ハバナ502歳のアニバーサリー、今年は・・・

11月16日はハバナの502回目の誕生日だった。

1519年11月16日、旧市街アルマス広場にあるテンプレーテ横にあったセイバの木の下でハバナで初めてのカトリックのミサが開催され、ミサに出席した当時その付近に暮らしていた先住民の酋長の名前Habaguanex(ハバグアネクス)からHabanaハバナの名がつけられたという。今見られるセイバの木は何回か代替わりしたものだけれど、ハバナ誕生ゆかりの地、ということで毎年この日にはセイバの木の周りを3回周ってお願い事をするのが習慣となっている。なんだかんだで、毎年このハバナの誕生日にはセイバの木を周りはしないものの、この場所を訪れる機会があった。

ということを去年も書いて、今年はどうなっているやらと思いを馳せたりしていたようだが、コロナ禍での2度目のハバナ創立記念日、感染状況もだいぶ改善して15日にはキューバの国境再開、海外からの観光客受け入れ開始とこれから始まる「新しい日常」に大いに期待できそうな嬉しい中での誕生日が期待された。

photo:Abel Padrón Padilla/Cubadebate

2年前の500年記念アニバーサリーのような大きな式典はないだろうけれど、せっかくなので今年もテンプレーテのセイバの木を見に行こうか、などと考えていたハバナ誕生日の前日、我が家の周りがやけに騒がしい。そこら中で工事が始まり、何台ものトラックがやってきて何やら荷物を降ろし、あちこちにテントが立って、スピーカーを持ち込んで特設ステージもできた。少し前から工事が始まっていた配給所のほか、団地の中心にある店や銀行の入る建物、バス停、道路の路肩などあらゆるところがペンキで塗られ、あるいは壁に何やらペイントされ(何度か雨降ったら流れるに違いない・・・)、あちこちに植物が植えられ(根付かずすぐ枯れそう・・・)、これまで一度見たことがない噴水の水が噴き出し(噴水に使う水があるなら、水道の水毎日給水して〜!)、イケイケだった団地内の運動施設周辺にフェンスが作られ(出入り口がないんですけど・・・)、ボコボコだった歩道の穴や崩れた階段にセメントを塗りたくり(雑すぎ・・・)、ついには突貫工事でETECSAエテクサ=電話局のオフィスまで作ってしまった。

一夜にしてできたエテクサの販売店

「一体何事か?!」の大騒ぎの原因は、ディアス・カネル大統領が来るというものだった。

暗くなるまで突貫工事は続き、翌朝ハバナ創立記念日当日は早朝から次々に大きなトラックが到着して、品物を並べ始めにわかにFeliaフェリア=市ができた。最近のモノ不足状態からしてこれほどまでいろんなものが並ぶのが信じられなかったし、事実これまでキューバで見たどのフェリアよりも充実した品揃えだった。

思えばこんな人の集まるフェリアも久しぶり、食料品が主だったけれどトイレットペーパーなど日用品もあった

「いやーちゃんとモノあるじゃん!」

と驚きながら見て回り「何はともあれ食べるもの」と、トラックから直接売られる野菜とパン屋直営のテントの行列へ並ぶ。時間とともに人も増えてごった返し、いつもの割り込み批判の怒涛がそこら中で聞こえたけれど、なんとか早々に食糧品ゲット。

本日の勝利品!

と、そうこうしているうちに国歌斉唱とともに始まった特設ステージで行われたハバナ創立記念日は終わっていて、果たして大統領が来たのかも定かではなかった。後で聞いたところだと、超過密スケジュールの調整がつかず結局その日はキャンセルとなったらしい。とはいえ、大統領来訪(かも)で一夜にして団地のあちこちが綺麗に整備されて、いろんなもの売ってくれたのは良かった。なんなら月一ぐらいで企画して!

というわけで、ハバナ502歳のアニバーサリーはいつもと違った「お祝い」となり、旧市街へも行けず終い、来週あたりにテンプレーテ詣ででもしようか。

大統領は前夜のうちにセイバの木を回られたそうです・・・

いよいよ、11月15日キューバの国境再開!

2021年10月24日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者1,210名(ハバナ79名)、現状陽性者5,761名、累計感染者946,960名、累計回復者932,951名、累計死亡者8,191名

上記、本日発表のコロナ感染状況。数字を見ても新規感染者数はグーンと減って状況が良くなっているのは明らかだが、先週からさらにハバナとサンティアゴ・デ・クーバの2大都市で規制の緩和「新しい日常」への移行が発表されたこともあり、街中を見ても街をゆく人たちの足取りや表情まで違って見えるような気がする。ハバナでは多くのレストランが店内での飲食を開始し、久しぶりの外食を楽しむ家族連れなどが見られるようになり、Calle(通り)で遊ぶ子供たちの姿と賑やかな声が戻った。そしてハバナの人たちにとって最大の娯楽、マレコン散策も解禁!釣りをする人、音楽を演奏する人、ビールやラムを飲みながら語らう人たちが帰ってきた。

日曜日の旧市街ビエハ広場、賑わうレストランを見るのも久しぶり!

