キューバで空手

我が家のある団地内にはサッカーと野球が一度にできるほどの広い運動場にプール、バレーとバスケットコート、さらにレスリングにボクシングといった屋内競技用施設とスポーツするには申し分ないスペースがあり、その一角に空手の道場もある。「空手道」「松林流」としっかり漢字で書かれた看板に加え、「OKINAWA」「DOJYO AKITO YAMANE」とあるから明らかに日本がルーツだとわかるので、気にはなっていたけれど、これまで詳しいことを調べようとしなかった。

団地の道場入り口。

今年になって息子がこの道場で空手を習い始めた。生徒は小学生から成人まで、「先生(センセイ)」はキューバ人だけど、日系註)の方もいらっしゃる。練習は週に2回、夕方1時間ほど。自分でやりたいと言っておきながら、習い事に通うことに慣れていない息子は最初のうち友達を遊ぶ時間が減るのが嫌だったようだけど、最近は進んで行くと言い家でも「形」の練習をするようになった。

この週末、普段の練習とは別に簡単なデモンストレーションをやるというので見に行った。先週、日本から届いたばかりの真っ白な空手着を着てやる気が増した息子は、覚えたばかりの初心者向けの「普及形 I(ふきゅうかたいち)」をみんなと一緒に披露した。その後、大人は武具を使った形や二人で即興での組手も見せてくれた。空手といえばカンフー映画のイメージぐらいしかなく、実際に見たのはこれが初めてだった。

「形」の披露をする生徒たち。

そして日系の「センセイ」の一人から、この道場の由来についてもちょっとお話を聞くことができた。道場の名前にある沖縄出身の日系人「AKITO YAMANE」さんはかつてこの団地に住んでいて、団地のすぐ近くにある海軍病院のお医者さんだったそう。そのYAMANE さんが亡くなった時に、本当は沖縄に遺灰を持って行きたかったそうだけど日本はあまりに遠く、結局この団地内で葬られた。ちょうど同じ頃団地内にできた沖縄空手の道場ということで彼を偲んでその名前が付けられた。これが今から50年ほど前のこと・・・

せっかくなので少し調べてみたところ、空手そのものが19世紀に沖縄で生まれたものだという。その起源は15世紀琉球発祥の「手(テイ)」と呼ばれる武術にさかのぼり、東南アジアや中国との交流の中で空手として発展していった。それがのちに本土に渡り、競技要素を持って広まったそう。沖縄伝統空手にはいくつか流派があるようだけど、あくまでも素手で攻撃、防御する武術でスポーツ=競技ではないらしい。現在は武道の一つ、護身術として学ばれるものだという。

武道であるので当然礼儀は大切にされ、うちの団地の教室でも道場に入る前にはお辞儀、先生にもお辞儀してはじめの挨拶、終わりのお礼、途中の掛け声は日本語。子供を通わせる父兄たちからは「礼儀、規律」と言ったことも教えてくれるのがいい、という声も聞かれる。確かにキューバの学校では、日本のような校則もなければ部活でバシバシ先生にしごかれる(最近はあまりないようだけど)こともないものね。

蹴りが得意らしい・・・

息子は日本語で数字を言ったり、挨拶したりするのがなぜだか「恥ずかしい」らしい。どこからみてもアジア人、教室唯一の日本ルーツの生徒ということで、注目度も高い(?)わが子よ、ちゃんと黒帯取るまでまで頑張れー!

 

註)あまり知られていないがキューバにも日系人がいる。ペルーやブラジルのように大きなコミュニティーはないが、首都ハバナと青年の島に比較的多く住んでいる。

現在もキューバ各州に日系人が暮らしている。

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