上げた。

「2021年1月1日、通貨統一のための関連改革を開始する。」

いや、意外に予想通りでホッとした。

この日は具体的な実施日のほか、1USD=24CUP(キューバペソ)を唯一のレートとすること、同日から180日後にCUC(兌換ペソ)の流通を停止してCUPのみとすること、この期間に個人所有のCUCは銀行や両替所でCUPに両替することができることなどが発表され、関連する具体的な政策は順次発表していくとのことだった。

すでに銀行やATMはいつも以上の行列・・・

通貨統一と同時に行われる改革の目玉は、給与の引き上げとそれに伴う公共料金などの引き上げ、である。社会主義国であるキューバは近年個人経営者が増えてきたとはいえ、基本的には皆公務員で国からお給料をもらっている形なので、国が定める賃金が人々の収入となり、公共料金だけでなくあらゆるものの値段は基本的に国が決める。ここ数年で一部の職種の賃金引き上げが実施されてはきたものの、今回はそれをすべての職種、労働者対象に行う。いったいどのくらい上がるのか?

ざっくり全部5倍になるらしい。

給与は5倍になるが、電気も水もガスも5倍、バス代も5倍、配給品の価格も5倍に値上がりする・・・と言っても何もかもが5倍になるわけではなくて、基本的にはこれまでCUP表示で売られていたものの料金が上がる。

電気代も5倍に。節電必須?!近所のおばちゃんは「電気つけずに化粧しなきゃ」とすでにネタにしていた。

CUC表示の高価な電化製品、インターネット・携帯電話代金などは価格の見直しはあるかもしれないが、そのまま×24=CUPで支払いとなる(はず)。ちなみに新しい最低賃金は週44時間労働者で月給2100CUP(=87.5USD、約9500円。これまではこの1/5、2000円弱)、公共料金や配給品の価格がいくら最低限に抑えられていて医療費と教育費が無償でも、トイレットペーパー4巻160円、サラダ油1リットル220円、スニーカー5000円、冷蔵庫10万円ではどう考えてもお給料だけではやっていけない現実があるのだけれど、その辺の矛盾はさておいての経済改革。

そんなわけで先週以降、ニュースや報道関連番組、特別番組でこうした政策や改革内容が発表され続けている。

新聞に掲載された料金リスト、食料品や日用雑貨は料金据え置きのものも多い。ガソリン料金も変わらずレギュラー1リットルで1ドル相当

怒涛の情報の嵐・・・

これまでも通貨統一に伴う関連経済改革の概要や方針はすでに知らされてはいたものの、ここにきて発表されるのは数字を伴う実に細かい具体的なもの。ついていけない情報量でごまかされている気がするのは、私が外国人だからというだけではないだろう。全てを把握する必要はないけれど、生活に直接関わる内容も多いので気になるし実際に知らないと困ることも出てくるに違いない。そして何より心配なのはこれらがすべてうまいこと2021年1月1日から機能するのか、ということだ。だいたい何か新しいことを始めようとすると、準備不足や見通しの甘さが露呈してコケたり、パンクしたりすることが多いこの国。コロナ禍がまだまだ続く中、年明け早々どうなることか・・・

さあ、2021年どこへ行くキューバ?!

4 Replies to “キューバの二つの通貨:いよいよ統一へ”

  1. Tomokoさん
    ブログをいつも興味深く拝見しております。貴重なキューバの日常を知る事が出来て、今まで私が持っていた単純なキューバのイメージとの違いなど驚きの連続です。
    国際線フライトも再開されましたが、ハバナ観光施設などもオープンされていますか?観光客はいるのでしょうか。是非教えていただきたいです。

    1. まつさん
      ブログ読んでいただきありがとうございます。
      ご存知のようにハバナの国際空港も再開してフライトは飛ぶようになりましたが、観光客はまだほとんど見かけません。
      そのためハバナでも営業しているホテルも少なく、博物館など観光施設もオープンしている場所はわずかです。
      しかしながら観光客の受け入れはすでに再開されてはいるので、感染予防の規制を守って、限定的な観光であればできるかと思います。
      キューバ旅行をご検討でしたら、是非ご相談ください!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。