また先週12日には、11月15日の国境再開にあたっての入国条件が観光省によって発表された。それによると・・・

  1. 11月7日より入国時に空港などで各自のPCR-RT検査、入国後の隔離規制は排除される。
  2. 海外からの旅行者はキューバ人、外国人を問わずに該当機関が発行したワクチン接種済みを証明するための「健康パスポート」または「対Covid-19国際証明書」を提示すること。
  3. 上記のコロナワクチン接種済み証明書を提示できない旅行者は、出発国の認証された機関で出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を提出する。
  4. 0~12歳の子供には国籍を問わずワクチン証明、PCR-RT検査を要請しない。
  5. 出発国搭乗時に航空会社は旅行者に対して、ワクチン証明または出発前72時間以内に行ったPCR-RT陰性証明書を要求する。
  6. 「旅行者健康状態表明」(健康宣言書、到着前に機内で配布される)を提示すること。
  7. 空港で国際保健管理者によってランダムにPCR-RT検査が行われる。
  8. マスクの着用は空港エリアまたその入り口、同様に国内全域で引き続き義務とする。
  9. 引き続き感染病予防体制がすべての入国箇所:空港、港で取られる。
  10. 入国箇所を問わず海外からの旅行者でCovid-19およびそのほかの感染病症状または兆候のある者は、有効な対処についての導入を受けPCR-RT検査が実施される。
  11. 旅行者が滞在中も引き続き感染病監視を実施するものとし、ホテルには基本的な医療機器を揃えた医師が常駐する。
  12. カサパルティクラルのオーナーおよびキューバに居住しない旅行者を宿泊させる個人は、宿泊客にいかなる症状が見られた場合も速やかに担当の保健管理者に通知する責任を負う。
  13. カサパルティクラルに宿泊する旅行者に対する監視は、地域の保健医療機関が行う。Covid-19の症状が見られた場合には担当の保健管理者に通知しなければならない。

*観光省は宿泊施設、観光施設に対して、観光省の定めたプロトコルを遵守させ最上の衛生管理を備えたサービスを提供し、キューバ観光の復興に努める。
*観光施設内で密閉箇所や人の集まるところでのマスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持、手消毒などによる清潔状態を保つ、検温の実施等のプロトコルはより強化される。
(以上、キューバ観光省HPより抜粋:11月7日以降旅行者に課される衛生管理プロトコル

現在キューバのワクチン接種完了率は70%少々、11月中旬までには現時点で接種可能な人(過去感染していない人、健康上の理由で接種困難な人を除く)すベてがワクチン接種を済ませる予定で、国民の命を守った上での海外観光客の受け入れとなる。昨年同じく11月15日に観光再開し海外からの入国を再開したのがきっかけで、うなぎ登りに感染者が増えてしまった悪夢が繰り返すとはないと信じたい。 経済面だけでなく、街の雰囲気や人々の生活ぶり、特にハバナなどの見所の多い街はやはり観光あってのキューバだとここ1年半で痛感した。観光客が戻って、より活気ある街が見られることを心から楽しみにしている。

キューバ国旗

先日、マタンサス州のあるビルに巨大なキューバ国旗をデザインしたモニュメントができた、という記事を見た。写真を見ると10階建てほどのビルの側面全体を使ってキューバ国旗が描かれている。別の建物の側面には、キューバ革命の発端となった26 de julio(7月26日運動)の旗が同じように建物の壁いっぱいにデザインされ、二つが対になってひとつの作品となっているそうだ。作者は造形作家のJesús Alberto Mederosヘスス・アルベルト・メデロス氏で、長年の構想を実現したとのこと。それぞれの旗の下に描かれている風景は、独立戦争で国家の英雄ホセ・マルティが倒れたドス・リオスと革命戦争の舞台となったシエラマエストラ山脈で、フィデルと愛すべき全ての人たちに捧げる愛と歴史を表現しているそう。バラデロへ行く途中にあるマタンサス市の結構目立つ場所にあるらしいので、いつか近くで見る機会があるかも。

マタンサス市、Jesús Alberto Mederosの作品。Photo by Granma

で、いつも気になっていることなのだけど、キューバの国旗は「縦」使いをすることが多い。学校などの公の場所では国旗掲揚用のポールがちゃんとあって横になびいているのだけど、街でよく見かけるキューバ国旗はベランダや建物の壁に、あるいは道の両側から紐でくくって縦方向で吊るされている。日の丸を縦に掲げることはあまり見ないし、他の国の国旗も横仕様でデザインされているものがほとんどのように思うので、最初は馬鹿でかいキューバ国旗が、縦にベローンと揺れているのにちょっと違和感があった。誰もその理由を説明してくれないので、単に掲揚する竿がないから吊るしとこ、っていうだけかもしれないけれど。

革命広場、有名なチェ・ゲバラ肖像のある内務省の建物に掲げられたキューバ国旗
国会時に掲げられる国旗も縦位置。もう一つの旗はキューバ独立を導いた祖国の父と呼ばれるカルロス・マヌエル・デ・セスペデスが作った国旗、現在は国会の旗としてともに掲げられる

ところで、旗の意味や由来についてはたまに聞かれるので答えられるようにしている。

キューバ国旗はLa Bandera de la Estrella Solitaria(ひとつ星の旗)の名で知られ、第一次キューバ独立戦争の始まった翌年1869年に憲法で国旗として定められた。デザインしたのは、独立戦争以前にキューバをスペインから独立させてアメリカに併合しようと試みたNarciso López(ナルシソ・ロペス)で、実はベネスエラ人。3本の青いラインは当時の東部、中部、西部3つの州、2本の白いラインは独立思想の強固さを象徴する。二等辺三角形は人々の平等、赤い色は自由を欲してみなぎる血、白い星は絶対的な自由と独立を示す。

デザインもさることながら青、赤、白のトリコロールはザ・キューバカラーだ。キューバ代表のスポーツ選手のユニフォームは間違いなくこの色。

ちなみにキューバの国鳥トコロロはこの3色の羽を持つカラフルな鳥

真っ青な空になびくキューバの国旗はすごく絵になっていい。コロニアルな古い建物の壁に吊るされたキューバントリコロールも、思わず写真に納めたくなる。

ビニャーレスで

そういえば我が家にちゃんとしてキューバ国旗がない。子供の手書きの絵じゃなくて、ちゃんとしたのをひとつ(1枚?)手に入れてみようか・・・

キューバのコロナ近況:規制緩和へ 2021.10

やっと、やっと、や〜っと、コロナの状況に明るい兆しが見えてきた。

9月の後半から感染の減少傾向が数字にはっきりと現れるようになり、10月になってここ5日間の新規感染者数は日を追うごとに100人単位で減少、ついに3ヶ月ぶりに3000人代まで。

2021年10月5日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者3,596名(ハバナ251名)、現状陽性者20,884名、累計感染者875,464名、累計回復者841,128名、累計死亡者7,703名

世界遺産の観光地として有名なビニャーレスのあるピナール・デル・リオ州やトリニダのあるサンクチ・エスピリトゥス州など、いくつかの地方はまだまだ高い感染率で心配されるところだけれど、ハバナに関してはだいぶ落ち着いてきた。

こうした状況を受けて9月24日からハバナを始め7つの州(マタンサス、シエンフエゴス、シエゴ・デ・アビラ、サンティゴ・デ・クーバ、マヤベケ、イスラ・デ・フベントゥ)で段階的な規制緩和が始まった。

営業再開したハバナ旧市街にある老舗カフェ「CAFE DEL ORIENTE」

まずは飲食店の再開から。これまで店内飲食は禁止、持ち帰りかデリバリーのみでの営業可能だったが、感染予防対策の措置をとった上で店内飲食、夜間の営業も9時半まで可能となった。国営店は軒並み営業を開始し、個人経営の店もボチボチ様子を見ながら再開している。これに伴って公共交通機関の運行も夜10時半までとなり、同時間まで外出が許可されることに。

さらに10月1日にはビーチとプールが解禁!まだまだ暑い日が続くこの時期、夏の間我慢していた海へGO!子供達も幸い(?!)まだ学校が始まらないから、来年の夏まで待たなくていいのなら、もちろんGOOOO!!というわけで、早速週末には多くの家族連れがハバナ近郊のビーチへ向かったようだ。他にも公園やジム、そしてハバナ市民の憩いの場マレコンでの釣りや立ち止まってのお喋りもOKに!正直、今は経済的な理由で外食する余裕がない人も多く飲食店の営業再開はあまりピンとこない感じだけれど、ビーチやマレコンが戻ってくるといよいよ「日常」がグッと近くなった気がする。

我が家は幸い目の前に「プライベートコスタ」があるから、規制があった時からこそこそ通っていた。これからは堂々と行ける?!

そして国中が期待して待っているのが11月15日の海外観光客の受け入れ再開。この最悪の経済状況を打開するのは、やはり観光しかない、と政府の全面的なバックアップのもとホテルや各観光関連施設、旅行会社は着々と準備を進めている。コロナ禍の観光でキューバの強みは医療体制や衛生面における「安全な旅行」をアピールすることだろう。ホテルへの専門医の常駐や感染した場合の受け入れ機関、治療まで、この辺はきっと徹底してやってくれるはずだ。11月15日以降、旅行者に対する入国時の規制や条件などはまだ発表されていないが、現在課されている指定施設での5日間の隔離や複数回のPCR検査は緩和されるのではないかと予想される。

マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、密閉箇所での人数制限、入場時の検温、いろんな規制は今後もまだまだ残るだろうけれど、国民のほとんどがワクチン接種を終えて、コロナから身を守った安全な状態で観光客受け入れることができる日も近い。ハバナの旧市街のバーやレストランでバンドの生演奏が流れるなかモヒートを片手に踊り、クラシックカーに乗ってマレコンをドライブする外国人たちの姿が戻ってくる日はもうすぐ!

最近のキューバ、タバコ事情

キューバの葉巻は世界的に有名だ。良い葉巻が作られるのは、良質のタバコの葉が栽培されるからである。葉巻工場へ行くと説明があるが、一般的な紙巻きタバコは葉巻を作った際に出る切り屑や、葉巻では削除される葉脈の部分などを使って作られる。葉巻工場とは別にタバコ工場があって、タバコも多く生産している。

オルギンにあるタバコ工場の様子  photo by Radio Anglo, Cubadebate

世界中、禁煙傾向にあって愛煙家には辛い世の中、タバコの生産量や商品の出荷量は減っているが、葉巻は贅沢な嗜好品として世の風潮に関わらず一定数の愛用者を保っているらしく、近年でも売上的にほとんど変動がないそうだ。キューバの葉巻も重要な輸出品として、コロナ禍にあっても工場は通常稼働して世界へキューバ産葉巻が供給され続けている。

ところでキューバ国内での消費は、葉巻よりもやはり紙巻きタバコが主流だ。そのキューバのタバコはキツい。日本のような軽いタイプは存在せず、多くの人はフィルターのない両切りのタバコを好む。料金も他国に比べると格段に安く、配給所でも売られている国民の誰もが楽しめる嗜好品のひとつということもあって、男女関わらず喫煙率は高い。若年者の喫煙も目立つ。高校生たちは制服のまま隠れることもなく、学校の横を歩きながらタバコを吸う。もちろんキューバでも未成年者の喫煙は禁止されているのだが・・・

女性革命家セリア・サンチェスもヘビースモーカーだった。肺ガンで亡くなっている photo by Cubadebate

それがここにきて、禁煙せざるを得ないような状況になっている。

ひとつには2021年1月1日以降の経済改革で国産タバコの料金も上がったから。配給所の最低品質タバコCriollosやPopularが1箱7CUP(約35円)から10CUP(約50円)、それよりちょっと質の良い国産タバコH.Upmannは0.7〜0.8CUC(約90〜105円)から24.5ペソ(約120円)といった具合だが、まだまだ世界的に見れば随分安い。

加えてコロナ禍で輸入タバコがほとんどなくなり、国産タバコの生産量も落ちたのか市場に出回る量がぐんと減って、タバコ自体を手に入れることが難しくなってしまった。店で販売されるときにはいつもの大行列に加え、なぜか喧嘩沙汰の大騒ぎ。喫煙者の柄が悪いというわけではなく、吸う人にとっては何としてもゲットしたいという必死さがそうさせるのだろうとかつての喫煙者として寛容に理解している。

当然、店で買えないのなら、行列するのが嫌なら、闇で買う。ただいま闇での料金銘柄問わず、100〜150ペソ(約400〜600円)!!かつて禁煙を決心した20年ほど前の日本の料金をとっくに超えて、現在の日本の料金と変わらなくなってしまった・・・

となると、やはり禁煙。

Criollosのパッケージにある保健省によるメッセージが強烈。「あなたの年(=命)を吸うな、健康に気を付けて」「今日始めよ。火を付けるな、悪習を消せ」「タバコ1本につき1日が失われる」「タバコはあなたを身体の中から燃やす。消しなさい!」(左上から時計回りに)

となってほしいところだけど、辞められないものは仕方ない。友人も「コロナとこの物不足でこんなに我慢してるのに、タバコまで辞めなきゃならないなんてあり得ない!」と意地でも吸い続ける決意だ。値上げによって若年者の喫煙はなくなりそうで何よりだけど、年季の入った愛煙家には、いかにやりくりしてタバコを手に入れるかが目下、食糧調達以上に悩ましいに違いない。

子供のワクチン接種開始

キューバでは先日、予告があった通り9月15日から小学生年齢対象のワクチン接種が始まった。基本的には自分の通う学校で、学年ごと決められた日時に保護者同伴のもと接種が行われるようだ。息子の担任の先生からも先週のうちに電話で、「9月16日木曜日午前11時」と指定日時のお知らせがあった。

そして当日、珍しく朝から怪しい雲行きで今にも雨が降りそうな中、我が家から徒歩1分の小学校へ向かった。久しぶりに会う同級生たちと、ちょっと恥ずかしそうにでも嬉しそうに挨拶してお喋りする子供たち。それにしても小学校高学年の成長ぶりには目を見張る。特に女の子は背が伸び、体つきはすっかり大人、すでに母親の背を追い越してしまう子もいて驚いた。それに比べて毎日見ている我が子、多少背は伸びたけれど相変わらず幼いガキンチョ、ワクチンの注射もホントはドキドキしてしょうがないのを必死で隠してるし。

むちゃくちゃ緊張した面持ちで注射される息子。

さて接種会場の方は大人の時と同様、とてもスムーズだった。保護者の身分証明書を確認して署名、それから待合室で少し待った後、検温と問診を行い接種、接種後30〜40分ほど待機して問題がなければ解散。

今回子供に摂取されるのは、5種あるキューバ産ワクチンのうちSoberana02ソベラナ02、28日後に2回目の接種が行われる。ハバナではすでに先週、中高校生年齢の接種が行われ、ハバナ以外の地方でも未成年者の接種が開始、順調に進めば10月末には全ての子供たちの接種完了、11月15日から学校での対面授業の開始という計画だ。大人の方もうまくいけばキューバ国民の9割以上が11月までにコロナに対する免疫を獲得することになる。

キューバ版ワクチンカード。手書きで何が書いてあるんだか・・・

ワクチン接種自体はおそらく問題なくこのまま進められるだろう。あとはちゃんと効果が目に見えて感染者数にも現れてくれれば、みんな安心できるのだけれど・・・

ところでキューバ産ワクチン、まだ国際的には認証されていない。キューバ国内の認定機構が「緊急時使用可能なワクチン」として認めているだけで、効果率の高さや接種時の副反応の少なさ(死亡者はゼロ)を見るとものすごく優秀なはずであるが、世界的に今、渡航条件などに加えられつつある「ワクチン証明」や「ワクチンパスポート」に使うことはまだできない。先日からWHOへの認可申請手続きを始めたらしいので、早いところ世界デビューを果たしてもらって、「ワクチン接種済」の烙印を押してもらいたい。

キューバ産ワクチン5種。これらのうち3種がすでに緊急時用として接種されている

が、もし万が一、認可されなかったら・・・ここでまた某大国の横槍が入るんじゃないかと心配されるところだが、もう打っちゃったもんは仕方がない。ちゃんとお墨付きがもらえることを祈る!

キューバのコロナ近況 2021.9

1日あたりの新規感染者数8000人超えという最悪の8月が終わって9月になり、ようやくすこーし減少の兆し。

2021年9月8日23時59分現在のコロナ感染状況:新規感染者7,747名(ハバナ687名)、現状陽性者39,213名、累計感染者720,739名、累計回復者675,413名、累計死亡者6,056名

日によって増減があるものの9月になって9000人を超えたのは1日だけで、ほぼ6000〜7000人代で推移している。これでもまだまだ驚異の数字だけれど、減少傾向にあることは見て取れるので、このまま落ち着いていってくれることを願うしかない。

そんななか9月といえば新学期だが、当然まだ子供たちは学校へ行くことはできない。それでも前年度2020-21年度継続ということでテレビ教室が今週から再開され、同時に今後の日程が発表された。もう1年半にわたってほぼ登校することなく、対面授業なしで1日30分各教科週1回のテレビ教室という何とも心許ないというか、虚しいだけの授業しか受けていない子供たちの学校教育をどうやって調整して回復するのか、と注目されるところだ。とにかくワクチンを接種しないことには子供たちを学校へ行かせるわけにはいかない、いかないというのが大前提。急ピッチで治験段階を突破して9月初旬から中学・高校年齢、中旬からは小学校年齢の子供たちへのワクチン接種が始まる。ハバナは最初に実施されるだろうから、来週には息子も1回目の接種を受けることだろう。

子供たちへも、もちろんキューバ産ワクチンが接種される。ガブリエル君、キューバで初めてコロナワクチンの接種を受けた子供。Photo by Ismael Francisco, Granma

そして先日、全国の子供たちへのワクチン接種を11月までに終える計画で対面授業の開始は11月15日、前年度2020-21年度を2022年3月12日まで(全16週)とし、翌週3月14日から新年度2021-2022年度開始して同年11月26日まで(全30週)、その後本来の学年サイクルに戻す、と発表があった。もちろんワクチン接種が順調にいって、コロナ感染状況が収束することが条件ではあるだろうけれど、この通りうまくいってくれるなら何よりだ。

小学校の修正された今年から来年にかけてのプログラム。Granma新聞より

さらに11月には全国民の90%以上のワクチン接種完了、免疫獲得を目指すとした政府発表に併せて、観光省は11月15日以降の海外からの観光客の全面的受け入れに向けて徐々に対コロナ規制を緩和していく方針を発表した。まずは現在も観光客を受け入れているリゾート地バラデロとカヨ・ココの外国人観光客に対しワクチン証明書またはPCR陰性証明書どちらかの提示、空港でのPCR検査の免除、荷物重量制限の解除などが行われる。観光再開のためには入国時国境での水際対策の緩和だけでなく、空港やホテル、各施設やレストラン、各種交通機関の再開正常化、州を越えた移動制限の解除とあらゆる規制を緩和していくことになるが、まずは国内観光を手始めに、海外観光客受け入れ体制を整えていくそうだ。が、何れにしても具体的な内容や日程は今後発表されるようなので注目したい。

ハバナの革命広場。観光客が戻って賑わいを見せるのはいつ?

ともあれ今度こそコロナをコントロールしつつ、すでにあまり聞かれなくなってしまった(?!)「新たな日常」とやらを始められるといい。

キューバの女性

キューバの女性は強い。強過ぎて怖い・・・とすら同性でありながら思う。

キューバ革命でフィデル・カストロが行なった功績として、誰からも批判されることなく高く評価されることのひとつは、女性の解放、地位向上を達成したことではないかと思う。革命以前のキューバ社会は他のラテンアメリカ圏同様マチスモ(男性主義)の傾向が強く、女性は家庭に入るものとされ教育レベルも低かった。そんななか、フィデルは革命運動中から積極的に女性を取り込み、後には制度的に女性の解放、社会進出を可能とする環境を整え、女性が男性と同じように活躍できるような社会を実現させた。

キューバ革命運動に参加した女性としてまず思い浮かぶのは、Celia Sánchezセリア・サンチェス。フィデルが絶対的な信頼を置き、ゲリラ戦に参加したほか部隊への物資支援や外部組織との交渉なども彼女が行なっていたという。写真を見ればわかるが、とにかく美人だ。軍服を着てキリッとした横顔も素敵だが、フェミニンな洋服姿はモデルか女優さんかと思うほど。

チェ・ゲバラとセリア。映画の一場面じゃないかと思うような美男美女。Photo by Cubadebate

それからラウル・カストロ夫人であるVilma Espínビルマ・エスピンは、キューバ女性連合(FMC)の議長を務めて革命後の女性の社会的地位、環境の改善に尽くした。可愛らしく穏やかな笑顔が印象的なこちらも素敵な女性だ。ところでこのキューバ女性連合、全国労働者総連合、大学生連合、革命防衛委員会と並んでキューバの四大社会団体のひとつで14歳以上の女性のほとんど、400万人以上が参加する大組織である。1960年8月23日創立で、毎年この日が近くなるキューバの女性に焦点を当てたニュースや記事が増えるのでFMCとビルマを思い出す。ちなみに私も永住権を獲得してから自動的に加入していて、微々たるものだが年会費を納める一会員。

軍服姿と不釣り合いな愛らしい笑顔のビルマ。FMCのエンブレムには彼女がデザインされている。Photo by Cubadebate

そして今、実際にキューバ社会をみると確かに多くの女性が普通に男性と肩を並べて活躍している。というか場所や組織によっては女性の方が多くのポジションを占めていることも多々ある。国会議員数は、意図的にそうしているんじゃないかと思ったりもするが、女性が半数の50%を少し上回る割合となっていて、一昨年から置かれた各州知事も知事、副知事のどちらかが必ず女性、両方女性の州もあったはずだ。会社や団体でも長のつく職に女性がついていても何の違和感もなく、女医や女性研究者、技術者はあたりまえ。大きな公共事業の現場監督が女性であることも多い。これはそれだけ彼女らが働く環境が整っているということも示す。

ただ子供のための保育所や教育施設が充実しているだけでなく、職場における女性の家庭での役割に対する理解や考え方も日本とは大きく違うように思う。というか、男女関わらず誰もが仕事よりも家庭、家族が大事なので、何か家庭の問題が起きた時には誰もが「そーかそーか、そりゃ心配だ、仕事はいいから行ってやれ」となるし、仕事中に家族から電話がかかってきても優先して話すことを問題視することはない。(実際には、役所の対応が遅れたりしてとても困るのだけど・・・)

女性が社会に出るから、男性も家庭の仕事をそつなくこなす。それでもって家庭の中でも女性は強い。離婚率の高いキューバだが、家を出て行くのは決まって男性の方だ。

コロナと経済危機で大変な物資調達、毎日の行列でも女性が圧倒的に存在感を示して、大声を張りあげる。行列を調整する側も、行列に並んで押し進む側も女性、日々繰り広げられるこの格闘を見ていると、本当にキューバの女性は強い、とゾッとしてしまうのだった。

キューバへの救援物資、各家庭へ配布はじまる

7月以降、キューバのコロナ感染状況は悪化したままで、8月も前半高い水準で新規感染者数、死亡者数が推移している。一向に良くならない状況にもう慣れてしまって、毎日の保健省の報告にも驚かなくなってしまった。

こんなキューバの深刻な状況に対して海外からも多くの支援物資が送られてきている。日本からも援助の手を差し伸べようという動きがあることは先日書いた。ここ1ヶ月ほどで主に食料品や医療機器、医薬品などが、ロシアや中国、ベトナムといった社会主義国で普段から関係の深い国々だけでなく、近隣の中南米の国やカナダといった20数カ国から届いているらしい。アメリカからも支援団体が注射器を寄付したというニュースもあった。

医療関連の品は直接病院へ運び込んで使い、注射器はワクチン接種に早速利用されていることだろう。

で、食料品はどうするのか?

と日々の食料確保に奔走する国民は注目したわけだが、到着した先から仕分けして袋詰めにされ各家庭に配布されることになった。日本では災害時の支援物資を被災者に届けるのに、時間がかかったり、必要なものが必要な人に届かなかったりと問題が発生することもあるらしいけれど、今回キューバの場合、否応なしに国が決めたやり方でチャッチャとすばやく対応した。緊急だから、当然といえば当然。

こんなとき、キューバには配給システムという便利なものがあって、国の隅々、国民の一人一人にまで確実にものがいき渡る。今回も配給所を介して、各家庭に袋詰めにされた食料品セットが早速配布されはじめた。普段の配給品は決して無料ではないのだけれど、今回の支援物資は全て無料で1家庭につき1袋。内容は地域や配布されたタイミングによって多少違いはあるようだけれど、米、パスタ、豆類など主に炭水化物の袋詰め。

昨日から我が家の属する配給所でも配布が始まって、早速取りに行ってきた。

米、スパゲッティ、マカロニ、緑豆、砂糖。それぞれポルトガルやトルコ、イラク産のものだった

スパゲッティ、最近は外貨ショップへ行っても売っていなくてしばらく食べていなかった。息子のリクエストで、今日のランチは早速スパゲッティ!

ランチに麺類、ありがたい!

しばらくは多少バラエティーのある昼食が準備できそうだ。

TOKYOオリンピック、キューバ人アスリートたちの活躍

コロナ禍のオリンピックが終わった。

開催に対しての賛否や数々の「闇」はさておき、始まってしまえばオリンピック好きの日本人の血が騒いでテレビの前に居座り、ネットで結果をチェックしまくっていた、という人も多かったのではないだろうか。

キューバにいる私もまさにそんな感じだった。ここ1ヶ月コロナの状況は最悪でほとんど出かけることもなく家にいてテレビやネットで視聴できたというのもあるけれど、日本とキューバ両国の選手の活躍に心浮かれた。

正直、開始前キューバとオリンピックについて書いた時は、今回それほどキューバが好成績をおさめるとは期待していなかった。1年延期したことでの調整の難しさはどの選手も同じだけど、コロナ禍で経済状況の悪化、物不足の深刻化するキューバで決してスポーツに打ち込める万全の環境ではなかっただろうにと危惧し、メダルが期待されている選手もしくじるんじゃないかと。

が、キューバ人選手たちは期待を裏切ることはなく、久しぶりに明るいニュースを届けてくれた。

photo by Granma

8月8日全ての競技が終了して無事閉会式を迎え、結果、キューバは金7個、銀3個、銅5個の合計15個のメダルを獲得し、国別14位の成績を残した。メダルの数だけじゃないけれど、出場選手69名で15個(カヌーのひとつを除いて全て個人種目)、単純にメダル獲得率を出すとすればかなりの高確率なんじゃない?と思ってしまった。上位をみると先進国と呼ばれる国が多くを占め、そうそうたる大国がズラーっと並ぶ中で14番目のキューバ。どう見ても場違いなこのポジションにカリブ海の小国がつけているのをみると、なんだかすごく誇らしいし、やはりスポーツ大国であると改めて感心させられた。

それでは以下、金メダリストをご紹介!

ミハイン・ロペス photo by Granma, original: Reuters

【Mijaín López Múñez】ミハイン・ロペス・ムニェス
レスリング/グレコリーローマンスタイル 130kg級 怒涛のオリンピック4連覇、しかも全試合無失点!強っ!!日本でも「怪物」として紹介されていた。38歳、今大会で引退を表明しているけれど、まだまだいけそうな感じ。

ルイス・アルベルト・オルタ photo by Granma, original: Reuters

【Luis Alberto Orta Sánchez】ルイス・アルベルト・オルタ・サンチェス
レスリング/グレコリーローマンスタイル 60kg級 オリンピック初出場にして、日本の文田選手を破っての金。文田選手は期待された金を取れずに泣いていたけれど、オルタ選手も自分がやってのけた偉業を信じられない様子で涙目だったのが印象的だった。

セグエイ・トレス、フェルナンド・ダヤン photo by Granma, original: Reuters

【Seguey Torres Madrigal/Fernando Dayán Jorge】セグエイ・トレス・マドリガル/フェルナンド・ダヤン・ホルヘ
カヌー C2 1000m 今回のキューバのメダルで一番の感動!メダル候補でもなかったので朝一番で飛び込んできたニュースと映像見て、みんなビックリ。ラストで中国・ドイツとの接戦を制してのゴール場面、アナウンサーの興奮ぶりも話題になっていたっけ。いやー、マジで良かった!!

フリオ・セサル photo by Granma, original: Reuters

【Julio César La Cruz Peraza】フリオ・セサル・ラ・クルス・ペラサ
ボクシング 91kg級 キューバが歴代最高メダル数を誇るボクシングチームのキャプテン、リオ大会81kg級に続いて2大会連続の金。試合後のインタビューでめちゃくちゃ多弁だったのがキューバ人らしいなあ、と思ってしまった。

【Roniel Iglesias Sotolongo】ロニエル・イグレシアス・ソトロンゴ
ボクシング 69kg級 北京大会で銅、ロンドン大会で金メダル。前回リオ大会は出場権すら得ることができなかったところをカンバックしての金。感慨深く自らの復活劇を語っていた。

【Arlen López Cardona】アルレン・ロペス・ゴルドナ
ボクシング 81kg級 リオ大会75kg級金メダルに続いて2つ目の金。奥様が双子の子供を妊娠中だそうで、「双子ちゃんは生まれる前から金メダルを手にしている!」と新聞の見出し、お父ちゃん頑張った!

アンディ・クルス photo by Granma, original: Reuters

【Andy Cruz Gómez】アンディ・クルス・ゴメス
ボクシング 63kg級 オリンピック初出場にして金メダル候補として最も注目されていた選手。大会最終日にキューバ最後の金メダルをもたらし、まさしく有終の美を飾ってくれた。もう目指すはオリンピック連覇!

こうやってみるとやはりボクシングはすごい。8階級のうち7階級にそれぞれ一人ずつ選手を送り込み、金4つ、銅1つ(57kg級Lázaro J.Alvarez Estrada 選手)。

このほか、メダル候補でしっかり獲ってくれたのが、柔道4大会連続メダルのIdalys Ortizイダリス・オルティス選手(78超kg級・銀)、射撃リオ大会金メダルのLeuris Pupoレウリス・プポ選手(ラピッドファイアピストル・銀)、陸上円盤投げYaimé Pérezジャイメ・ペレス選手(銅)、テコンドーのRafael Albaラファエル・アルバ選手(銅)、そしてもう少しで金・銀フィニッシュだったのにーっと悔しかったのが、陸上幅跳びのJuán Miguel Echaverríaフアン・ミゲル・エチャベリア選手とMaikel Massóマイケル・マッソ選手。これはライブで見ていたのだけれど、二人とも1、2位につけながら途中で負傷して後半飛べずに記録を伸ばすことができず、最後の最後でギリシャのMiltiadis Tentoglou選手に抜かれて金・銀を逃してしまうという残念な幕切れにため息が出た。二人とも22歳と若いし、まだまだ次があるよ、と言っても表彰台での二人の表情がなんともいえず思わず泣けてしまった。

次もあるけど、やっぱり獲りたかった金メダル・・・photo by Granma, original: Reuters

と、メダルを獲った選手もそうでない選手も一人一人のこれまでの努力と立派な闘いぶりに敬意、TOKYOの閉会式会場の浮かび上がった一言「ARIGATO」を送りたい。